火まつり (1985年)

少年の出番 主人公の二人の幼い息子。出番は僅かだが、最後は本当に痛ましい。
寸評 熊野の自然の中で生きる男。狂気に満ちたラスト。
【少年映画でない理由】出番過小。
映画情報など 1985年公開。DVD絶版(中古はかなり高値)。
写真は主人公の長男(氏名不詳)。


芥川賞作家の中上健次氏のオリジナル脚本。主演の北大路欣也さんがキネマ旬報ベストテンで主演男優賞を受賞するなど評価の高い作品でしたが、見る機会がありませんでした。2024年になって日本映画専門chで鑑賞。作品内容よりも熊野の自然や鉄道風景が印象に残りました。

主人公の男(北大路欣也)が回想した紀勢本線全通の式典(1959年)。
(男は中学生だった。ここでは体操服は男女同じ。まだブルマーはありません)

紀伊半島の南部。三重県の熊野にある小さな島で暮らす男(北大路欣也)が主人公。島で大きな土地を所有し、林業を営んでいた。山の神に深い信仰を捧げる反面、妻もいるのに何人もの女性と関係を持つ男だった。島に海中公園建設の話が持ち上がり、男の持つ土地の買収工作が始まった。

男は反対だったが、家族や親族は男を説得するために集まった。男は猟銃を持ち出して親族たちを射殺。幼い二人の息子も射殺。そして最後は自分も自殺した。


中上健次氏の小説はいくつか読みましたが、自分には合いませんでした。熊野の自然の中で繰り広げられる人間たちの憎悪や愛憎。どうしても馴染めませんでした。本作もその要素が残っています。ただ主演の北大路欣也さんの神々しい雰囲気と熱演は非常に印象に残りました。

それよりも印象に残ったのは男が回想する紀勢本線全通のセレモニー。紀伊半島の方々には鉄道の全通が夢であり待ち焦がれていたのでしょう。戦後もかなり経った1959年のこと。しかしそれから30年も経たずに国鉄の分割民営化。新宮から西はJR西日本。東がJR東海。ここで分断されました。(まるでイムジン川)

紀伊半島を一周する特急は無くなりました。セクト主義なのでしょうか。これにより特に熊野側の発展が遅れてしまったような気もします。名古屋から和歌山へ乗換案内で検索すると、新幹線で一旦新大阪。そこから特急で和歌山へ行くルートしか出てきません。あっ、これは本作とは関係ない話でした。

さて映画のラスト。男はまだ可愛い盛りの二人の息子をなぜ射殺したのでしょうか。最初から自分も死ぬ気でしたので、一家全員で山の神に召されようと考えたのかもしれません。


やって来た列車を提灯行列で迎える人たち。(列車の形式とか型番はよく知りません)


セレモニーには象も登場。
ゾウさんなんてあまり見れない地域かも。
ゾウさんの上に乗った中学生男女。
女子は怖いのか男子に縋り付く。男子は役得?


主人公の二人の息子が帰宅した。右は先生。
父は「ジュースでも買ってこい」と二人を追い出した。
その時、家から銃声が轟いた。先生は二人を庇う。
(この時、逃げておれば二人は助かったのかも)


息子たちが家に入るとお母さんたちが倒れていた。


息子たちには死の意味が判らない。これはお父さんが鬼ごっこをしているのに違いない。隠れよう
(二人はこうやって笑いながら、父の銃に撃たれた)


父は息子を抱き上げて床に寝かせた。二人の胸をまさぐり、二人の血を舐めた。何かの儀式なのか...



※後記
もう一つ懐かしいのが水上飛行機。紀勢本線開通のセレモニーで小型の水上飛行機が海岸へ着水します。最近はこんな光景をニュースで見ることも無くなってしまいました。私が見ていないだけで今でもあるんだろうとは思います。





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