マイ・リトル・ガーデン (1997年)
製作年・国 |
1997年・デンマーク/独/英 |
少年映画評価 |
S |
お薦めポイント |
廃墟の中、一人で生きる少年の美しさ |
映画情報など |
DVD発売中。 写真はジョーダン・キズック君。 |
マイ・リトル・ガーデン。なんて乙女チックなタイトルでしょう。題だけ聞けば当然スルーするような作品でしたが、本サイト客員のノースエンド先生からDVDをお借りしました。これを見て衝撃を受けたのでした。いずれノースエンド先生の部屋で取り上げられる作品ですが、どうしても我慢できず、ここでレビューを先に掲載してしまいます。先生ごめんなさい。
ナチス占領下のポーランド。ゲットー(ユダヤ人居住区)で父と暮すユダヤ人少年アレックス(ジョーダン・キズック)の物語。労働力となる男を除き、老人、女性、子供が次々どこかへ連行されていく。連行先は判らないが、帰還者はおろか手紙一つ来ない。みんな本能的に死を予感している。
遂に男も含めて全員が連行される事に。父は「必ず助けに来る」と約束し、アレックスだけを逃がす。この約束がアレックスを苦しめるとは。廃墟で秘密の場所をみつけ、アレックスの孤独な生活が始まった。でも心強い友達がいる、鼠のスノーだ。
ユダヤ人達の残した生活用品や食品を集め、それなりに楽しいと思ったのも束の間。ドイツ兵、ギャング、地下組織の危ない連中が次々にやってきてアレックスに迫る。負傷した地下組織の男がころがり込んできた。アレックスは危険を冒してポーランド人の医者を呼び、彼を助ける。(おまけに少女とデートまで。やるじゃないかアレックス)
やがて男は去り、少女とその家族も去る。2人ともアレックスを一緒に連れて行こうとするが、父の約束を守るため、彼は残る。そしてとうとう廃墟が破壊される事になった。鼠のスノーも死んだ。アレックスは廃墟を出ようとしない。ああ。
所感など
とにかくアレックスを演じたジョーダン・キズック君。彼の演技に尽きる。これは本当に素晴らしい少年映画です。最初あまり好印象ではありませんでした。センターで分けたオールバック風の長髪は、ひと昔前のプレイボーイみたいで少年らしく見えません。
また眉毛が灰色で薄いので、角度によっては眉を剃ったヤンキー兄ちゃんのような悪人相に見えます。でも声が美しい。そう思っているうちに少年に感情移入し、グイグイと映画に引き込まれてしまいました。何回も書きますが、12歳前後の少年の顔は千変万化。美女に見えたり青年に見えたり。それを見るのも少年映画の醍醐味です。
製作者側も判っているのでしょう(何を?)。寒いポーランド。モコモコに着膨れした服装ですが、廃墟の中でなぜかシャワーを見つけます。あれれ?と思っているうちに服を脱いでシャワーシーン。スレンダーなボディを見せてくれますが、悲惨なユダヤ人の物語の中では、どこか違和感も感じます。まあカタい話は無しにして、少年俳優の魅力を演出してくれたことに感謝しておきます。
美少年はトクですね。
映画の中でアレックスは何度も何度も危機を迎えます。もちろん映画ですから、その危機を乗り越える訳ですが、多分に美少年だから助かったのでは、なんて思うことも。これが大人や不細工少年だったら、ギャングに始末されていただろうし、ポーランド人医師や少女にも助けられず、ナチへ通告されてたりして。
その極めつけがラスト近くのシーン。これまでアレックスが隠れた場所は見つかる寸前までくるものの、いつも助かっていました。しかしついにドイツ兵に見つかります。恐怖に震えながら手を上げる美少年。
ドイツ兵は銃を向けますが、なんと!少年を見逃してやります。可哀想に思ったのでしょう。でも不細工な人間だったらどうだったでしょうか。(どうしても容姿にコンプレックスのある私ですので、妙にひがんだ感想で申し訳ありません。)
ラストの甘さが残念!無念!
最後にどうしても一言。父の約束を信じて廃墟に残るアレックス。建物の破壊の音が迫り、唯一の友達だったネズミも死んでしまい、ガレキの中に横たわる。見ている方は、もう涙、涙の準備が出来ています。爆破されて粉々になった建物の下に埋まってしまい、エンドロールが流れると思うじゃないですか。
その寸前に父がやってきて、父子の感動の対面。これは幻なのか、余りに出来すぎの脚本ですが、どうも原作者の実体験に基くものらしいです。ああ涙も感動も肩透かし。これがなければ超一流作品だったのですけれど。でも素晴らしい映画には違いありません。
前髪が顔に垂れる。大人の女性のようにも
ついにドイツ兵に見つかってしまった