| 製作年・国 | 2002・メキシコ |
| 少年映画評価 | Ａ+ |
| お薦めポイント | メキシコの大女優の貫禄。そして少年。 |
| 映画情報など | 国内未公開。海外DVD(英語字幕)あり 写真は少年役のイマノール君。 |
エスペランサ...なんて素敵な響きの言葉でしょう。恥ずかしながら最近まで意味は判りませんでした。日本語では希望。ああそれで...女性のファッションブランドや楽曲に好まれる言葉なのですねえ。（あのスピッツにも♪エスペランサがあるとか）
本作はメキシコ映画。あのトランプ大統領が糞ミソに貶す国。でも意外にもメキシコは良質な少年映画が多いのです。もう1国やはりトランプ氏に貶されるイランも。少なくとも今の米国映画よりはレベルが高いのではと思っています。
メキシコの大女優ケイティ･ジュラドさんの遺作。と言いいながら私もジュラドさんの事は本作で初めて知りました。往年の美人女優の面影は想像できませんでしたが、その分、人間としての重みや存在感が素晴らしい（今風に言えば、ハンパない）。日本でいえば樹木希林さんのような感じでしょうか。
もちろん。12歳の少年を演じたイマノール（Imanol）君も素晴らしい。
荒れ果てた屋敷で隠居していた老婦人。少年の姿に再び希望を感じた...メキシコのある町。12歳の少年ホルヘ(Imanol)は母と2人暮し。思春期の少年はどこの国でも同じ。学校の宿題はやる気にならず、先生に叱れられて停学処分。母親や母親の恋人には思いっきり反抗。そんなある日、友人達とサッカーをしていてボールがある屋敷の中に飛び込んでしまった。
幽霊屋敷と噂される荒廃した大きな家。ホルヘは塀を登って庭に入る。庭掃除の老人とオッカナイ顔の老婦人がいて一喝。出ていけ！2度とお前の顔なんぞ見たくない！ 一目散で逃げ出したホルヘ。しかしどういう訳が翌日また屋敷に入って行った。老婦人は怒るが、この日は様子が違う。ホルヘを座らせて話を聞き始めた。
それから2人は毎日のように会話。ホルヘの悩みや質問に老婦人はズバッと答える。自分の事は語らない。名前？そんなものはどうでもよい。人間は名前や業績で判断するものではない。少年と老婦人はまるで恋人のような関係に。老婦人はホルヘに小箱を渡す。お前が20歳になった時に開けるように。老婦人は亡くなった。
映画は大人になったホルヘが回想する形ですが、映画の9割以上は少年と老婦人。そして2人の会話。映像的には大きなヤマはありません。時折草原の中で少年と母が走り回るシーンがありますが、これは観客の休息のためのサービスかもしれません。
ケイティ･ジュラド演じる老婦人が本当にいいのです。ズバッと答える。しかし少年の指摘で自分が間違っていた場合はすぐに認めます。でも芯は1ミリたりともずれません。彼女の正体は有名な作家。ラテンアメリカの女流作家として初の大きな賞を受賞したとか。そして欧米で様々なロマンスも...
人間関係に疲れて数十年の隠居生活。それを破ったのが12歳の少年。彼をみて最後の希望を託すことにしたのでしょう。少年と最後に別れる時、とうとう自分の名前を言います。エスペランサよ。
箱の中身は...老婦人エスペランサから素晴らしい贈り物もらった少年ホルヘ。しかし彼は単なる糞ガキに戻り、エスペランサの事などすっかり忘れ、平凡で魅力のない男になってしまった。TVでたまたま女流作家エスペランサを見て思い出した。箱を開けてみると、エスペランサからの手紙と未発表の原稿。
原稿を出版社に持込むと幻の原稿としてセンセーション。その出版パーティー会場でホルヘはエスペランサの亡霊から思いっきり叱責を受ける。あの時の少年はどこへ行ってしまったんだ！
少年ホルヘを演じたイマノール君（フルネーム不明）は12歳よりも年上に見えますが、とにかく少年らしい輝きに満ちていました。一方大人になったホルヘ役の俳優さんは今ひとつ。でもエスペランサに叱られてきっと輝きを取り戻す事でしょう。
ホルヘは12歳。まだまだ幼い行動も...
左はホルヘの親友。彼は童顔。
しまった！サッカーボールが幽霊屋敷に..
最初は怒鳴られて逃げ出したが、またやって来た。
ホルヘは老婦人と会うのが楽しみだった。
老婦人の体調は良くない。
エスペランサの死を聞いて泣くホルヘ。
それから何年。テレビに若いエスペランサの姿が...※後記
本作 Un Secreto de Esperanza（エスペランサ(人名)の秘密）の英語タイトルは A Beautiful Secret（美しい秘密）。エスペランサを希望とか美しいなどの意味にしているのですね。ちなみに私はエスペランザと思ってました。スペイン語では zaは濁らずサと発音するのでしょうか。