原題は『我11』ですが、どういう訳か欧米版では『11 Flowers』となっています。11本の花。花は芸術とか、文化とか、成長とか、様々なことを象徴しているのではと思います。製作にフランスも入っていますので。とにかく少年が成長していく物語は爽やかです。
中国のある地方の村。11歳のワン(リュー・ウェンクィン)は両親と妹の4人家族。父は画家だったが週末しか帰って来ない。母は工場で働く。ワンは学校で体操のリーダーに選ばれた。新しい白シャツを母にねだるが、苦しい家計で無理。しかし母は白い布を融通して貰い、白シャツを縫った。素晴らしい出来栄えにワンも大喜び。
ワンが川で親友3人と遊んでいて、濡れたシャツを乾かしていると、怪我をした若い男が逃げてきてシャツを包帯代りに使った。俺がここにいる事を誰にも言うな。シャツは必ず返す。男は殺人犯だった。家に帰ったワン。シャツを無くした事で母親は激怒。たった2日しか着ていないのに。やがて男は逮捕。そして公開処刑。その前日にワンのもとへ新しい白シャツが届いた。
映画の時代背景は文化大革命が終焉する1年前の1975年。それでもまだまだ統制が厳しい時代。ワンの父は上海で画家だったとの事。たぶん当局に捕まって地方へ追いやられ、思想教育をされているのでしょう。それでも休日だけは家族と暮らせるのはマシな方。
殺人犯の男はワンの学校にいる年上の美少女の兄でした。妹をレイプした男を殺害。それでも情状酌量はなく即刻死刑とは。捕まった兄は監獄にいる間に家族に頼んでワンに白いシャツを送って貰ったのでした。ワンはどんな思いでその白シャツを着るのでしょうか。ちょっと切ない気がします。
ワン役のリュー・ウェンクィン君。本当にどこにでもいる普通の少年。特に美形でもありませんが、常に目を伏せているような表情が印象に残ります。父親も、殺人犯もワンにとってはかけがいのない人生の先輩。素直に育ってくれるのはとの期待が持てる少年俳優でした。