本作は映画作品だけに、制作費も潤沢で俳優陣も豪華ですが、TVドラマ版の方が良かったように思います。といってもそんなに差はありません。いずれにせよ、少年映画、少年ドラマとは全く呼べません。
3歳の時、ボク(谷端奏人君)は、オカン(内田也哉子さん)の実家である炭鉱町に逃げてきた。オトン(小林薫)のあまりにいい加減な生活に、オカンが愛想が尽きたから。ただし離婚まではしていない。そこで母に溺愛されながら、少年時代(田中祥平君)を過ごした。
やがて中学、高校生(冨浦智嗣君)と青春時代もオカンと二人で生活したが、大学は無理をいって東京の美術大学に進学し、オカンのもとを離れて行った。大人になったボク(オダギリジョーさん)は、なかなか芽が出ず貧乏生活をおくるが、やがて少しずつデザインや著作の仕事が認められ、一人前になれそうだった。
そんな時、オカンが重病にかかったと聞き、ボクはオカン(樹木希林さん)を東京に連れてくることにする。約束だった東京タワーにも登る。オカンは東京でボクと生活するが、やがて病魔は・・
ドラマ版とは微妙にストーリーが異なります。オダギリジョーさんは、情けない役を熱演していますが、生来のカッコ良さがあって、今一つ共感が湧かないのは、私のヒガミかも。その分、樹木希林さんの演技が身に沁みます。「私死ぬのよ」なんて露骨な演技ではなく、明るい演技でも、身体全体に悲壮感が感じられて。
一方、ここは少年映画サイトですので、少年俳優についても。田中祥平君を期待していたのですが、残念ながら、ほとんど印象に残りませんでした。彼の演技力等の問題ではなく、演出の問題です。ただでさえ短い幼少期を、年齢順に3人の少年が演じていますので、どうしても1人あたりの印象は薄くなります。
しょせん、日本アカデミー賞なんてそんなもの。それよりも「キネマ旬報ベストテン」に輝く方が価値があると思っていたのですが、最近は、キネマ旬報の審査員もアテになりません。そんなの気にせず(でも気になるのが人情ですけれど)、いい映画を作って下さい。