悲しみの天使 (1965年)

製作年・国 1965・フランス
少年映画評価
お薦めポイント タブーだった少年同士の純愛。
映画情報など 1970年国内公開。DVD絶版。
写真はディディエ・オードパン君。


少年映画のバイブルともいうべき古典的名作。前回紹介した『さよなら子供たち』と同様になぜかレビューが書けていませんでした。これを書かずに少年映画ファンとは言えません。遅ればせながら。さらっと。

「さよなら子供たち」に比べると本作品はフランス本国でも蔑ろ(ないがしろ)にされている感じがします。なにせ神聖な神学校の男子生徒同士の純愛ですからね。LGBTが社会的に認知されつつある現代とは違いますし。宗教界からのアレルギーが強かったんだと思います。

一方、本作品は日本で公開されるや女性漫画家に大きな影響をもたらし、数々の名作BL漫画が生まれたそうです。これは私の分野ではありませんので、何も言及できません。

本作のメディアですが、随分昔に「寄宿舎 悲しみの天使」というVHSとDVDが発売。でもすぐに絶版。名作なのにその後の発売は一切ありません。Amazonでは中古DVDがベラボウな値段。ハイビジョンリマスターのブルーレイを発売してくれら、そこそこ需要はあると思うのですけれど。
※追記。2021年遂にブルーレイ発売!

納屋の麦わら。ここは秘密の場所。12歳のアレクサンドルと14歳のジョルジュ
(しっかり手を握りあっている...)

14歳のジョルジュ(フランシス・ラコンブラード)が厳しい神学校に転校。ルシアンという友人が出来た。ルシアンは同級生と血の契りを結ぶなど同性愛の事を隠そうとしない。最初はあきれるばかりのジョルジュ。

そのジョルジュにも転機がきた。12歳の下級生アレクサンドル(ディディエ・オードパン)に一目惚れ。なんとかキッカケを作ってアレクサンドルと話すようになる。そして愛の詩を綴った手紙攻撃。ジョルジュは校長から表彰されるような優等生。そんな事もあってアレクサンドルもジョルジュに恋心を抱き始めた。

友人ルシアンも2人を応援してくれた。しかし同性愛は神の意思に背く行為であり即退学。2人の関係も発覚。校長に説得されたジョルジュはアレクサンドルに別れの意思を示す。これは形だけの事だった。しかし純粋なアレクサンドルは絶望。列車から飛び降りて自殺してしまった。

 踏み絵。純粋なだけに少年は踏めない

最初は年上のジョルジュが一目惚れ。次第に12歳のアレクサンドルの方が熱を帯びてきます。血の契りを言い出したり、ジョルジュに他の友人がいると聞いて嫉妬するのもアレクサンドル。

校長から将来の事を含めて説得された時。年上のジョルジュは形だけは別れる事に合意(後で真意を説明したらいいかと)。校長はアレクサンドルにも別れるよう説得。でも純粋な12歳の少年は自分の心に嘘をつくことは出来ないと拒否。隠れキリシタンが踏み絵を踏めないがごとく。

ジョルジュが「あれは嘘。本当は君をずっと愛している」と伝える手紙を渡す事も出来ず、すれ違いのままにアレクサンドルは自殺。まるでロミオとジュリエット。悲劇で終わってしまった。

 ジョルジュは不幸の天使かも

さて優等生のジョルジュ。結果的に2人を退学と解雇。1人を死に追いやった張本人。最初は友人ルシアンの同性愛相手の手紙を校長に密告。次は少年愛性癖の神父を手紙で校長に密告。この神父の行為は許せませんが、決して悪人ではないのです。最後はアレクサンドルの死。

アレクサンドルと違ってジョルジュは現実主義者。踏み絵なんて打算でいくらでも踏むタイプかも。アレクサンドルとの愛だって、時間が経てば飽きてきてポイ。ああ。そんな悲しい見方しかできない最低人間の私。本作を愛する皆様には申し訳ございません。

神学校へ転校してきたジョルジュ
(14歳には見えない..)
子羊を抱くアレクサンドル
一目惚れしてしまった。
ジョルジュのモーションに..
アレクサンドルも応えた..


秘密の温室で2人だけ。
(ここは友人に教えて貰った)
君の心臓の鼓動が聞こえる。
(まるで男女の関係...)
アレクサンドルは巻毛を贈った
(白黒が残念。少年の匂い..)


血の契り。ジョルジュは吸った。
(HIV感染とか関係ない時代)
納屋の麦わらの上で戯れる2人
(これ以上の描写はありません)
2人の関係が見つかり謹慎処分
(♪2人の関係に名前をつけたいよ)


校長から最終尋問?を受ける。
彼と別れるなら退学は免除だ。
退学。汽車の非常口の前で。
自分に嘘をつけない。少年は..
この天使のような微笑も..
2度と見れなくなってしまった。



※後記
北杜夫「どくとるマンボウ青春記」に旧制高校では本作のような関係は普通だったと。北氏自身も意中の下級生がいたとか。まあどこの男子校、女子校でも似たような事は普通にあるのでしょう。もう一つ。本作でジョルジュが読んでいたアナトール・フランス。神学校では禁書だと没収。恥ずかしながら私は読んだことがありませんん。青空文庫にもいくつかあるので今度読んでみようと思っています。




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