ぼくの小さな恋人たち (1974年)

製作年・国 1974年・フランス
少年映画評価 A (少年俳優はS)
お薦めポイント 境遇に流されて生きる思春期の少年の葛藤
映画情報など 2001年日本再公開。DVD発売中
(写真は主役のマルタン・ローブ君)


邦画少年映画があまり作られなくなり、ネタに困りましたので、海外作品も積極的に取り上げていこうと思います。しかし邦画と違って数が多すぎます。網羅的な紹介は、ノースエンド先生の映画講座にお任せするとして、管理人の心に残る作品に絞ってランダムにレビューします。

温故知新シリーズとして、少年映画の宝庫であるフランス映画から。本作品は1974年製作ですが、2001年にユーロスペースの配給で国内で上映され、DVDも発売されています。DVDパッケージやチラシの超々美少年が印象的で、この写真だけでDVDを買ってしまったのでした。

DVDパッケージの写真。この美少年ぶりにやれらました。

主人公は、フランスの片田舎で祖母と二人だけで暮らす13歳の少年マルタン・ローブ(本名も同じ)。そろそろ思春期のマルタン、目下の関心は女の子のことばかり。でも臆病な彼は先へ進めない。それでも勉強は優秀で高校入学試験にも合格した。

中学卒業を間近に控えたある日、別れて暮らす母が愛人と一緒にやってきた(ちなみに父はいない)。マルタンは母とその愛人に引き取られることなり、町の小さなアパートで暮らすことになった。祖母の体力が落ち、もう育てられないからだった。

マルタンは自分が歓迎されていない事を察した。母も愛人も貧乏で、せっかく合格した高校も行かせて貰えず、自転車修理工場で働かされる(給料も貰えない、丁稚奉公)。マルタンは反抗もせず、流されるままに働き、ずっと年上の労働者たちと付き合い、タバコも覚え、女の子の尻を追いかける。

高校へ行った友人には引け目を感じるが、大人とつるんだり映画を見るのも楽しい。でも生来の臆病さは消えず、女の子をものにすることは出来なかった。しかし、とうとう女の子とキスをすることに成功するが。

 フランスの片田舎のリアリズム

私にとって、おフランスは憧れの国でした(おフランスと「お」をつけるのは、赤塚不二夫さんの「おそ松くん」に登場するイヤミの口癖)。でも1974年のフランス片田舎は、美しくもなく、貧乏くさい町並みが写っています。でもそれが、たまらなくいいのです。リアリティーというか、シンパシーを感じて。

考えればフランスは最終的には戦勝国ですが、国土の多くをドイツ軍と連合軍に蹂躙され、戦後かなり経っても疲弊が残っていたのかもしれません。マルタン少年が食べる朝食も、たったこれだけ?と思うような粗末なもの。アメリカ人のように肉やポテトを山のように食べるなんて、夢の夢なんでしょうね。

 寝ても覚めても、女の子を追いかけるしかないの?フランス人は

もう一つ。登場する男という男は、女性の尻を追いかける事しか関心がないみたいなのです。「少年よ大志をいだけ」のクラーク博士はフランスにこそ必要ですよ、なんて思ったりして。

また、女の子も同じ。男から声をかけられるために生きているような感じ。今の時代の女性が見たら噴飯モノですね。男の私から見ても、こんな社会は動物と同じじゃないかとさえ思ってしまいます。

 マルタン少年流の「運命や境遇に流される人生の生き方」

フランスの辛口ばかり書きましたが、実はこれがスパイスになって、主人公のマルタン少年の生き方が、ずしんと心に残るのです。欧米人は映画で見る限り、少年といえども当然のように自己主張が強く、少し辟易することもあるのですが、本作品の「運命に逆らわずに流される」少年の生き方に共感を覚えるのです。

女の子しか関心の無いマルタンが、1回だけ熱意を見せます。高校へ行けなかったマルタンが、自力で勉強して大学へ行くことが出来るか、年上の高校生の友人に熱っぽく問うシーン。無理だろうなあ、と思うと、少し涙が出そうになりました。

これはジャン・ユスターシュ監督の自伝だとの事。出演者の大半は全て役名と実名が同じですので、私小説ならぬ、私映画でしょうか。それにしてもマルタン・ローブ君は美少年でした。声変りも済んでいない少年が大人とまじって仕事や女の子漁りをするのですが、こんな懸念も。マルタン君自身が大人の男から襲われたしないのかな(腐女子?的な発想ですみません)

フランスでも貧乏臭い風景がリアルで。
それでも美少年ですなあ。




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