銀平町シネマブルース (2022年)
作品総合評価 |
B+ |
少年の出番 |
約10% |
寸評 |
廃業相次ぐミニシアター。再興に向けた企画は... 【少年映画でない理由】出番過少。 |
映画情報など |
2023年公開。BD/DVD発売中。 写真は小鷹狩八君。 |
2023年最後のレビューとなります。全国で廃業が相次ぐ町のミニシアター。映画好きたちが集まって再興に向けた活動をする作品です。そう簡単には行かないと思いますが、町の映画文化の存続を願って、今年の最後に取り上げることにしました。
銀平町スカラ座に集まった常連たち。新しいバイトの近藤に挨拶する。
(この待合室の雰囲気がいい。特に左の売店。なんかコーヒーと菓子パンを買いたくなって...)
映画監督だった近藤(小出恵介)は挫折して故郷の町へ。ホームレスにカバンを持ち逃げされて一文無し。町の映画館、銀平スカラ座の支配人に見込まれて住込みのバイトに。しかし映画館の経営は火の車。映画館の常連たちと話し合った結果、60周年記念イベントをする事に。近藤のPCにある作りかけの映像を見た支配人。これをイベントの目玉にしよう!
常連の一人、中学生のマモル(小鷹狩八)に映像編集を手伝って貰うなどして映画は完成。そして60周年記念の日。映画館は大入り。近藤の別れた妻と娘もやって来て盛況のうちに終了。近藤の心に情熱が蘇り、映画監督に復帰しようと決心する。
映画館の60周年記念イベント。確かにカンフル剤にはなると思います。しかしあくまで一過性のもので、恒常的に経営が安定するとは思えません。どうやってミニシアターを存続させていくのか。本作ではみえません。(もちろんそんな手法が簡単にあるなら、各地のミニシアターが廃業しなくて済んだのでしょうけれど)
ただ本作では親友の自殺でショックを受けて映画製作を止め、妻子とも別れた映画監督が、町の人と一緒になって映画作りをする中で、情熱や自信を取り戻し、また映画製作の道に戻ろうするプロセスはよく描けていると思います。
映画館の常連をパートナーとして大切にするのは何かヒントになるかもしれません。本作のように中学1年生の少年も入って、若い層を巻き込むのは素晴らしいと思います。演じた小鷹狩八君。まだ変声前ですが、頼もしい感じがよく出ていました。ずっと詰襟制服というのがステレオタイプ的過ぎて。普段は私服で、最後の葬儀の時にはピシッと制服で決めてくれた方が良かったのでは。
最後の葬儀。これは持ち逃げしたホームレスのおやじ。実は映画ファンで常連の一人として絡んできます。イベントが無事終了したその日。映画館のシートで倒れて死亡。大好きな映画館で死ぬのは本望かもしれません。(ただ後々ホラーのネタになったりして。終映後の誰もいない映画館にオヤジが一人現れるとか...)
ホームレスの棺を持って一列になって歩くシーン。よくあるのですが、なんとなくイタリア映画の雰囲気。フェリーニ監督作品を思い出す感じですので、ひょっとして意識していたのかもしれません。
自己紹介する中学1年生のマモル。
映画が好きです。声変わり前の声が優しい。
近藤のPCにある映像編集のお手伝い。
会心の出来なのか、満面の笑顔。
近藤の別れた娘と妻がやって来た。
マモルが二人に父親(近藤)の作品を見せる。自慢げに。
イベント当日。またやってきた娘に声をかけるが、
あっけなくフラれたマモル。思わず顔を背ける。
支配人がマモルに声をかけた。恋人できたか?
僕の恋人は映画です! それでよし。
映画ファンだったホームレスが亡くなった。
身寄りはいない。近藤が先頭で常連が後ろに続く。
葬列は続く。等間隔に歩く。身寄りはいないがホームレスは幸せだったかも。
(少年が一人いるだけで、本当に絵になります。)
※後記
廃業する映画館が多い中で、今でも地元に愛されて続いている映画館もあります。本作の撮影が行われた川越スカラ座は行った事はありませんが、きっとそうなんだと思います。地元の方々のニーズも汲み取り、次々と特集や企画を打ち出していく。なによりも映画愛が感じられることが大切なんだと思います。