鬼談百景(2015年)

作品総合評価 5点
少年の出番 10%未満(短編10作のうち1作が子供主役)
寸評 「続きをしよう」は遠野物語のような味わい
【少年映画でない理由】出番過少。またやや低年齢。
映画情報など 2015年製作。DVD発売中。
(写真は「続きをしよう」の子役(氏名不詳))


女流作家小野不由美さんのホラー小説はいくつか読んでいます。「屍鬼」は文庫本で5冊の長編。まるで和製スティーブン・キング氏でした。本作「鬼談百景」は99話からなる短編集。いわゆる百物語の体裁です。

似たようなホラー本はいくつもありますが、小野氏は一味も二味も違います。最後にネタアカシをしない尻切れトンボですが、これが妙に後を引くのです。まるで伝承を集めた「遠野物語」を読んでいるような..

本作は99話から10話を選んで映画化。監督には中村義弘氏、岩澤宏樹氏など「ほんとにあった呪いのビデオ」シリーズ関係者など。この10話の中で今回のレビューでは「続きをしよう」を取り上げます。

墓場で鬼ごっこを始めた6人の子供たち。
■ストーリー

山の中の墓地。子どもたちが鬼ごっこを始めた。お墓の間を傍若無人に走り回る。突然ひとりの子供が転倒して怪我をした。その子は帰っていく。残った子どもたちは気にせず鬼ごっこを続ける。

そして一人、また一人と怪我をして帰っていく。そして最後は男の子一人になった。どこからともなく「続きをしよう」と声が聞こえてきた。男の子はどうしたのだろうか...

■奇妙に怖い...

何の説明もなく子供たちがお墓の中で鬼ごっこ。このシテュエーションだけでも怖い。お墓で狼藉なんて罰当たりな..そして憑かれたように走り回る子供たち。これを止めるには怪我をする他にない。怪我をした子供はホッとした様子で帰っていく。

最後に一人になった男の子の前に不気味な子供が出現する。どこかで不幸な死を遂げた子供の霊だろうか。でも最後の男の子は無事に戻ってきた。ただ昨日どうしたの?と聞かれても何も答えない。

遠野物語というよりも宮澤賢治「ざしき童子のはなし」に似た雰囲気かもしれません。かつて行われた間引きに対する罪悪感からこのような伝承が残っているのでしょうか。

松尾芭蕉「野ざらし紀行」には3歳くらいの捨て子の話。泣いているのに誰も見向きもしない。捨て子は死ぬしかなかった時代でした。子供を大事にしなかった報いが今の少子化につながっているのかも...

■その他の話

本作の中の「泥棒」は現代の間引きの話。近所の子沢山の家。そこの母親のお腹がまた大きい。でもいつの間にかお腹は小さくなった。子供は生まれていない。その家の前で出現した小さな男の子の霊。溝の中へ流されちゃったんだ...

ああこんな話は嫌ですねえ。なお原作「鬼談百景」は99話ですが、100話目が長編映画化された「残穢」です。これも地味だけれども怖い作品でした。

山の中のお寺にいる子供たち。
(ここが遊び場なのだろうか)
墓場で鬼ごっこをする事にした。
(これはセットでしょうか。本物なら罰当たり)


女の子が一人ケガをした。
(私帰る。他の子は黙っているだけ)
男の子も次々とケガ。帰っていく。
(時代設定は昭和?)


残ったのは男の子二人だけ。
この子もケガをした。僕帰るからね...
最後に残った男の子。帰ろうとするが...
「続きをしようよ」そんな声が聞こえてきた...


※後記
さて本作には小学生の少年少女が出演しています。氏名はキャストロールに出るのですが、どの子がどの名前なのか判りませんので固有名詞は一切省略。子役ファンの方ならすぐに判るのかもしれませんけれど。





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