ずぶぬれて犬ころ (2018年)

作品総合評価 7点
少年の出番 25%(準主役ですが出番は少なめ)
寸評 25歳で早逝した俳人住宅謙信の人生。心に響きます
【少年映画でない理由】出番少ない
映画情報など 2018年製作。BD/DVD未発売
(写真は中学生役の森安奏太君。)


今は空前の俳句ブームだとか。そういえば(どなたか知りませんが)おばさまが芸能人に上から目線で俳句指導している番組をチラッと見た事があります。

本作品は岡山出身の俳人 住宅謙信(すみたく けんしん)さんの人生をドキュメンタリータッチで描いた作品。25歳で早逝。残された句数も僅かですが、その言葉が素人の私にも迫ってきます。五・七・五にとらわれない自由律の句が新鮮です。

故人の人生を追うだけでなく、現在の中学生の少年の苦悩とシンクロさせた劇映画になっています。この中学生役の森安奏太君がいい。本作はノースエンド先生から情報提供を受けて、すぐに大阪九条にあるシネヌーヴォーへ走りました。映画は題名だけでは判りませんねえ。見逃すところでした。

謙信の句に引き込まれてしまった中学生。
■ストーリー

明彦(森安奏太)は岡山市の中学3年生。学校では熾烈なイメジを受けている。今日も掃除道具入れに閉じ込められた。そこへやってきたのが教頭先生。先生が偶然見つけた古い張り紙。これは教え子だった住宅謙信が中学生の時に書いたものだった。先生は明彦に住宅の事を話し出した。

住宅は勉強は出来たが高校進学せず調理専門学校へ。調理士にはならず岡山市役所に就職。句作と宗教に関心を持ち、何を思ったか僧侶の資格を得て謙信と名乗った。そして結婚。長男誕生。そこへ病魔が襲いかかった。離婚して長男を育てながら句作にのめり込む。血の滲むような日々の中で、その言葉は研ぎ澄まされていく。

明彦はなぜか謙信の句に惹かれていく。その言葉をノートに書き写す。しかしイジメは終わらない。追い詰められた明彦は...

■早逝された方の作品はなぜ心を打つのか...

タイトルの通りです。悲劇や薄幸の人が好きなのかなあ。思い浮かぶのは、中原中也(詩人30歳)、山田かまち(詩人,画家17歳)など。ファンも多いですよね。闘病記などでも著者が亡くなったか健在かで売れ行きが全く違うと聞きました。これはまた別の話。

俳人といえば芭蕉。どうしても旅をしながら詠むイメージです。芭蕉は教科書にも載っていますので結構知っていますが、種田山頭火、尾崎放哉などはかろうじて名前を知っているくらい。でも本作品を見ると俳句関係の本を読んでみたくなりますよ。これは間違いなし。

■教頭先生、あなたは失格です。

悩む中学生の明彦に謙信の人生を語る教頭先生。人間としては立派な方。でも学校教師としては無能ではありませんか。ちょっとイライラさせられました。これだけのイジメを受けて、明らかに何度も何度もSOSサインを出している生徒。なんら対策を講じない。教頭という立場なのに...

これ以上は書きません。明彦役の本田孝義森安奏太君はリアル15歳ですが、まだまだ可愛い美少年。暴力を受けるシーンが多いのが可哀想。それと字が超絶ヘタクソ。ペンの持ち方もおかしいし、お箸を持てない現代っ子みたい。(本レビューの画像は予告編から。でも彼の美少年らしいショットが殆どない...)

謙信役の木口健太さん。最後の鬼気迫る演技は本当に素晴らしい。故人を聖人化せず、欲望や煩悩も多い等身大の若者として描かれているのが好印象でした。ただ序盤は15歳の中学生役も演じましたが、これはアウト。森安君の可愛い頬を見た後ですから、木口さんの頬はオッサン丸出し。

その他、謙信の両親役の2人がいい。息子を支える父と母。また謙信の幼い息子も可愛くて可愛くて。こんな子を残したまま他界するのは心残りだったでしょう。(逆に言えば念願の句集も出し、子供も残せた人生は、私から見れば勝ち組です。)

学校でイジメを受ける明彦。
(これだけ露骨に暴力を振るわれているのに...)
教頭先生は明彦に住宅謙信の句集を貸した。
(それもいいけどイジメ対策は?教頭先生でしょうが...)


授業中。ノートに謙信の句を書き写す。
(字がおぼつかない。影という字に苦戦...)
謙信の句に精神は救われたが、イジメは止まない。
明彦は決心。生きるために中学やめます!


闘病中の謙信。長男を病室で育てる?
(妻との離婚理由は描かれず。これはタブー?)
長男は3歳に。体力が低下して抱く事もできず。
(可愛い子供を残して。でも残せただけ幸せでは...)



※後記
本作は岡山の地元映画。岡山には昔、親戚がいました(今は他界)。ですのでロケ地の奉還町商店街などは懐かしく思います。監督の本田孝義さんの作品は、10数年前に「ニュータウン物語」といドキュメンタリーを東京の東中野か下北沢あたりで見ています。やはり岡山の話でした。DVDなど発売してくれたら嬉しい。





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