極道ペテン師 (1969年)

作品総合評価 4点
少年の出番 30%(重要な役ですが)
寸評 高度成長とは無縁の大阪西成。死んだ少年が哀れ...
【少年映画でない理由】出番が少ないこと。
映画情報など 1969年公開。VHSビデオ絶版。
写真は二宮博見君。


原作は野坂昭如氏。大阪万博の前年1969年に大阪西成の釜ヶ崎でロケ。日本は高度成長に沸いていたのでしょうが、釜ヶ崎は戦後の焼け跡に毛の生えた程度に見えました。野坂氏の『火垂るの墓』と共通する部分も探せばあるかもしれませんが、完全なるドタバタ劇。

お前の母ちゃんの家はどこや!連れて帰ったる。ケン坊に手を焼いたカンパイは車に乗せた。
汚い大阪の下町をぐるぐると巡ったあと....

大阪の釜ヶ崎。カンパイと呼ばれる男(フランキー堺)が主人公。カンパイは仲間とつるんで詐欺を繰り返す。ある住職を騙して寺を乗っ取り、怪しげな(卑猥な)宗教を作って主婦を騙してボロ儲け。最後は寺を売っ払ってしまう。またニセ政治家を仕立てあげたりと。とにかくカンパイと詐欺仲間のチームワークが抜群。

ある日、ケン坊(二宮博見)という男の子がカンパイに会いにきた。お父ちゃん!と言って。俺には子供はいないと追い返すが、何度もしつこくまとわりついてくる。詐欺仲間も手を焼く。ところがケン坊は不発爆弾が爆発して死んだ。呆然とするカンパイ。一転して怒り、爆弾を放置していた区役所へ殴り込む...

■大阪の役者がいない...

主人公のフランキー堺さん(堺市とは関係なし)、伴淳三郎さん、朝丘雪路さんなど全て東京系。南利明さんは名古屋系でした。いつも書きますが、大阪が舞台でも大阪芸人以外が演じる方が好きなのです。

映画はドリフターズやクレージーキャッツのドタバタ映画のノリ。野坂氏の小説のような貧困とか反戦などの社会性よりもエンタメが中心。少年が粉々になって死んだのに。涙の一粒も出ません。それが哀れ。

まだ戦争帰りの世代が現役だった時代。主人公も元航空兵。情が移りはじめたケン坊。なのに幼くして無念の爆死。ラストシーンは怒りに燃えてセスナ機を乗っ取り、そのまま国会議事堂にでも特攻かと思ったら、どこからともなくケン坊の声。がんばりや〜 ガクッと力が抜けました。

それにしても人の大勢いる釜ヶ崎の公園のど真ん中。不発爆弾が地面にめり込んだまま。爆弾の頭は露出しているのにもかかわらず24年間も放ったらかし。不発弾は1km四方くらいを立入禁止にして自衛隊が処理するなんてニュースを今でもよくみますが、西成はどうでもよかったの?

ケン坊を演じた二宮博見君。薄汚い服装にみそっ歯。決して可愛いとは言えませんが、見ていて私も情が移ってきました。車で誰もいない荒地に野良猫のように捨てられ。それでも戻って来る。詐欺仲間に至っては処分しようかと。さすがにそれは...と反対した時に爆弾の音。

ペテン師のカンパイの前に現れたケン坊。
(ペテン師って最近聞きませんねぇ...詐欺師の事)
あまり煩いので押入れに閉じ込められた。
(賭け麻雀の手をしゃべりまくったので...)


遠く離れた工事現場に捨てられたケン坊。
(飼っちゃダメと言われたイヌを捨てるように...)
でもケン坊は戻ってきた。イヌのように
母ちゃんが言うたんや。お父ちゃんやって。


ケン坊が怪我。カンパイは慌てて医者へ。
眠るケン坊をみていると情が移りはじめた...
ケン坊が死んだ現場。カンパイは決意した。
(爆発は手榴弾くらいの規模。さすがに撮影できませんし)



※後記
本作の翌年1970年に公開された巨匠黒澤明監督の『どですかでん』でも乞食の男の子が死ぬシーンがありました。全くテイストの違う作品ですが、やはり幼い子供が死ぬのは辛いなぁ...





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