儀式 (1971年)
作品総合評価 |
B+ |
少年の出番 |
10数分程度(少年時代のみ) |
寸評 |
大島渚監督の渾身の1作。かなり難解。 【少年映画でない理由】出番が少ないこと。 |
映画情報など |
1971年公開。DVD発売中。 写真は椿隆一君。 |
日本ATG(アート・シアター・ギルド)創立10周年記念作品。大島渚監督がパワーに溢れていた頃の作品。WOWOWの放送で初めて鑑賞しました。戦後も残っていた日本の家長制度。マフィアのファミリーも同じ。しかし最後は哀れ。なおこのレビューでは、短い少年時代のみにフォーカスします。
満州から戻ってきたマスオ。家長の祖父はマスオを特別扱い。
(一人だけ祖父の目の前で食事。こりゃ息がつまるゎ...)
満州から母と引き上げてきたマスオ(椿隆一)は祖父(佐藤慶)の家で暮らす。他に3人の子供、テルミチ(大田良明)、リツコ、タダシ(椿幸弘)がいた。マスオの父は自殺。帰ってきたのは、その葬儀の真っ最中だった。マスオは祖父の直系後継者。他の3人は血は繋がっているが複雑な関係。祖父は戦犯容疑者で厳格なワンマン。マスオの母にも酷い言葉を浴びせます。
マスオは年長のテルミチに一目置くようになります。祖父はますますワンマン。そして葬式や結婚式といった儀式に異様ともいえる執心。しかしこの家族は次々に非業の死を遂げます。祖父の最後も哀れなもの。最後にテルミチも自殺。その葬儀の場面で本作は終わります。
主人公はマスオ。漢字で書くと満洲男。そのまま。ソ連侵攻の中、命からがら帰還できたのは母とマスオの2人だけ。特に幼い弟を土に埋めた事がトラウマになっており、帰国してからも地面に耳をつけます。弟の声が聞こえる。まだ息のあるうちに埋めたのでしょうか。
祖父の横暴。母には「お前は満州で強姦されまくったのだろう」なんて暴言を吐くなど酷い扱い。しかしマスオは自分の後継者なので丁寧に扱います。しかしそこには孫への愛なんてものは感じられません。
まあとにかく、自殺したり、事故死したり、一族は悲運というか非業の最後。そしてその葬式。棺の中の遺体を放り出してその中に入ったり。偏執的で変質的な行為に頭が痛くなります。そして信頼していた従兄のテルミチ。最後は祖父を殴り、そして自身もまた自殺。
ただ少年時代の描写はキリッとしていて私は好きです。椿隆一君の表情も非常に印象に残りました。映画序盤の20分ほどだけでもご覧になられればと思います。
苦労の末に満州から帰還したのは母とマスオだけ。
幼い兄弟は死んだ。父は先に帰国したが自殺。
祖父は血の繋がらない母を徹底的に無視。
しかし直系の孫であるマスオは違った。
入浴中も叔母が世話をしてくれる。
(しかし変なことになりそうで...)
左は従兄のテルミチ。複雑な事情のある子。
マスオはテルミチの気骨ある性格に憧れもあった。
一人になると思いだすのは満州のこと。
(辛い逃避行だった。)
幼い弟をまだ息のあるうちに埋葬。それがトラウマに。
地面に耳をつけると、満州の地の下の弟の声が...
※後記
少年時代のマスオを演じた椿隆一君。セリフはたどたどしいのですが、キリッとした表情が印象に残りました。ネットで調べてもあまり情報がありません。タダシ役の椿幸弘君は兄弟なのかもしれません。