肉弾 (1968年)

作品総合評価 低予算ですが、なかなかの意欲作。
少年の出番 出番は20分ほど。けっこう印象に残る役。
寸評 純粋だった軍国少年に未来は無かったのか。
【少年映画でない理由】あくまで反戦映画。
映画情報など 1968年公開。BD、DVD発売中。
写真は雷門ケン坊君。


『日本のいちばん長い日』などの岡本喜八監督作品。ただあまり予算の無い作品だったのでしょう。モノクロで画質は良いとは思えませんし、戦争映画のドンパチもありません。反戦映画という分類なのでしょうけれど、そういう政治的なものに関心はなく、ただ雷門ケン坊君の演技が印象に残ります。

海岸で戦車に肉弾攻撃の訓練をする青年(寺田農)と、それについていく少年(雷門ケン坊)。

学徒動員された青年(寺田農)は苛烈なシゴキを経て少尉に任官するも、海岸で戦車に肉弾攻撃を命じられる。1日だけ与えられた休暇で少女(大谷直子)に一目惚れ。少女のために国を守る決心。広い海岸でたった1人で訓練をしていると、戦災孤児の少年(雷門ケン坊)とその兄(頭師佳孝)と出会った。

少年は青年の任務に興味を持ち、後を追いかけて一緒に訓練をしたりする。青年に頼まれてあの少女に伝言を伝えに行ったが、折からの空襲で少女も兄も死に、少年だけが戻ってきた。その直後に青年は別命令。ドラム缶に魚雷をつけた特攻兵器で出撃。やがて終戦。しかし青年はそれを知らされず、海を漂い続ける...


本作品の登場人物に名前はありません。主人公の青年はただ「あいつ」。大学生で学徒動員されても陸軍の場合、最初は2等兵?扱い。罰則でまる1日全裸でシゴかれます。演じた寺田農は恥ずかしい役を涼しい顔で熱演。もちろんボカシが入っています。やがて少尉になりますが、部下もなく広い海岸で戦車に体当たりとは。

1日だけ貰った休暇。青年は古本屋や慰安所へ。そこで出会った女学生に一目惚れ。彼女と慰安行為をするつもりが、現れたのはとんでもないオバさん。しかしその後で女学生と念願の行為。なぜか女学生は数学の問題に取り組んでいて、青年は数学を教えます。このあたり2023年の塚本晋也の映画『ほかげ』は影響を受けたのかもしれません。

そして戦災孤児の少年。常に「日本良い国、強い国」と口走っていますが、青年はそれを冷ややかに見ています。勉強しろよと言うと、少年はどうせ死ぬんだから勉強なんかしても無意味。青年は、今の世では無意味かもしれないけれど、次に生まれ変わる時、勉強していないと、ウジ虫やワラジ虫になるぞ。少年はドキッとして、ワラジ虫だけにはなりたくない。勉強教えて。

まあ何事にも感化されやすい純粋な少年。演じたのは雷門ケン坊君。どう褒めても美少年とは言えませんが、愛嬌のある顔。噺家系の顔。そのせいかセリフ回しが素晴らしい。私が雷門ケン坊と言ってすぐに思い出すのが、テレビで放送していたアニメ『サスケ』のサスケ役。きっとカッコいい子だと思っていたのに、テレビで初めて本人を見たときに驚いたこと。(これ以上は書けません)


海岸にいた兵隊の青年に興味を持った。
少年は両親を失い、孤児だった。
それ爆薬だぞ、と言われて腰を抜かす少年。
実は中身は砂。火薬は後日支給されると言うが...



兄が勤労動員から逃亡。この後、教師に殴られる。
(演じた頭師佳孝さんは巨匠 黒澤監督のお気に入り)
少年が一人戻って来た。みんな空襲で死んだ。
拾った手榴弾を持って。これで仇を討つんだ。



少年は穴を掘って一人で潜む。敵が上陸したら...
青年はドラム缶特攻兵器で行ってしまった。
オバさんから終戦を聞いて、がっくり。
その後も青年は海を漂流。白骨化するまで。




※後記
本作品で主役を演じ、毎日映画コンクールなどで主演男優賞に輝いた寺田農さん。惜しくも本年(2024年)3月に逝去されました。いい役者さんが亡くなられた事を寂しく思います。





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