製作年・国 | 2008年・韓国 |
少年映画評価 | S |
お薦めポイント | 北朝鮮の少年は国境を越え、そして死んだ。 |
映画情報など | 2010年国内公開、DVD発売済み 写真はシン・ミョンチェル君。 |
2010年5月2日、シネマート心斎橋(大阪)にて鑑賞。
大阪公開は5/1。ご存知のように毎月1日は鑑賞料金1000円ですが、悔しい事に1400円で前売券を買っていたので、5/2に延期したのでした。シネマート心斎橋は、大阪のアメリカ村の真ん中にあるビルの4F。(アメリカ村とは東京で言えば原宿や代官山みたいな所。オッサンには似合わない街であります。)
純粋に映画として感動よく日本テレビ系列でやっている「潜入!北朝鮮・飢餓地帯を歩く」などのルポ番組の延長線上のものかな、なんて思っていましたが、純粋にドラマとして感動し、ショックを受けました。
特に残された少年・ジュニを演じたシン・ミョンチェル君が本当に素晴らしい。主役は韓国の人気俳優チャ・インピョさんですが、それ以上にミョンチェル君の健気な演技にやられたなあ。ちょっとあざとい演出だと判ってはいても、涙があふれてしまいました。
病に倒れた母を救うため中国へ密航した父。しかし母は亡くなり、父は帰って来ない。孤児となり放浪の果て、収容所に入れられて苦しむ前半は、右の写真のように泣いてばかり。
ジュニと幼なじみの少女(超美少女です)の淡い恋もどきのシーンが印象に残りますが、これとて悲劇への促進剤でしかありません。
また浮浪児のリーダーの少年が、ジュニの世話をしてくれるシーンは、英映画「オリバー」のマーク・レスターとジャック・ワイルドの友情物語をほうふつとさせたのですが、これも悲劇でしかありませんでした。(浮浪児少年が国境警備員に撲殺されてしまうのもショックでした。)
終盤、物語は急展開。韓国へ亡命した父が、支援団体の援助で収容所からジュニを救出し、中国からモンゴルへ脱出を図ります。父親と連絡がつき、支援者の携帯電話で話すジュニは、別人のように明るい表情も見せます。
ちょっともどかしい展開が続きますが、最後は、父と息子が再会し、父は思いっきり息子を抱きしめる、観客の誰もがそう予想し、いや、そう願っていたはずです。でも、叶いませんでした。このあたり、特に終盤の脚本には、かなり不自然な部分があります。
エンディングでは、父の夢想なのか、死んだ妻や息子、幼なじみの少女も笑顔で、元気に暮らすシーンがフラッシュされます。せめてその中では、ジュニを抱きしめてやってほしかった。(このエンディングは、タルコフスキー監督「僕の村は戦場だった」へのオマージュかもしれません。)
かなりネタバレしてしまいました。ごめんなさい。でも、どうしても書きたくなってしまい、指を止めることができませんでした。本当に感動した少年映画です。パンフレットに載っていた素顔のミョンチェル君は、屈託のない笑顔の少年でした。どうか世界中の少年少女が、いつでも笑顔でありますように。
パンフレット、公式サイト、Web上のレビューや批評記事を見ると、普通の映画とは異なり、どうしても違和感を拭えません。政治団体の方、あるいは活動家の方など、普段は映画など見ないような方々が、ある目的を持って、この映画を持ち上げている感じがします。
もちろん、この映画自体が、北朝鮮に対する政治的意図を持って製作されたのかもしれませんが、そういうプロパガンダ的なものは、どうも好きになれません。そのため私としては、それらの解説やレビューはスルーして、純粋に映画ファンとして、逆境の中で生きる少年と家族の愛の物語として、記憶に残しておこうと思います。