52ヘルツのクジラたち (2024年)

作品総合評価 虐待の連鎖。最後は希望で終わるが、やや安易。
少年の出番 全2時間15分。少年のパートは約30分。物足りない。
寸評 ロングヘアーで話せない少年の表情が心に残る。
【少年映画でない理由】虐待を受けた女性の映画。
映画情報など 2024年公開。BD/DVD発売予定(24/9月)。
写真は、桑名桃李君。


映画チラシやポスターに写っているロングヘアーの少年が気になっていました。U-NEXTの有料配信で鑑賞。2時間16分もの大作ですが、このロングヘアー少年のパートは30分ほどで、オマケ的なのが残念。それでも心に残る作品でした。できればこの30分の部分にフォーカスしてリメイクしてほしい...

52ヘルツのクジラの声を聞くキコ(杉咲花)と少年(桑名桃李)。

26歳のキコ(杉咲花)は亡き祖母の家で生活を始めた。ある嵐の日、びしょ濡れの少年(桑名桃李)を連れて帰った。少年の身体は虐待の傷だらけ。何かトラウマを抱えているのか話す事が出来ない。驚いたキコは少年を保護しようとする。しかし少年には母がおり、そう簡単には行かない。

そんな時、キコの親友ミハル(小野花梨)が転がり込んできた。キコとミハルは少年が暮らしていたという北九州へ行き、少年の生い立ちを知る。少年の名前は愛(イトシ)。両親は離婚し母に引き取られたが、男に依存する母は育児放棄。キコはミハルらの助けを借りて奔走し、ついにイトシを引き取ることになった。


上のストーリーは主人公キコの現在を描いた30分ほど。残りはキコの3年前、2年前、1年前に遡って過去が2時間近く描かれます。まあ興行的には杉咲花さん、志尊淳さんのラブストーリーをメインにしないといけないのでしょうけれど。少しだけメイン部分を。

幼い頃から母に虐待を受け、大学にも行かず認知症の義父の介護を押し付けられたキコ。それを救ってくれた安吾(志尊淳)に感謝しつつも職場のエリート男性と恋仲に。しかしエリート男性には婚約者がいて修羅場。目が覚めたキコは改めて安吾に恋心を抱くが、安吾は自殺してしまった。彼はトランスジェンダーの元女性だったのだ。まあ何とも壮絶な過去...

びしょ濡れの少年を連れて帰り、服を脱がせると傷だらけ。しかしキコのお腹にも包丁で刺された傷跡。愛憎の末の修羅場で返り討ち?にされた傷。相手はエリートなので示談金をたんまり貰ったんでしょう。そのお金で老母が住んでいた大きな家を手入れして優雅な生活をしているのでしょうか。

それは置いといて、虐待を受けた少年の目が忘らないほど印象に残ります。もちろん桑名桃李君の演技なのですが。とにかくロングヘアがいい。口が聞けないという設定だからかもしれませんが、その表情が素晴らしい。本当に神々しい?オーラすら感じました。

演じた桑名桃李君。カツラではなく本当の髪の毛。ヘアドネーションのために長くしていたそうです。最後に髪を切ります。可愛い事は可愛いのですが、オーラは消えてごく普通の少年に。やはり髪には神が宿るのでしょうか。


嵐の日、キコはお腹の傷が痛み出して倒れた。
少年がボロボロの傘をさしかけてくれた。
キコのお腹の傷跡をみた少年は驚いた。
少年自身も虐待の傷だらけだったけれど。


少年は口が聞けない。たどたどしい字で自分の名前を「ムシ」と書いた。
キコはそれを見て、違う!ムシなんかじゃないと叫んだ。その後、少年は言った。「52」と呼んで欲しい。


少年はここへ来る前は北九州にいた。ちほちゃんという叔母さんが優しくしてくれた。
それを知ったキコと親友は少年を北九州へ連れて行く。観覧車に乗る。うう〜ん少女にしか見えず...


北九州の下町。少年は思い出した。
1軒の長屋を目指して駈けて行く。
ちほちゃんは亡くなっていた。向かいのおばさんの話。
少年は愛と書いてイトシ。でも母親はムシと呼んで...


キコの家に戻った少年。自分が邪魔になっていると思い、家を出て行った。
キコは必死になって追いかけてきた。大丈夫なんだって!


キコに正式に引き取られる事になった少年。愛。長い髪ともお別れだ。
ここは本当に髪を切ったそうで、失敗出来ない一発撮り。ようやく笑顔。普通の少年に戻っていく...


※後記(今回は長いので小見出しをつけました)
52ヘルツとは
タイトルについて。クジラの中に52ヘルツの鳴き声しか出せないものがいる。この声は他のクジラには聞こえないそうです。そのためコミュニケーションが取れず孤立してしまうとのこと。主人公のキコは、何かあるとこの52ヘルツのクジラの声の録音をイヤホンで聞いています。少年にも聞かせました。そして少年もこの声のトリコに。

ヘアドネーション
難病治療の副作用などで髪の毛が無くなってしまった方々。そんな方々が少しでも明るくなれるようなカツラですが、一番最適な素材が人毛。しかしなかなか入手できない。そこで髪の毛を伸ばして、寄付しようというものです。youtubeで「ヘアドネーション 男の子」と検索すれば、結構な数の映像がヒットします。どの少年も髪の毛の長いだけで、どこか色っぽく思えて。

本当に大事な人とは。灯台下暗し
本作主人公のキコは虐待から助けてくれた男性(岡田)に感謝こそすれ恋心はありません。ひたすらエリート男性一本槍。しかしトランスジェンダーとはいえ岡田を求めた時は既に遅し。
思い出したのが名作「風と共に去りぬ」。主人公スカーレットはイケメンのアシュレーひと筋。ひらすら愛してくれたクラーク・ゲーブル演じるバトラーと結婚するも心は通じ合わず。結局は去っていく。
もう一つ。浜田省吾さんの名曲♪もうひとつの土曜日。これは男性視点からみたもの。
 ♪ゆうべ眠れずに泣いていたんだろう。彼からの電話待ち続けて...(後略)
 ♪もう彼の事は忘れてしまえよ(中略)その頬の涙、乾かせる誰かがこの町のどこかで、君の事を待ち続けてる..





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