光 (2017年)
作品総合評価 |
7点 |
少年の出番 |
10%(主人公の少年時代) |
寸評 |
理不尽でドロドロの愛に支配された男たち 【少年映画でない理由】出番少&少年による暴力 |
映画情報など |
2017年製作。DVD等未発売。 (写真は福崎那由他君) |
2017年は同じ「光」というタイトルの映画が2本公開されました。5月に河直美監督、そして11月に今回レビューする大森立嗣監督の作品。三浦しおん氏原作との事ですが、原作は読んだ事もなく、あまり興味もありませんでした。
見ようと思ったのはキャストに福崎那由他君の名があった事。黒執事のシエル坊ちゃんを2年演じて、今どんなふうに成長したのか。ただそれが見たかっただけ。月曜はメンズデーで1100円という映画館で鑑賞しましたが、いい意味でも悪い意味でも腰が抜けそうなほどインパクトがある作品でした。
島の中を歩く信之。「ついて来るな」と言われてもその後をついていく輔
■ストーリー
東京都に属する南のある離島。中学生の信之(福崎那由他)は何も無い島の生活の中で同級生の美花が全てだった。隠れて性行為もしている。一方、小学生の輔(たすく)(岡田篤哉)は父から虐待を受けて生傷が絶えない。そんな輔にとって信之は兄以上の存在で、いつも後を追っていた。まるで恋人のように。
ある夜、美花を強姦していた男を信之は殺してしまった。後をつけてきた輔はこっそり写真を撮る。翌晩、美花と信之、輔の3人が島の高台に集まり話合っている時、地震と津波に襲われ島は壊滅した。そして話は25年後に飛ぶ。(生き残った3人がどう過ごしたかは描かれない)
信之(井浦新)は妻と幼い娘のいる地道な役人、美花はミステリアスが売りの人気女優に。そこへ裏ぶれた作業員の輔(瑛太)が現れた。更に輔の(漁に出て津波の難を逃れていた)父親も現れて25年前の写真をネタに信之と美花をゆすり始めた。信之の心に「美花が全て」だった頃が蘇り、同時に25年間封印していた暴力的な心も蘇った。信之は周到な準備をして輔とその父を消しにかかる...
■最底辺の男、輔の人生とは何だったのか
登場人物3人の関係は、美花>>信之>>>>輔。蛇の前のカエルのように上位の人間に支配される構造は一生続く。最底辺の輔を演じた瑛太さんの大熱演(怪演)が高評価されています。それは私も全く同感です。しかし映画を見終わって、この輔という人物の一生を考えた時、本当に悲しさ、虚しさしか残らないのです。
子どもの頃は父親から壮絶な暴力を受け、津波から生き残った後も他の2人のような表街道を歩けず、社会の最底辺の労務者(描かれていませんが、幸せな生活を送ったとは思えません)。そして父親の出現。もう腕力では父親に負けないと思うのに、子供の頃のトラウマなのか、されるがままに暴行を受けます。
そして信之をゆするのですが、子供の頃に(同性愛といえるくらい)信之を慕っていた事の呪縛が解けません。信之に殺される事が判っていても何もせず、最後は「信ニイに殺されることを願っていたんだ」と笑って死んでいきます(ネタバレじゃ!)。強烈な人生かもしれませんが、あまりに虚しい。暴力を受けるためだけに生まれてきたのか。
信之をずっと座って待っていた輔。
満面の笑顔で立ち上り、信之の後を追う
森の中で美花と男の行為を見てしまった信之
■女は魔物なのか
信之もまた呪縛が解けません。中学生の美花の強姦事件、実は美花が男を誘ったのであり、それを信之に見られたので「殺して」と。美花はその美とエロスで男を操って利用する魔物のような存在。信之も利用されただけ。信之もそれを判りながら逃げ出す事が出来ないのです。
原作は女性作家ですので、私はこの辺りの心情はよく判りませんが、相当深い闇がありそうです。
■福崎那由他君の演技も大満足
さて本作品を見る動機であった福崎那由他君。序盤10数分だけの出番ですが、十分に印象に残ります。少し肩幅が広くなったものの14歳の少年らしさが残っています。相手役(中学生の美花)の紅甘さんよりも色っぽく思える場面もありました。(あくまで私の主観)
少女の足の指を舐めたり、木の枝を噛む変態シーン。男の首を絞める殺人シーン。衝撃的ではありましたけれど福崎君なら許せそうです(ゆるす?なにを?)。でも成長したとはいえ華奢な中学生が一方的に男を絞め殺せるのでしょうか。どうみても男の方が腕力が上で、逆にやられると思うのですが..
1983年の松本清張原作の映画「天城越え」でも中学生が殺人を犯しますが、その映画でも同じ事を思いました。(体格と腕力差)
小学生時代の輔を演じた岡田篤哉君も可愛くて印象に残ります。一方悪い意味で印象に残るのが輔の父親。グロテスクな下着姿が目に残って、しばらく食欲がなくなりました。演じた役者さんには申し訳ないのですが、このオヤジの尻なんか見たいと思う人がいるのでしょうか。女性観客はほぼ引くと思います。
色々書きましたが、衝撃的な怪作であることは間違いありません。爆発するような音楽も賛否両論あります。でも見て損はない作品だと思いますよ。
強姦した男を殺害した後、美花の足指のケガをみて..
その指を舐める信之。もう女王様にかしずく奴隷..
月光に照らされた美しい海。そこに黒い線が..
大きな津波の襲来だった