ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声 (2014年)

製作年・国 2014年・アメリカ
少年映画評価 A-
お薦めポイント トップレベル少年合唱団の裏の世界は・・
映画情報など 2015年公開。DVD/BD発売中。
写真は主役のギャレット・ウエアリング君。


その語もずばり「ボーイソプラノ」なんてタイトルの映画ですので、絶対見逃す訳にはいきません。もうずっと楽しみにしていました。ただアメリカ映画だという事に少し懸念を持っていました。でも、あの演技派の名優ダスティン・ホフマン氏が重要な役で出演しているということで、これは名作の予感が。

もちろん大阪公開初日に鑑賞。この手の映画は日本では受けないので、観客の入りを心配していましたが、7割強の入りで、ひと安心。さて映画ですが、十分満足はできました。でもやっぱりアメリカ映画です。


12歳のステット(ギャレット・ウエアリング)は母と二人で暮らしている。父親はやり手のビジネスマンだが、母とは不倫の関係、すなわちステットは妾の子だった。そんな訳で母は酒に溺れて生活は荒れている。当然のことながら息子のステットも素行不良。

そんな生活がたたったのか、母が交通事故で死んでしまった。仕方なく父が身元引受人として現れたが、お荷物のステットを全寮制の学校へ放り込むつもりだった。そこへ待ったをかけたのが、ステットの担任の女性教師。彼女はステットが類まれな美声を持っており、国立少年合唱団付属学校へ入れることを提案する。

父にとって厄介払いが出来るならどちらでもよく、国立少年合唱団へステットを連れていき、オーディションを受けさせるが、音楽監督カーヴェル(ダスティン・ホフマン)は、心が伴っていないと不合格を宣言。しかし厄介払いしたい父は、なんと大金の小切手を出す。それに目がくらんだ校長は入学を許可してしまった。

こうしてお金で入学したステットは合唱団の練習生としてスタートするが、楽譜も読めないので落ちこぼれ。ツアーはおろかステージにも立てない。カーヴェル監督からは徹底的に無視される。あきらめかけたステットの心を捉えたのは、レギュラー団員達の素晴らしい合唱。僕もあそこに加わりたい。

猛訓練が始まった。友達に楽譜の読み方を教わり、声の出し方を研究する。もともと美声のステットだから、めきめき上達する。しかしカーヴェル監督は彼の方を見もしない。彼が涙を流し、心から歌いたいと吐露した時、はじめて監督は彼を認めた。それからトップのソリストを目指して。

 典型的なシンデレラストーリー(まるで少女漫画の世界)

優れた素質があるのに、先生や友人から不当に扱われ、レギュラーにもして貰えない(私ってなんて不幸なの)。それに耐えて耐えて、ある日突然、実力が認められてスターに躍り出る。先生は元から私の事を思っていてくれたんだ・・少女漫画、いや少年漫画でも同じかもしれません。

みんなそう思ってスポーツや音楽に取り組んでいるんですね。「私なんか、僕なんか」とは思っていても、監督や先生はきっと目をつけてくれている(はず)。でも現実は厳しいのです。大半の人はそのまま埋もれてしまうのです。だからこそ夢なんですね、こんな夢物語が受けるんですね。

 ステットを演じたギャレット・ウエアリング君の魅力

そんな典型的なストーリーの作品を成功に導いたのが、主役のギャレット・ウエアリング君の美少年ぶり。いやいや彼の顔や表情を見ているだけで満足感が得られます(あくまで私の場合ですけど)

残念ながら、ボーイソプラノは彼の声ではなく、吹き替えとの事ですが、これは仕方ありません。天は二物を与えないものですから。吹き替えを担当した少年歌手の歌唱力については素晴らしいと思うですが、専門的なことはよく判りません。
(追記。吹替えは女性歌手ではとの指摘がありました。これは残念です。)

シャープで細長い正統派美少年ではなく、すこしふっくらとした顔つき、ちょうど2011年の映画「リアル・スティール」のダコタ・ゴヨ君にどことなく雰囲気が似た、日本人ウケしそうな美少年です。映画終盤では変声をむかえ、合唱団を去っていくのですが、ギャレット君が本作品広報のために来日した時は、もうかなり成長している様子でした。

(ネタバレついでにもう一つ。ステットの歌に感動した父は、心を入れ替えて、ステットを自宅に引き取ろうとするのですが、これは不幸の予感が。まず父には本妻の娘が二人おり、いきなり妾の子が弟として来たら不快でしょう。またステットだってこれから反抗期、父や腹違いの姉と衝突するのは目に見えて。いやいや、余計な話でした。)

 少年合唱団の世界

少年合唱団といえばウィーン、テルツ、パリ木の十字架などヨーロッパ。アメリカにも国を代表するような少年合唱団があるとは知りませんでした。世界各地へのツアーも。映画では日本公演のエピソードもあり「ほたるこい」の合唱、また「音響効果抜群のサントリーホールが楽しみ」だとか。

合唱団メンバーの中で印象に残るのは、まずライバルの少年(これがまた性格悪く、ステットに意地悪ばかり)、その他、黒人、アジア人など国際色豊かです。日本人風の少年も一人いたのですが、キャストにも載っていないので不明です。

ウィーン少年合唱団にライバル心を燃やしており「うちの方が上であることを証明しよう」なんて、ちょっと微笑ましく感じました。翻って、日本には国を代表するような少年合唱団はあるのでしょうか。全寮制で厳しい練習をしているような合唱団は無いですねえ。強いて言えば、FM TOKYO少年合唱団が、そんな立ち位置になってくれればいいのですが。

僕は歌いたい。ここに置いて
国際色豊かな合唱団。アジア系の団員
(左の少年。ホクロが藤本哉汰君っぽくて)





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