Machuca(2004年)

製作年・国 2004・チリ
少年映画評価 B+
お薦めポイント チリのクーデター前後の混乱と少年の友情。
映画情報など 国内未公開。国内版DVD絶版。海外版DVDあり。
(写真はマティアス・ケール君)


1973年にチリで起きたクーデター。ピノチェト将軍による軍事独裁政権の誕生。日本の反対側の国の出来事ですので、私もあまり知りませんでした。本作は社会の混乱の中で、白人富裕層の少年と、貧しい先住民族の少年との友情。そして友情が脆くも崩壊する様子を描いた作品です。

タイトルのMachuca(マチューカ)とは、本作のもう一人の主役少年ペドロ・マチューカの事です。名前のペドロはスペイン系。姓のマチューカは先住民の尊厳を表すものでしょうか。

自転車に二人乗りするゴンサロとペドロ。本当に楽しそうな二人だったが...

12歳のゴンサロ(マティアス・ケール)は教会付属の英語学校に通うが友人は一人もいない。ある日、校長が先住民族の少年5人を学校に受け入れた。ゴンサロはその中の1人ペドロ(アリエル・マテルナ)と友人になった。ペドロの家へ招待されたゴンサロはあまりの貧しさに驚く。しかし隣家の年上の娘シルヴァーナに一目惚れ。

町ではデモが頻発。ペドロとシルヴァーナはデモ参加者に相手に商売を始める。しかし軍部が政権を掌握。共産主義者狩りが始まり、先住民たちも迫害を受ける。抗議したシルヴァーナは射殺され、側にいたゴンサロはペドロを裏切って逃げてしまった。

 2人の少年の友情を壊したもの

教会付属の男子英語学校。生徒たちは富裕層の息子ばかり。校長である神父は地元の貧しい少年を初めて受け入れます。これは実験的な取組みだったのでしょう。粗末な服。プールの授業では水着もなく下着姿。当然の事ながら、白人少年たちは相手にもしません。

ゴンサロと一緒にイジメられた事からペドロと友人に。ゴンサロの家は豪華だが冷たい家族たち。ペドロの家はまるで豚小屋でも家族は暖かい(飲んだくれ親父を除き)。2人の少年はお互いの境遇を越えて親友になるかと思われました。

しかし少年の友情は脆くも崩れます。それは年上の美少女シルヴァーナ。彼女は汚い家に場違いな服装でやってきた少年に色気で迫ります(無意識かも)。一方のペドロだって12歳ですからシルヴァーナには特別な思いを持っています。せっかくの友情もこれで終わり。

ゴンサロが持っていたコンデンスミルク。それをシルヴァーナが強引に奪って飲みます。唇にミルクをつけたたままゴンサロとキス。ペドロもやって来てシルヴァーナとキス。3人が白いミルクをつけてキス。3Pプレイ? シルヴァーナは2人の少年の心を弄ぶ悪女なのか...

そんなシルヴァーナも気の強さが仇になって射殺されてしまった。兵士はゴンサロに「お前も仲間か」と迫ります。「違う、僕の顔を見て(白人なんだ)」その言葉を聞いたペドロの何とも言えない表情が嫌な余韻を残します。


ゴンサロの家は裕福だが、孤独な少年だった。
(姉もいる。家に入り浸る姉の恋人は人間のクズ)
ゴンサロの家へ呼ばれたペドロ。
服、食べ物、本、手の届かない宝物の部屋だった...


お酒を飲んでしまったゴンサロとペドロ。
2人は親友以上になったはずだったのに。
コンデンスミルクを飲むゴンサロとシルヴァーナ。
(どうしてもシルヴァーナの太腿に目が行って...)


デモで嫌な事件が起こった。
(ゴンサロの顔から笑顔が消えていく)
兵士に家から追い出されるペドロたち。
ゴンサロもこの場にいたのだが...



※後記
クーデター前のチリは社会主義政権。ゴンサロの家は富裕家庭とはいえ配給制の食品も。コンデンスミルクは1家族2缶まで。そんな情勢もクーデターを後押ししたのでしょうか。もちろんアメリカ、イギリスなどがピノチェト将軍を支援した事が大きいのかもしれません
政治に疎い私は全く関心がありませんでしたが、当時の日本の知識階級は衝撃を受けたとの事です。『戒厳令の夜』とか『サンチャゴに降る雨』などの小説や映画も生まれたそうです。




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