恋文 (1985年)

作品総合評価 6点
少年の出番 10%(出番は少ないものの出色の演技でした)
寸評 ダメ男、妻、元彼女の不思議で濃厚な三角関係
【少年映画でない理由】出番少ない。
映画情報など 1985年製作。VHSビデオ絶版。
写真は和田求由君。


直木賞作家の連城三紀彦氏の原作。日活ロマンポルノなどの神代辰巳監督作品。男女の愛情や欲情が狂気じみて感じられるほど濃厚に描かれています。それほど有名な作品ではありませんが、見られた方の評価はかなり高いようです。

主演の萩原健一さんが亡くなられた時、種々の追悼放送がありましたが本作は放送されず。VHSビデオは絶版で中古は相当な高値がついています。でもどなたかがyoutubeに全編をUPされていますので、興味のある方は今のうちに。

1982年の映画「誘拐報道」で萩原健一さんと共演した和田求由君が息子役で出演。どうせチョイ役かと思っていたら、これが素晴らしい演技。出番は短いのですけれど...

両親と海に行った。父はハーモニカを吹きながら息子を見つめる。 
(父は息子を愛している。でもこれが最後の旅行になるのか..)
■ストーリー

小学生のユウ(和田求由)は両親と暮す。母(倍賞美津子)は雑誌記者。父(萩原健一)は中学の美術教師。父は酒を飲んで暴れて警察に留置される常習犯。そんな父へ見知らぬ女性から手紙が届き、それをユウは読んでしまった。その女性は父の元彼女(高橋惠子)で白血病で余命僅か。

父はいきなり学校を退職。家を出て元彼女の看病に専念する。当然のことながら母は驚きそして怒る。そして父の従姉妹と偽って元彼女に会いに行く。しかし母は元彼女に怒りが湧かず不思議な親近感を覚える。やがて父は母に離婚を迫った。元彼女が生きているうちに結婚するためだ。

深い葛藤の末、母は離婚届を父に渡した。そして病院で結婚式を挙げる。母もユウも列席。でもユウはどうしても祝う事ができない。やがて元彼女は亡くなった。父は母とユウの待つ玄関まで帰ってきたが...

■男女の愛憎に翻弄される幼い少年

ダメ男の美術教師。萩原健一さんが本当にハマり役。死を待つ元彼女への狂おしい愛。しかし同時に妻への愛も捨てきれない欲張り男。本作タイトルの「恋文」とは妻からの離婚届の事。離婚届を恋文と受け取るこの男の心の複雑さがよく現れています。

倍賞美津子さん演じる妻も一筋縄ではいかない女。いわゆるキャリアウーマン。夫に隠れて不倫だって。また本来ならば夫を奪って憎むべき女性に対しても同性愛っぽい雰囲気さえ出しています。

そんな男女の関係の中で放っておかれるのが息子のユウ。和田求由君は当時10歳くらいでしょうか。時おりみせる視線は非常に厳しく同時に哀情にみちています。まるでヨーロッパ映画の少年のような雰囲気。短いカットですが、監督さんがしっかり撮ってくれているのが判ります。

製作は1985年ですが、フィルムの色調や街の様子はまるで1970年代。どんよりと暗い。でもたまにはこんな映画もいいのではないでしょうか。もう少し少年のシーンが多ければ...

素っ裸で歯磨きするユウ。帰ってきた母に..
(ほらブーラブラっと言って股間をみせる...)
父宛に来た手紙をみてしまったユウ
(この時は、母は別に動じなかったが...)


ちょっと手紙が気になるユウ。
お父さん、出てってしまうような気がする...
父の膝の上にのって甘えるユウ。
父はハーモニカを吹いてくれた。


父は自分の帽子をユウの頭にかぶせた。
(これがお父さんとのお別れの品なのか...)
初めて母に反抗的な態度をとったユウ。
母に平手打ちを食った。泣きながら学校へ...


父と元彼女の結婚式。母とユウも参列した。
(どうしても祝福できないユウだった。)
ラストシーン。母と2人で寝るユウ。
(ちょうどキャストロールが...)


母もユウもベッドの中で服をぬぐ。母のセーターが頭につかえて変な顔に。
ユウがいい顔しています。これからは2人で生きていこう!

※後記
前にも書きましたが、1982年「誘拐報道」、本作1985年「恋文」に続き、1986年「離婚しない女」でも和田求由君は萩原健一さんと共演。気に入られたのかもしれません。





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