海だけが知っている (2018年)

製作年・国 2018・台湾
少年映画評価 B+
お薦めポイント 台湾南部の孤島の自然と少年たち
映画情報など 2018年東京国際映画祭で上映。海外版DVDあり。
写真はジョン・ジアジョン君。


東京国際映画祭で上映され、ジョン・ジアジョン君ほかのキャストやスタッフも来日して会見なども行われました。しかし残念ながら日本での一般公開は無し。少年映画だったので日本では受けないと思われたのかもしれません。でも台湾の蘭嶼という素晴らしい島の自然や、そこで暮らす素朴な少年少女たちに感銘を受けました。

台湾版のDVD。字幕は中国語と英語しかありません。台湾の方々は親日的なので日本語字幕もあると思っていたのですが。やはり日本で公開を拒絶?されたからでしょうか。

民族舞踊の台湾全国大会。蘭嶼のタオ族の代表。主人公の少年マナウェイは堂々のセンター!

台湾南部の島で暮らす少年マナウェイ(ジョン・ジアジョン)。母を亡くし、父は本土の高雄で働いていて、たまにしか帰って来ない。でも優しい祖母がいた。本土から新しい先生(ホアン・シャンホー)が赴任するが、彼はこんな島には来たくなかった。島の小学生たちは時間にもルーズで宿題もしない。先生はイラついて罰を与える。

先生は特にマナウェイに厳しい。しかしマナウェイの境遇や素朴な性格と接するうちに徐々に態度が変わってきた。民族舞踊の大会があり小学校を上げて練習。やがて高雄での大会。マナウェイは父に会える事を楽しみにしていたが、仕事優先の父は来ない。傷心のマナウェイを先生は慰める。そして島での生活は続いていく。


地方の小学校にやってくるのは「二十四の瞳」のような美人の若い先生と相場が決まっています。でも本作ではサングラスをかけた男。おまけに島に飛ばされた?と思っているクソ教師。宿題をしない、遅刻する、それでもアッケラカンとした児童たち。怒った教師は容赦無く校庭を兎跳びさせる。

マナウェイはスリッパを履いて学校へやって来ます。先生はそれを見て激怒。また兎跳び。しかしマナウェイのシューズはボロボロ。高雄のお父さんに何度も手紙を出して新しい靴をねだっていたのです。父が帰ってきて念願の靴を貰ったと思ったら、サイズが小さくて履けません。

マナウェイは紙になぞった自分の足形を何度も送ったのですが成長期。父は古い足形を店に持っていって靴を買ったのでした。そんな事情を知るにつれ、先生はマナウェイを叱れなくなっていきます。

島の伝統的なタオ族の踊り。男はみんなフンドシ一つ。少年たちは当然嫌がります。それでもマナウェイは自分の勇姿を父に見てもらいたい一心で練習に励みます。ところが父は高雄で自分が起こした事業がうまくいかず、子供の事なんか構っていられない。そんな事情も先生は知るとことになります。

さてマナウェイ。素朴な少年とはいえ現代っ子。祖母の作る魚や芋の料理が嫌で、フライドチキンや麺を食べたいと駄々を捏ねます。この祖母が本当に優しい。孫をしかりつつも、孫の好きな料理を持っていきます。ラスト。父に会えないまま島に戻ったマナウェイは祖母に言います。祖母の作った芋料理が食べたい。

マナウェイは紙にマジックで足形をなぞる。
高雄で暮す父にシューズをおねだりするため。
漁師である叔父のお手伝いをする。
海に潜るのはお手の物。素朴な少年だ。


祖母にわがままを言って家を飛び出した。
僕だってフライドチキンや麺が食べたい!
マナウェイに厳しい先生。先生が島に来た日、
海に落としたサングラスを拾ってあげたのに...


民族舞踊の説明会。フンドシを渡された。
(日本のフンドシより機能的かも)
高雄での大会当日。父は来ない。
くよくよするな。先生は肩に手をかけた。


大会が終わって父を訪ねる。でも拒否された。
この後、高雄の海に飛び込んだ。
海から上がったマナウェイ。先生がそっと抱く。
クソ教師だったのに。先生も成長した...



※後記
台湾の蘭嶼という島の事は殆ど知りませんでした。Wikipediaによりますと、明治時代に日本政府は島の開発を禁止。民族や伝統的な暮らしを保存したのは、人類学的な研究調査のためだったとか。「土人」という言葉が思い浮かびます。そして現在。原発の放射性廃棄物(低レベル)が島に保管されていて、住民の反対運動が活発になっているとか。それを聞くと、観光地なのに残念な気がします。

もう一つ。先生が児童たちに与える罰。校庭を兎跳びで1周させます。この兎跳びは日本では危険行為とされて、体育やスポーツの場面では消えてしまいました。懐かしいアニメ「巨人の星」くらいでしか見れません。それが台湾で残っているのは、日本統治時代の遺物?





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