The Boy from Lebanon (1994年)

製作年・国 1994・フランス
少年映画評価 B+
お薦めポイント 刺客としてやってきた少年の苦悩
映画情報など 国内未公開。海外版DVD発売中。
写真はテウフィク・ジャラブ君。


レバノンから来た少年。米国ではKiller Kid なんてストレートなタイトルになっている場合もあります。レバノンでテロリストとして訓練された少年がフランスにやって来る。今でも現実にありそうな話。最初は見る気が起きませんでした。でもこれがなかなかの作品。主役の少年がいい。

ディラリ(左)とカリム(右)。組織から必死で逃げ出してきた。

レバノンに住む11歳のディラリ(テウフィク・ジャラブ)は両親を殺され少年兵に志願。厳しい訓練を経てフランスに送り込まれた。レイドとの偽名で組織が用意した家へ。そこには同年齢の少年カリム(ユネッセ・ブダシェ)がいた。アラブ系だが根っからのフランス人。ディラリはカリムの行動や話し方を習得するよう指示された。

ディラリは素行の悪いクソガキのカリムに眉をひそめるが、次第に心を通じ合わせるようになる。やがてディラリのミッションの日が来た。仏大統領を暗殺するのだ。しかし組織は用済みのカリムを始末しようとする。ディラリは思わず組織の連中を全員射殺。2人の少年は逃走。カリムのガールフレンドと逃げようとしたが...


レバノンでの訓練。少年たちは感情を殺した殺人マシンに。厳しい選抜を経てフランスへ送り込まれるのですが、フランス国内の組織も含めて、この膨大な資金はどこから得ているのでしょう。ディラリの射撃の腕前は西部のガンマンも顔負け。数秒で6発全弾を6人の額のど真ん中に。

フランスのアジトにいた少年カリム。これがクソガキ。例によってタバコ、酒、ポルノビデオなど。純粋培養で育ったディラリには刺激的すぎて。なんでこんなクソガキを貴重な戦士(テロリスト)と一緒にさせたのでしょう。結局、組織としてはこのクソガキのおかげで暗殺計画がパー。

実はクソガキであるカリムの両親が組織に息子を売ったのでした。ディラリはカリムになりすまして仏大統領のパーティに参加し、すきを見て大統領を射殺するのが任務。当時のジスカールデルタン大統領は子供好きで、子供を招いたパーティをよく催していたそうです。子供なので警備も甘め。

暗殺が成功すればカリム少年は不要、いや、いてはいけない存在。それはディラリも同じ。組織は暗殺後のディラリを救出する手はずを説明しますが、抹殺するのは自明。レバノンでは戦士として讃えられるので、ディラリにとっては本望だろうと。

でもディラリにとっては生まれて初めての親友カリム。クソガキだけれどディラリの事を心から好きになってくれた少年。大義よりも友情を選びます。これはアラブ側としては不満なストーリーでしょう。きりっとした表情のディラリ役を演じたテウフィク・ジャラブ君の好演が光ります。

厳しい訓練に合格して選抜されたディラリ。
両親をユダヤ教徒に殺された復讐心が彼を貫く。
3日間学校へ行かなくてよいと言われ喜ぶカリム。
両親に命を売られたとも知らず...


フランスに来てもお祈りは欠かさないディラリ。
カリムはそれを見てどう思ったのだろうか...
別れの時。親友の証としてお互いの腕時計を交換。
日本製。こんなところでも日本の影響力があった時代。


ディラリの心の中は揺れる。大義か友情か。
カリムもディラリの苦悩が判った。
カリムの女友達の家に匿って貰った。
(女友達は16歳。カリムが糞ガキの一端だが...)


少年2人はパンク系少女に変装して警察の非常線突破。列車でマルセイユへ逃げる予定だったが...
(警察は突破した。しかし駅では組織の暗殺者たちが彼らを包囲。ここで映画はFIN。)


※後記
本文でも書きましたが、少年の射撃能力。使う拳銃の種類は私には判りませんが、女性や子供向けの小ぶりなもの。それでも近接戦では有効。日本の自衛隊では今でも銃剣などが重視されていると聞いた事がありますが、この少年の前には屈強の自衛隊員でも敵わないのではと心配。なお現在のテロは拳銃ではなく自爆が中心との事。ますます嫌な世界になったなあ...





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