オリバー! (1968年)

製作年・国 1968年・英国
少年映画評価
お薦めポイント Consider Yourself!
映画情報など BD/DVD発売中
写真はDVDジャケットから。


少年映画の古典ともいうべき「オリバー!」です。英国の文豪・ディケンズ原作で、有名なキャロル・リード氏が監督。英国映画ながら1968年のアカデミー賞で作品賞など6部門を独占した名作。

今回レビューを書くにあたってネットを検索してみると、日本では非常に評価が低いのに驚きました。悲しい事ですが、ミュージカル、少年映画、という要素は日本の大衆には受けないようです。

冒頭、孤児院の少年達による合唱とダンス。こんなに大勢の少年達が歌い踊ります。

孤児院で育ったオリバー少年(マーク・レスター)は、管理人にさからったために、孤児院を追い出され、葬儀屋の小僧として売られてしまう。(Boy for Sale。物悲しいけれど名曲です)

葬儀屋でもトラブルを起し、地下室に監禁されるが脱出したオリバーはロンドンへやってきた。そこでスリの少年ドジャー(ジャック・ワイルド)と運命的な出会い。ドジャーに誘われてスリの親玉フェイギン(ロン・ムーディー)の仲間になった。(ここで名曲Consider Yourself。10分近いミュージカル場面は圧巻)

フェイギンは、小心者のくせに欲深い泥棒であるが、どこか憎めない。子分の少年達から上前をハネているが、少年達への愛情ものぞかせる。そんな連中が一目おくのがビル。芸術的なスリの腕前を持つが、冷酷非情な男。もう一人、酒場で働くナンシーは少年達の憧れのまと。でも彼女はビルの愛人。

いよいよオリバーの初仕事。見事に失敗し捕まって裁判所へ。しかし孤児のオリバーを哀れに思った被害者の老紳士は、オリバーを自宅に引き取って育てる事にする。(あ〜これでメデタシ、メデタシ。そんな訳はありません。)

ビルは、オリバーがスリ団の秘密をばらすのではと危惧し、すきを見てオリバーを連れ戻す。ナンシーはせっかく幸せをつかんだオリバーに同情し、老紳士の家へ帰そうと策を練る。しかし激怒したビルに殺されてしまった。だがこの殺人がビルの年貢の納め時になってしまった。

警察や群集がスリ団のアジトを急襲、オリバーを人質にして逃げるビル。しかし最後は銃弾に倒れた。オリバーは老紳士の元へ戻り、幸せに暮らしましたとさ。(蛇足ながら、この老紳士はオリバーの親戚だった。これは小説とはいえ、あまりに出来すぎ)

ちょっと待って。ビルは死んだが、フェイギンやスリ団はどうなったの?スリ団は解散。少年達は秘密の通路を通って脱出。でもその途中でフェイギンは、大事に隠していた財宝を箱ごと川に落としてしまった。あぶく銭は身につかないのですね。

肩を落としてトボトボ歩くフェイギン。この年寄りの身でどうやって暮していこう。そこへ現れたのがドジャー少年。この時の彼の笑顔は本当に素晴らしい。フェイギンとドジャー少年は肩をくんで、2人で生きていく事にしましたとさ。(まっとうな職業に就いて欲しいところですが、2人はスリ稼業を続けるようです。でも幸せそう。)

 所感など

題名にもなったオリバー・ツイスト少年を演じたのが、ご存知マーク・レスター君。1970年代には日本でも女性に爆発的人気を博したそうです。(私はよく知りませんでしたが)

小説では主役ですが、本映画では主演という位置づけではありません。運命に翻弄される幼い少年役、本当にぴったりの可愛い少年でしたが、やはり線の細さは否めません。でも出番は1番多いので、少年映画ファンとしては嬉しいところです。(ちなみに主演はスリの親玉役のロン・ムーディー氏)

一方、スリ少年の1番弟子ドジャーを演じたのがジャック・ワイルド君。幼いながらも強い個性のある顔、表情が豊かで、セリフや演技も子役とは思えない。そしてアカデミー賞助演男優賞にノミネート。残念ながら受賞は逃しましたが、受賞していれば史上最年少でもっと話題になった事でしょう。それほど当り役だったと思います。


マーク・レスター君とジャック・ワイルド君
ジャック・ワイルド君、この後共演する少女俳優
(トレーシー・ハイドさんに似ているような)

この2人のコンビ。映画「小さな恋のメロディ」でも復活し日本では大ヒットします。当時の雑誌などをみると、女性ファンの間では、マーク派とジャック派が出来るなど、かなり話題沸騰だったようです。

東宝では、マーク・レスター君の人気にあやかって彼を日本に呼び、映画『卒業旅行』という作品を作り、日本人の少女俳優と共演。さすがに、これはかなり酷評されたようです。でも何とかして1回見てみたい。どこかで見れるような情報をご存知の方がおられせんでしょうか。

しかし2人とも成人するにつれて話題も減り、マーク・レスター氏は引退、ジャック・ワイルド氏は残念な事に亡くなられました。しかし2人の物語はスクリーンの中に永遠に記録されています。これが映画の素晴らしいところ。

「オリバー!」のミュージカルは今でも上演され、2006年には巨匠ロマン・ポランスキー監督により再映画化されました(私は未見です)。2人の少年、オリバーとロジャーの関係を彷彿させる場面や、明らかにオマージュと思える場面も様々な映画で見られます。その原点が本作品だと思います。

本当に素晴らしい作品。新品DVDでも1400円で入手できます。ミュージカルと少年映画の楽しさを満喫して下さい。できるならブルーレイ化して欲しいのですけれど。




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