罪の声 (2020年)

作品総合評価 B+
少年の出番 5%未満
寸評 グリコ・森永事件を題材に、よく出来た物語。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 2020年、公開。BD/DVD発売中。
写真は甘 詩羽(かむ しう)君。


1984、85年に日本中を騒がせたグリコ・森永脅迫事件ですが、犯人逮捕に至らぬまま時効が成立。警察の完全敗北となりました。同じ未解決の3億円事件(1968年)と同様に、小説やドラマの格好のネタになりました。本作も小説が原作。グリコをギンガ、森永を萬堂という架空の社名に変えています。

いわば他人の褌で相撲を取るような脚本、どうせ大した事はないかと思っていました。いやいや、これが意外に面白くてハマりました。舞台が関西でも私の生活圏というのも興味深いところです。

暴力団に監禁されている姉弟。2人は学校には行っていない様子。

京都でテーラーを営む曽根(星野源)が父の遺品からカセットテープと手帳を発見。事件の脅迫に使われた子供の声が録音されており、自分の声だった。入院中の母に聞くが要領を得ず、父の関係者に聞いて回る。一方、在阪の新聞記者の男(小栗旬)がもう一人の主人公。事件の特集を組む事になり、当時の関係者への聞き込みを開始。

事件では他に2人の(姉弟らしい)子供の声が使われており、曽根は姉弟の消息を追う。どうやら自分の伯父が黒幕。やがて曽根は新聞記者に存在を知られ2人は協力し合う。姉弟の悲劇が明らかに。暴力団に監禁され姉は死亡、弟も廃人同様に。新聞記者は遂に事件の首謀者を英国で探し当てた。曽根の伯父だった。


ストーリーは最低限のものに抑えました。推理劇でもあるのでネタバレ防止もありますが、とにかく次々に話が展開していくので、ストーリーを書くのが大変だからです。それだけ優れたエンターテイメントに出来上がっています。まあ映画を見て下さい。

と言いながらネタバレ。犯行は左翼のインテリ層が企画し、右翼の暴力団が実行。当初の目的は身代金ではなく企業の株価操作。それが途中から暴力団が主導権を握り現金強奪目的に。さらに暴力団は仲間割れして抗争を繰り返し、元の主犯は海外へ逃走。そんなところです。あくまで小説!

事件の舞台は私鉄の阪神沿線、京阪沿線。いやいや私の生活圏。しかし主役を演じるのは星野源さんと、小栗旬さん。お二人とも東京や埼玉のご出身。関西モノで関西人が演じるとベタベタ過ぎてみれません。東京系の役者さんが演じる作品に良作が多いのが鉄則。故・萩原健一さんの『誘拐報道』のように。

そして少年俳優ですが、曽根の子供時代を演じた甘詩羽(かむ しう)君。出番は僅かですが、甲子園阪神パークでの記念写真が印象に残ります。阪神パークも無くなって20年近く。レオポンも覚えていますよ。ヒョウとライオンのハーフ。グリコ森永事件の真っ只中の1985年に死んだそうです。

もう一人は、脅迫電話の声になった姉弟の弟役の石澤柊斗君。あの坂上忍さんの事務所所属。映画では、父が暴力団内の仲間割れで殺され、母と姉と3人で脱出するも暴力団に監禁される役どころ。やはり出番は少ないものの、姉を追いかける演技は大熱演でした。


その日は伯父に連れられて阪神パークへ。
しかしその時の記憶は曖昧だった。
実際には母に命じられて脅迫音声を録音。
当時の母は警察や国家権力に恨みを抱いていた。


姉弟は監禁先のアパートをそっと出た。いいの?
姉はクリームソーダをおごってくれた。久しぶりの味。
ごねんね。その言葉を残して姉は出ていったが...
ヤクザに見つかり、弟の目の前で車にはねられた...


ヤクザは弟を脅す。逃げたらお前も母親も命はない。
弟は言いなりになるしかなかった。
まだ幸せだった頃の姉弟。夏祭りで浴衣姿。
(どこで運命の流れが変わってしまったのか...)


阪神パークの入園記念写真。伯父さんに写真を撮ってもらった。
(阪神パークは甲子園球場のそばにありました。私も幼い頃なのでよく覚えていませんけれど)


※後記
事件で脅迫電話させられた3人の子供の運命は明暗を分けました。反政府左翼の伯父は甥っ子を使いましたが、実際に録音したのは母。母もまたかつては活動家。しかしとっとと手を洗って普通の暮らし。一方の姉弟の父親は警察くずれの暴力団員。仲間を裏切って殺され、姉弟と母は暴力団に拉致されて監禁。弟は生き残ったものの社会の裏で見捨てられた人生。最後は少し希望の見える終わりかたでしたけれど。





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