Brecha (2009年)
製作年・国 |
2009・スペイン |
少年映画評価 |
A |
お薦めポイント |
愛に飢えた12歳の少年。しかし周囲には裂け目が... |
映画情報など |
国内未公開。海外版DVDあり。 写真はホセ・ラモン・ラフィタ君。 |
今やカルト少年映画の巨匠となったアルゼンチンのイヴァン・ノエル監督の長編第2作。この当時はスペインで製作していました。そして映画の内容も普通の少年映画です。当時はお金がなかったそうで製作は大変な苦労。最後は撮影に使うDVテープを万引きしたとか。監督自身が謝罪して語っています。
残念ながら国内ではDVDすら発売されていませんが、最近のAmazonジャパンでも海外版DVDを扱ってくれていますので安価に入手できます。但し字幕は英語。少し忍耐が要りますが英語の勉強にも最適ですよ。
イヴァン・ノエル監督公式サイト(Noel Films)より。主演のホセ・ラモン君。
(ダサいと嫌われる白い下着。でもスタイルのいい少年がはくと...こんなにカッコいい)
12歳のホセ・ラモン(ホセ・ラモン・ラフィタ)は祖母と2人暮し。母は亡くなり父は服役中。その父が釈放されて4年ぶりに帰ってきた。祖母は実家に戻り父と2人だけの生活。当然ながらギクシャクした関係に次第に父がイライラを募らせる。
ホセは愛に飢えており、父に愛されようと必死で振舞うが空回り。学校でも友人はいない。友人と称する15歳の糞ガキはホセに万引きを強要。4年間一緒だった祖母ですらホセと距離をとっている。とうとう父が癇癪を起こした。出ていけ!祖母の家へ行け!
ホセの頭には優しかった母の事、湖で泳いだ事などがリピートされるが、肝心な記憶は封印。それが一気にフラッシュバック。母が死んだ時の事だ。ホセが原因だった。思い出したホセは父に泣いて謝罪しようとするが...受入れられず外に飛び出した瞬間、車が...
Coming-of-Age + ミステリー
Brechaとは「断絶」とか「裂け目」という意味。愛に飢える少年ですがその周囲には裂け目があって超えられない。学校では友人もいない。サッカーでもプレイさせて貰えない。父親が犯罪者だったからでしょうか。
祖母と2人で暮らした4年間。祖母はしっかり面倒みてくれました。もちろん愛情もありました。でも彼女の本心を吐露する言葉「こんな病んだ子供の世話を押しつけられて..」ホセはしっかり聞いてしまった。どんな気持ちでしょう。
年上の糞ガキに気に入られようと万引き。それがバレて停学処分。たまたま出会ったバーの女主人に一時は可愛がられますが最後は捨てられて。例外は時々現れるメガネ少女。ホセにつきまとって気持ち悪い虫の話。ホセは嫌悪。たぶんこの少女はホセが作った幻想だったのでしょう。
そして父にだけは愛されようと涙ぐましい努力。それも報われず(最後には報われるのですけれど)。本当に切ない少年。役名と同じホセ・ラモン君。美少年とはちょっと違うかもしれませんが、素晴らしい演技でした。
さて本作品には判らない点が多々残っています。「僕が母さんを殺した」と言ってますがどうやって殺したのか。映画冒頭で少年が飛び出して車にはねられるシーン。この少年は誰なのかミステリー。なんとなくミヒャエル・ハネケ監督を思い出すような作風。(ミステリーでも何でもなく単に私の英語力不足のせい?)
映画冒頭。少年が車にはねられる...
(この青い服の少年は誰なのか...)
父が刑務所から帰ってきた。4年ぶり。
(ホセはとまどいながらも父に近づく)
地元のサッカークラブ。ホセはいつもベンチ。
(学校でも友人はいない。年上の不良少年はいるが...)
唯一の友だちは黒猫。サタンと名付けた。
(ベッドで下着姿でネコ。よからぬ想像は厳禁!)
ホセの記憶。湖で泳いだこと..
父と行ってみた。汚い水で泳ぎなんて出来やしない...
父に買ってもらったシューズ。ホセは大喜び。
でもサイズが小さい事をホセは父に言い出せない...
父とホセはすれ違いばかり。遂に父が爆発。
(大事な黒ネコのサタンも死んだし..)
それから色々あって...
最後に父はホセを抱きしめる。
※後記
私は本作品をある方からお借りして鑑賞。でもAmazonで検索するとThe Coming-of-Age Collection No.18としてDVDが1100円くらい(2020.4.16現在)。便利な世の中になったものです。さてイヴァン・ノエル監督作品がComing-of-Ageにカテゴライズされているのが新鮮。確かに本作品には吸血鬼やゾンビはまだ出てきません。