SFミステリーとしてはよく出来ており、2時間以上の作品なのに長さを感じる事なく鑑賞。特に前半はのめり込んでしまいました。さすがにクセ者の黒沢清監督作品です。それでもラストが甘い。ここはもっと厳しいものにして欲しかった。 (原作はどうか判りませんが)
人気漫画家の淳美(綾瀬はるか)はスランプから自殺を図り、命は助かったものの昏睡状態となって1年。ある研究所で人の意識に入る装置(センシング)を研究しており、夫の浩市(佐藤健)は治験者となり淳美の意識の中に入る。淳美は昏睡の中でもスランプに陥り、浩市に昔自分が描いた首長竜の絵を持ってきて欲しいと切願する。
センシングの副作用として浩市は見知らぬ少年の幻影に悩まされる。しかしセンシングを繰り返すうち浩市の意識は逆に混乱をきたすが、やがて衝撃的な事実を知る。それは昏睡しているのは浩市自身で、センシングで接触してきたのが淳美だった。漫画家も浩市だ。そして首長竜にこだわるのも自分の潜在意識だった。
15年前の出来事を思い出した。浩市(青木綾平)はリゾート開発事業の父と一緒にある島にやってきた。小学校で淳美と仲良くなるが、島の少年モリオ(柴郁織)はそれが気に入らず、何かにつけ浩市をイジメる。ある日、海の中で浩市に襲いかかったモリオだが、浮標のロープが足に絡まり、溺れて流されてしまった。
モリオの死は自業自得であるが、浩市は罪の意識から、この出来事を首長竜の仕業として心の中に封印した・・しかし大人になった浩市が悩まされた少年の幻影(幽霊)はモリオだったのだ。
妻を昏睡状態から救おうとする若い男。イケメンの佐藤健さんですから、感情移入し易いはずなんですが、どうも落ち着かない。なぜかこの男の言動にイライラする部分があるのです。佐藤さんの演技力の欠如?いや決してそうではありません。逆に演技力があるからこその不安定感だと思うのです。
観客を安楽椅子に座らせ、お気軽に映画を見せてくれるような監督さんではなく、観客を不安定な岩の上、異臭のするゴミ置場に追いやって、ある意味のリアル感を味わせてくれるのだろうと思います。ネタバレはしませんが、その割にラストはハリウッドばりのハッピーエンド。浩市はやはり死なないと。
モリオ役、少年時代の浩市役を演じた少年俳優の氏名も判りません。ノースエンド先生の原稿から柴郁織君、青木綾平君の二人と判明しましたが、もう少しくらい配慮してくれてもいいのに。まあミステリーとしてはよく出来ていますので、未見の方はレンタルでも。(ネタものですので、1回見てネタが判ったら、もう見なくていい作品かもしれませんけれど)