グランド・ジャーニー (2019年)
製作年・国 |
2019年・フランス |
少年映画評価 |
A- |
お薦めポイント |
渡り鳥と一緒に空を飛ぶ少年。夢のように美しい。 |
映画情報など |
2020年国内公開。DVD発売中。 写真はルイ・バスケス君。 |
楽しみにしていた国内公開はちょうど新型コロナウィルスによる自粛時期。DVDが出てすぐにレンタル。しかし強烈な違和感。チラシに載っていたチャーミングな少年はどこにいるの? まさかこの子? 本当にフランス人なの? ちょっと言ってはいけない事まで口に出そうで。
しかし作品を見ればそんな疑問は霧のように消滅。主役少年トマに感情移入。CGでは無い本物の美しい映像。渡り鳥たちの姿。本当に素晴らしい作品でした。できればDVDではなくブルーレイか4Kで見たい。
渡り鳥と一緒に空を飛ぶ少年トマ。羨ましい...
14歳の少年トマ(ルイ・バスケス)は夏休みの間、離婚して家を出た父の家で過ごす事になった。父は鳥類学者。絶滅危機にある雁のヒナを育て、北極圏から南仏まで一緒に飛行して「渡り」を教え込む計画の最中だった。しかし計画は政府機関によって却下。父は書類を偽造して強引に計画を進めていたのだった。
トマの前でヒナが孵化。ヒナはトマを親と思い込む。トマと父は協力者と一緒にノルウェー最北端へ。ここで偽造計画がバレた。しかしトマは一人で雁を引き連れてエンジン付パラグライダーでフランスを目指す。長い旅を終えてフランスに帰還。トマは支援者の祝福を受ける。しかし計画の成否は次のシーズンまで待たねばならない。
トマの両親の離婚理由は描かれていませんが何となく想像はつきます。鳥類保護にのめり込んで家族をないがしろ、母はキャリアウーマン。息子のトマはゲームしか興味のない無気力人間。かと思っていました。母が新しい男性と付き合っていても「ああそうですか」と反発もありません。
夏休み。トマが邪魔になったので元夫の家に厄介払い。トマは長い間父をみていなかったようで、車の中から父の姿を見て「あれが父さん?もう帰りたくなったよ」父の家にはWi-Fiもなくネットゲームも出来ない。まるでドラマ「北の国から」の純と同じ。
何もする事が無いので、孵化器の中の卵にイタズラしたら...ピキピキと殻が割れてヒナが次々と孵化。父は自分がヒナの親になるつもりだったのに、息子のトマに先を越されてしまった。トマも観念したのか、父と一緒にヒナを育てる事に熱中。やっぱり父の血が流れていたのかも。
とにかくフランスなど欧米映画の思春期少年ときたら、サカリのついた猫のように女の子を追いかけ回す事が天職のようで。ちょっとは学問とか将来の夢とか、そういう事に取り組みなさいよ。なんて思っていましたが、本作のトマは鳥類と空を飛ぶ事に夢中。少年らしくていいじゃありませんか。
父たちの制止を振り切って一人で空へ飛んでいったトマ。雁たちがトマの後を追いかけます。各地でその姿をみた人がスマホで撮影してSNSに投稿。次第にトマと鳥たちはネットで有名になり、まるで芸能人のようにファンが増えていきます。
しかしエンジン付きパラグライダーで飛べるのは数時間。池や沼へ降りて休憩。鳥たちもこれが限界。各地でファンがいるのでガソリンや食料の差し入れを受けます。しかしまだファンがいなかった頃、トマはガソリンや食料を盗みます。ここは元クソガキの片鱗ですね。
父の家にやってきたトマ。最初は渋々だった。ネットゲームも出来ないし。
父の飼っているヒナが孵化。変な帽子とマント。ちょっとでも親鳥の雰囲気を出すため?
ヒナを連れてノルウェーの北端ラップランドへ。トラックでやってきた。(どことなく郷ひろみさん似)
トマの操縦するエンジン付パラグライダー。鳥たちと一緒。CGではなく実写。
大飛行を終えて半年後。一緒に飛んだ鳥たちは自力でラップランドへやって来るだろうか...
※後記
トマ役のルイ・バスケス君。最初はアジア系かと思いました。デビュー当時の郷ひろみさんのような雰囲気。と言っても今の人はデビュー当時の郷さんなんて想像できないかもしれませんけれど。
さて本作で気になっているのはトマと父のその後。父は有印公文書偽造(フランスでも印鑑があるのですね)。トマは無免許操縦。軽飛行機の操縦免許は15歳から。トマは14歳。そのほか許可もなく国境を超えて領空侵犯。EUなので国境は自由なのかもしれませんけれど。やっぱりお灸は据えてあげないと。とはいえ爽やかな映画でした。