ハロルド・フライのまさかの旅立ち (2022年)

製作年・国 2022年・英国
お薦めポイント 800kmを歩く老人。英国の風景と息子の幻影。
映画情報など 2024年国内公開。DVD発売中。
写真は自殺した息子が10歳の頃。
(BRAXTON KOLODNY君。女の子ではありません)


はっきり言って少年映画では全くありません。人生も終りに近い老人の旅。他人に迷惑をかけることなく歩いていく姿。そして自殺してしまった息子の幻影。特に女の子のように可愛かった10歳の頃の幻影が頭に残ります。10秒あるか無いかですけれど。

老人のハロルドが泊まった安ホテル。なぜかロビーでダンスパーティーが。
真ん中で一人で踊っている少年。自殺したはずの息子。これは幻影だった。

随分前に退職したハロルド(ジム・ブロードベント)は妻と二人暮し。ある日、同僚だった女性からお別れの手紙が来た。彼女は余命僅かでホスピスにいる。ハロルドは返事を書き、近所のポストに投函に行ったが。そのまま彼女のいるホスピスへ歩いていく事に。英国の北のはずれ。約800kmもある。

車や交通機関は使わずただ歩く。心配している妻には時折電話する。なぜかマスコミに知られ、ハロルドと一緒に歩く連中まで出てきた。ハロルドの思いは元同僚よりも大学生で自殺してしまった一人息子。息子の幻影に悩まされながらもホスピスに到着した。


主人公のハロルドは日本で言えば後期高齢者。かつては毎日乗っていた車も、もう運転は出来ないようです。そんな老人が、死期の近い同僚に会いに行きます。同僚は女性ですので、妻は面白くありません。そりゃそうですね。なぜわざわざ歩いて行く必要があるの。

手ぶらで家を出てポストまで。いや郵便局から出そう。買物をした店の店員が何気なく言った言葉がひっかかり、歩いてホスピスまで行く事に。靴は古い革靴。手にはコンビニのビニール袋だけ。こりゃ無理だろう、きっちり足はマメが破れて血まみれ。しかしそこは映画。医師の女性が助けてくれます。

薬物中毒だった若い男と道づれになったり。まるで巡礼のような集団がついてきたり。しかしハロルドに頭の中に去来するのは自殺した一人息子。なぜ息子にもっと寄り添ってあげれなかったのだろう。800km歩くという苦行は贖罪なのでしょうか。目的地に到着。ネタバレはしませんが、特に感動的なことは起こりません。

幻影に出てくる息子は薬物に溺れていた大学生の頃が多いのですが、6歳、10歳の少年の頃も数カット登場します。

長い髪をなびかせて踊る少年。10歳の頃の息子だった。


本当に楽しそうに踊っている。(女の子にしか見えませんが)


ふと少年の顔色が曇った。視線の先にいたのは父(自分)だ。


踊りを止めて立ち尽くす。父は息子に何をしてしまったのか...


※後記
映画冒頭でハロルド夫妻の生活がほんの少し垣間見れます。毎朝、妻が朝食を作ってテーブルへ。一緒に食べますが、食べ終わった食器を片付けて洗うのは妻。部屋に掃除機をかけるのも妻。ハロルドは温厚な性格のようですが、家事は何もしません。これが普通だったのでしょうけれど、やはり今の女性から見れば「主婦は家政婦ではない」と思うことも理解できます。




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