父には息子が、息子には父が全てだった。それぞれが相手の全世界となって...
父と子は世界の終りを旅する。人類最後の火を掲げ。絶望の道をひたすら南へ...
これはこの映画のキャッチコピーです。(たぶん)核戦争で世界が破滅し、10年程度経った頃、ずっと避難していた自宅も蓄えが尽き、母が死に、父と子は思い切って家を出て、安全だと言われている南へ旅立つ。その旅の途中で、父も力尽きてしまう。
製作年・国 | 2009年・アメリカ |
少年映画評価 | S |
お薦めポイント | 絶望しかない世界で、希望を求めて歩く父子。 |
映画情報など | 2010年国内公開、DVD発売済み 写真はコディ・スミット・マクフィー君 |
2010年7月5日、梅田ガーデンシネマ(大阪)にて鑑賞。
月曜日、たまたま大阪市内に出張があり、そのまま直接帰宅という事にして、18:40からの最終回を見ようと、梅田スカイビルへ。さすがに平日とあって、観客も少なく、快適な気分で鑑賞できました。ピュリッツァー賞を受賞した原作小説を事前に読んで感動しておりましたので、映画の出来はどうなんだろうと、少し不安でもありました。
結論から言いますと、原作通り、本当に素晴らしい少年映画でした。アメリカ映画とは思えない地味さ、暗さ、そしてピーンと糸を張ったような緊張感、私のサイトをご覧下さっているような少年映画ファンの方々には絶対に必見の映画ですよ。
父には息子が、息子には父が全てだった。それぞれが相手の全世界となって...
父と子は世界の終りを旅する。人類最後の火を掲げ。絶望の道をひたすら南へ...
これはこの映画のキャッチコピーです。(たぶん)核戦争で世界が破滅し、10年程度経った頃、ずっと避難していた自宅も蓄えが尽き、母が死に、父と子は思い切って家を出て、安全だと言われている南へ旅立つ。その旅の途中で、父も力尽きてしまう。
まさにキャッチコピーそのものした。いったい世界に何が起ったのか、これからどうなっていくのか、全く説明はありません。ただ父子の孤独な戦いが、胸を打ちます。父を演じたヴィゴ・モーテンセン氏の演技は本当に鬼気迫るものがあります。少年を演じたコディ・スミット=マクフィー君も、小説からそのまま出てきたような、天使のように純粋な少年でした。
見る角度によって幼い少女、また聖母のような女性であったり、かと思うと思春期を迎えて逞しくなった少年の相貌だったり、千変万化の表情をみせてくれて、彼の顔を見ているだけで飽きることはありません。
荒廃した世界では、邪悪な存在となった人間達に襲われたり、死体などのショッキングなシーンもありますが、そんなものよりも印象に残ったのは、父と子の何でもない会話です。2つだけ紹介させて貰います。
◆これは原作だけで、映画にはありませんでしたが。
拾ったココアの粉を大事にして少しずつ飲む父子。最後のココア。父は息子のカップにそっと全部入れ、自分はお湯だけを飲む。気付いた息子「パパ、それはしない約束でしょ!」と、ココアを戻して半分に。なんてことはない会話ですが、なぜか泣けてきます。
◆今度は映画だけで、原作にはありませんでしたが。
寝入った息子が大事に持っている粗末な巾着袋を何気なく開けた父。子供らしいガラクタが詰まっている。そこに亡き妻の櫛があり、思わず回想が蘇る。やがて父は眠るが、今度は息子に起こされる。「パパ、ぼくの物、勝手に見ないでね!」これも、何となく泣けてしまいます。
その他にも「世界が破滅した後、俺が世界の創造主になったら、もう一度同じ世界を創って、俺はお前の父になる」なんてセリフもありました。これって父子というより、まるで永遠の恋人みたいな感じです。
このままですと父親は息子命の変態オヤジみたいです。それを回避するためでしょうか、妻の回想シーンが原作の数倍以上も挿入されています。あくまで父は、女性が好きなノーマルオヤジですよ、とアピールするが如く。
ちょっとネタバレ過ぎました。ごめんなさい。残念な事は、本作の上映館が本当に少ないこと。もし地方で見れない方は、原作だけでも読んで下さい。絶対に損はしないと思いますよ。
※さて蛇足ですが、前売特典で貰ったポストカード3枚。なぜ準主演のコディ君が大きく写った写真がないんでしょう。これは大いに不満です。