野性の少年 (1969年)

製作年・国 1969・フランス
少年映画評価 B+
お薦めポイント 野生で育った少年が人間になる道のりは遠い。
映画情報など 1969年国内公開。DVD発売中。
写真はジャン=ピエール・カルゴル君。


仏の巨匠フランソワ・トリュフォー監督作品。トリュフォー監督自身も主役の博士役を務めました。当時は狼に育てられた少年少女が話題になっており、日本でもアニメ「狼少年ケン」や特撮「怪獣王子」などが放送。(現在では、狼が子どもを育てる話は、信憑性に疑問があるというのが定説のようです。)


野性の少年ヴィクトールとイタール博士(演じるのはフランソワ・トリュフォー監督自身)

まだ19世紀のフランス。中部地方の森で猟師たちが、獣のように走り回る少年(ジャン=ピエール・カルゴル)を捕獲した。少年はパリの聾唖学校に入れられるが、他の子どもとは全く異質な存在で「人間ではない」と見放された。人類学者のイタール博士(フランソワ・トリュフォー)は彼を引き取って教育する事に決めた。

博士は少年をヴィクトールと名づけて教育に着手。しかしまるで動物の調教だった。言語という概念も無い。博士は忍耐強く教育を進める。やがて文字を識別できるまでになったが、教育の厳しさにヴィクトールは脱走。さすがに博士は断念した。しかしヴィクトールは自分の意思で戻ってきた。博士は教育を再開。愛を持って...


この少年は動物に育てられたのではなく、自分一人で森の中を生き抜いてきたという設定です。その背景には恐ろしい話が。少年を診察した医師は、喉に一直線の傷跡がある事を発見。幼児の時に人間に刃物で斬られたのだろう。そしてそのまま森に捨てられた。斬ったのは親なのでしょうか。

聾唖学校の教師たちは少年に匙を投げました。こいつは本当の白痴だ。おそらく先天性。なので親が喉を斬って森に捨てたんだ。ただ一人イタール博士だけが少年を救おうとします。しかしそれも実は論文を書くためだったのでした。

だから博士も最初は少年に愛情なんてありません。とにかく自分の教育手法の実践のための実験材料という認識でした。なのでスパルタ式の特訓。ただ博士の家にいる家政婦の女性は、少年を親身になって心配していました。

しかし少年が遅々とではありますが、学習していくうちに愛情も芽生えてきます。いったん逃げ出して戻ってきた少年をみた博士の表情には嬉しさと愛情が。でも発する言葉は「さあ勉強を続けよう」

森の中を走る少年を猟師たちが見つけた。
(裸で裸足。撮影は大変だったでしょう...)
襲いかかる猟犬。その顎を手でつかむ少年
(このシーンは本当に怖かった)


捕獲された少年はパリへ送られ身体検査。
(犬の顎を外す怪力少年ですが、ここは...)
聾唖学校。優しい同級生が少年に手話で話かける。
でも少年は全く意思疎通が出来ない。


博士の手を取って、自分の顔に押し付ける。
これも少年の意志表示の手段なのだろうか。
火も恐れなくなった。炎をみつめる少年。
何を考えているのだろうか。森のこと、母親のこと



※後記
本作品を見て思い出したのが『マイ・フェア・レディ』 言語学者ヒギンズ教授がロンドン下町の下品な花売娘イライザを上流階級の淑女に教育する話。本作の少年と同じようにイライザは逃げ出しますが、やっぱり戻ってきました。ヒギンズ教授は実はイライザを愛してしまっていたのですが、帰ってきたイライザに発した言葉は「スリッパを持って来い」。本作と同じ雰囲気です。





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