温故知新シリーズ第2弾です。やはり少年映画の宝庫である70年代のフランス映画から。少年モノの代名詞のような映画「大人は判ってくれない」のフランソワ・トリュフォー監督の作品をレビューします。
フランスの地方都市ティエールの小学校を舞台に、夏休みまでの小学生の様子を群像劇的に描いたもの。よくあるドキュメンタリー風ではなく、小さなエピソードをつなぎ合わせて、子供から思春期へ成長していく少年って、こんなものだったなあと思わせてくれます。
歩き始めたばかりの幼児、二人の兄弟、おしゃまな女の子のエピソードなど、最初はバラバラな印象でしたが、次第に2人の少年に焦点が定まっていきます。1人は転校生のジュリアン(フィリップ・ゴールドマン)。まるで少女のような美少年ですが、汚れたボロボロの服を着て、教科書も満足に持っていません。
しかしジュリアンはしたたかです。万引きなんか当たり前、映画館もタダで入ります。家に帰らず(帰れず)遊園地で寝たり、まるでホームレス。そんなジュリアンの最後はあっけなく。身体検査の日、ジュリアンは服を脱ぎません。無理やり脱がされた身体は全身傷跡だらけ。警察が呼ばれ、ジュリアンは保護されて、そのまま施設へ連れていかれました。
もう一人は母のいないパトリック(ジョリー・デムソー)。父は障害者で車椅子生活。パトリックはクラスの中でも一足先に思春期に突入。友人の母親に恋心を持ったり、女の子と映画館に行ったり、でも、そううまくは行きません。しかし夏休みのスクールでとうとう彼女が出来ました。
この一つ前にレビューした「ぼくの小さな恋人たち」(1974年)では、フランスって貧乏なんだね、と思わせる風景でしたが、本作品は2年後ですが、かなり印象が違います。本当にカラフルでお洒落。小学校が舞台なんですが、これが男子校なんです。(来年から共学になる、なんて会話がありました。)
ところが、映画を見ていて最初は共学だとばかり思っていました。長髪の子が多いし、赤や黄色のカラフルな服を着ている子が多いので、当然女の子もいると。一人一人アップで見ると確かに少年です。日本だと、こんな錯覚をすることはまずありません。
ジュリアン役のフィリップ・ゴールドマン君。DVDパッケージに印刷された顔を見ると女の子にしか見えません。親から虐待を受けて、ちょっと荒んだ少年役なのですが、やはり可愛いのです。最後に裸になって虐待の傷跡を見られるのですが、そのシーンは言葉だけで実際には裸のカットはありません。(見たくないので、よかったです。)
パトリック役のジョリー・デムソー君。短い金髪で、いかにもフランス人の男の子という感じです。友人の母親に恋するのですが、そのきっかけは、映画「旅情」のキャサリン・ヘップバーンのポスター。「渋いねえ、そんな大人の女に恋するのは30年早いよ、坊や」と言ってやりたい感じです。
全体的には、起伏の少ない映画ですが、フランスの風景とマッチして、過激な表現もなく、淡々と楽しめる作品です。過激な表現といえば、冒頭で小さな幼児が10階から転落するのですが、これがビックリ。ここでは書きませんが、興味のある方はDVDをご覧下さい。(安心して下さい。決して悲劇ではありません)