El Bola (2000年)
製作年・国 |
2000・スペイン |
少年映画評価 |
A+ |
お薦めポイント |
虐待に悩む少年。それを救ったのは二人の少年の友情 |
映画情報など |
国内未公開。海外版BD/DVD発売中。 写真はフアン・ホセ・バレスタ君 |
12歳の少年たち。学校生活と言えば絶対イジメが出てくると身構えながら鑑賞。しかし熱い友情はあってもイジメはありません。その代りに父親による虐待。やっぱり暴力からは逃れられないのが少年の宿命でしょうか。でも本作は素晴らしい出来でした。
アルフレッドとパブロ。この場面では本当に子供らしい笑顔。
(チケット売場の青年がアルフレッドの父の知合い。タダで乗り放題にさせて貰った)
12歳の少年パブロ(フアン・ホセ・バレスタ)は一見どこにでもいる普通の少年。同級生たちと危険な遊びに興じたり。でもどこか孤独の影。そこへアルフレッド(パブロ・ガラン)という少年が転校してきた。パブロはなぜか彼に惹かれて後を追いかける。アルフレッドにも孤独な影があった。
やがて2人は親友に。アルフレッドの父は刺青の彫師でスキンヘッドの強面。しかしアルフレッドの家庭には愛が満ち溢れており、パブロは心が安らぐ。ある日アルフレッドはパブロの背中に痛々しい傷をみつけた。家で虐待を受けいたのだ。そしてパブロは家を飛び出し、アルフレッドの家に逃げ込んだ。
金の玉
タイトルのEl Bolaとはボール(玉)の事。パブロ少年はいつも金色の玉を握りしめています(いやらしい意味ではありませんよ)。ビー玉くらいの大きさのベアリングの球をお守りにしているのです。常に肌身離さず握っています。ちょうど最近の子がハンドスピナーを回すように。
ただの神経質な子? でも映画をみているうちに御守りがなくては生きていけない程に、精神的にも肉体的にもストレスを負っている事が判ってきます。パブロには死んだ兄がいました。父はその兄を溺愛し、何かにつけてパブロと比較。そして罵倒。
少年たちの友情が素晴らしい
一方のアルフレッド。身体が大きく最初に登場した時は典型的なイジメっ子タイプに見えました。しかし思慮深く優しい少年。顔は怖いけれど優しい父と母。可愛い弟。しかし孤独の影。それは好きだった祖父がエイズになり、お見舞いにも行けない事。(当時はエイズというだけで酷い差別を受ける時代)
そんなアルフレッドとパブロはまるで恋人同士のように惹かれあって。2人だけで遊園地。フリーフォールやジェットコースターに乗って笑う顔が本当に素晴らしい。本作には女の子は全く登場しません。本来なら異性への興味が燃えたぎる年代。それを全く描かないのが潔くて気に入りました。
不快なシーンを極力描かない
印象に残るのがアルフレッドの父親ホセ。欧米ではタトゥーはファッションの一部。でもホセが彫るのは侍など日本式の刺青。そんな事もあり怖い人と思ったのですが、理想的な父親像として描かれています。パブロが実父に虐待されていると判った時、日本の任侠映画ならホセはパブロの父を叩き伏せるかも...
しかしパブロの父を糾弾したり、面前で恥をかかせるようなシーンはありません。パブロへの虐待シーンも最後を除き極力抑えています。しかし前後の状況で観客にはしっかり判ります。これはある意味、素晴らし演出だと思いました。(最後は悪者が徹底的にやられるシーンがないとスッキリしないはずなんですが、本作はそれがなくても心地よいのです。)
パブロ。普通の少年にみえるが...
(どこか暗い影がありました)
転校生のアルフレッド。大柄の少年だ。
(イジメっ子タイプかと思ったが、知的で優しい少年)
遊園地は初めてのパブロ。いきなりフリーフォールに乗った。隣に親友のアルフレッドがいてくれるから...
夜遅くまで二人は話し込んだ。(この後、遅く帰宅したパブロは父に折檻された...)
夜遅くドアの向こうに立っていたのはパブロ。
アルフレッドの父は急いで病院へ連れていった。
これが大切 なEl Bola。病院の床に落とした...
この時はアルフレッドが拾ってくれた。
(施設に収容されたパブロにはもう不要だった)
※後記
パブロ少年が肌身離さず持っていた玉。それがポロッと落ちた瞬間がありました。病院で治療中のあまりの痛さに。これを見て思い出したのは石田衣良さんの小説「少年計数機」。こちらの少年は計数機(カウンター)を肌身離さず持つ少年。でも最後は2人とも玉や計数機が必要なくなってしまいます。落ちる瞬間。なにか象徴的な感じがして。
ご興味を持たれた方はご覧になって下さい。youtubeで英語字幕付きが全編上っています。(2021年4月現在)