花よりもなほ (2006年)

作品総合評価 7点
少年の出番 40%(ヒロインの息子役)
寸評 リアルで汚い長屋の世界が見事
【少年映画でない理由】出番少ない
映画情報など 2006年製作。DVD/BD発売中
(写真はヒロインの健気な息子役の田中祥平君)


「誰も知らない」でカンヌ国際映画祭でブレイクした是枝裕和監督が、松竹映画から配給される初めての全国メジャー作品。しかしながら興行的には芳しくなかったようでしたが、普通の時代劇とはひと味もふた味も違う、ほのぼものとした映画でした。

■ストーリー

ほんの些細な「いさかい」から父親を殺されてしまった地方の侍(岡田准一さん)は、父の仇討ちのために江戸へ潜伏して超貧乏長屋に住んでいる。しかし実はこの侍、気も弱ければ、剣の腕もからきしダメで、仇討ちなんてできる自信は全くなく、同じ長屋に住む浪人(加瀬亮さん)にコテンパンにやられたりしている。

また長屋の隣には、妙齢の美女(宮沢りえさん)が息子(田中祥平君)と暮しており、何らかの秘密を持っているようであるが、次第にこの母子に惹かれてしまい、ますます仇討ちが遠くなる。

しかし、とうとう父の仇である浪人(浅野忠信さん)を見つけるが、どうしても闘うことができない。故郷の実家からは早く仇討ちせよ、とプレッシャーをかけられるなか、ついにある決心をする。一世一代の大芝居を打って。

■素晴らしい役者を揃えた群像劇でしたが

基本は侍(岡田准一さん)を軸にしたストーリーですが、長屋の住人には、先ほどの宮沢りえ、加瀬亮以外に、古田新太、田畑智子、千原靖史、上島竜兵、木村祐一、そして関西俳優のドン?國村隼など、関西系のクセ者役者、芸能人オール勢揃い。一方、寺島進、遠藤憲一など是枝監督作品の常連さん達が、赤穂浪士のメンバーとして加わるなど、超豪華メンバーでした。

2時間余りの上映時間で、これだけの面々を揃えていれば、当然のことながら消化不良。決して中だるみはなかったのですが、やはり一つ一つのエピソードが弱くなってしまい、全体として盛上りに欠けることになったのは残念です。

NHKの大河ドラマか朝ドラで、半年間くらいに渡ってじっくりと進行して欲しい作品でした。蛇足ですが、この映画の後、大阪制作NHK朝ドラ「芋たこなんきん」が放送され、國村隼さん、田畑智子さんがレギュラー、そして田中祥平君まで出てきた時には「花よりもなほ」の事を思い出してしまいました。

■是枝監督の超お気に入り。田中祥平君

さて、この映画はジャニーズ事務所の岡田准一さんが主役であり、少年映画ではないと思われますが、ここで取り上げたのは田中祥平君の存在です。宮沢りえさんの息子役ですが、セリフはあまり無いものの、幼いながらにその視線、切ないような表情が、他の大人の役者を完全に食っており、非常に印象に残りました。

この映画のパンフレットとは別に「花よりもなほ」読本・岡田准一改メ青木宗左衛門 という本があります。(表紙全面が岡田准一さんのアップ写真の本で、男性が買うのは非常に勇気が要りました。こんな写真を表紙に持ってくるのはちょっと考え物ですよ。)

この本の中に、是枝監督と主役岡田准一さん、また古田新太さんとの対談があるのですが、3人とも田中祥平君を絶賛しています。また撮影中のスナップ写真も多くありますが、田中祥平君を見つめる是枝監督の目が非常に優しい。 是枝監督は子役は男女関係なくしっかりと誠実に指導されるようですが、田中君は特別のようです。

こんな小さい時に、しっかり演技指導を受けた田中君は非常にラッキーだと思います。これ糧にして、いい役者に成長して欲しいものです。「誰も知らない」の次男役の木村飛影君も是枝監督に気に入られて、その後も一緒に仕事をしており、この映画にも出演していますが、今回は少し地味な役でした。

是枝監督の指導を受ける田中祥平君
クランクアップ。田中祥平君も涙、涙

■次回作品にも期待。田中祥平君

「花よりもなほ」公式サイトのプロダクションノートか何かに、舞台挨拶で久し振りに会った田中君を「連れて帰りたい」などと是枝監督が言っていましたが、本当に連れて帰ったようです。もちろん誘拐なんかではなく、次の作品に出演させるために。

今年2008年初夏公開の「歩いても歩いても」にも田中祥平君が結構重要な役で登場するようですので、また楽しみです。





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