上演年・場所 | 2009年・東京芸術劇場 中ホール |
舞台評価 | B+ |
お薦めポイント | DVDでも伝わってくる鎗田晟裕君の緊張感 |
関連情報など | DVD発売中。 (写真は鎗田晟裕君) |
関東に住んでいた頃(東京と見栄をはった事もありますが、実際は、関東の某県在住でした)、池袋駅前にある東京芸術劇場の前は何度も歩きましたが、劇場に入ったことは、結局ありませんでした。映画館と違って、敷居が高かったので。
その東京芸術劇場の中ホールで、ミュージカル・コメディ「作者をせかす六人の主人公たち」が上演されたのは、2009年2月のことでした。当時は全く知りませんでした。昨年くらいになって、ネットの掲示板か何かで、鎗田晟裕(やりた あきひろ)君が出演している事を知り、同時にDVDが発売されている事も知り、買い求めたのでした。
しかし、ネットで同舞台のレビューや感想を読むと、鎗田晟裕君の演技が厳しく酷評されています。なので、DVDを買いはしたものの、怖くて鑑賞できず、1年くらい放置しておりました。最近になってやっと鑑賞したのですが、よく頑張っているじゃないですか!
決して酷い演技ではありません。彼の頑張りを見直して欲しいこともあってレビューします。今回はストーリーをまとめて書かず、幕ごとに簡単なコメントと写真で構成することにしました。
舞台のストーリーは、ある小説家(山寺宏一さん)の書斎に、書きかけのまま放っておいた小説6編の主人公が、実体化して現れるところから始まります。
鎗田君も登場。しかし彼は6人とは異なり、既に完成された小説の主人公。名前はネロ。「フランダースの犬と猫」という作品。(犬の他に、ネコがついているそうです)
舞台の前半は、鎗田君は、物語の進行をナレーションするだけ。スポットライトこそ当っていますが、舞台の隅で、じっと立って喋るだけで、演技はありません。他の役者さんとの絡みもありません。ずっとナレーションだけかと思うと、これはがっかり。
しかも、極度の緊張が伝わってきます。顔はひきつっていて、声には震えもあります。また、ラ行の発音に少し難があるようです。これが酷評の原因だったのでしょう。DVD収録は公演中日(全5日の3日目)ですので、かなり慣れていたはずです。それでもこれですから、公演初日あたりはガチガチだったのかも。
しかし、時間が経つにつれて、セリフは安定してきました。まだ表情はぎこちないのですが、声はよく通ります。当時もう13歳でしたが、まだ変声期直前のボーイソプラノ。張りのある声で、色気すら感じました。
第2幕第2幕からは、ナレーションだけでなく、物語にも入ってきました。やっと演技が見られます。小説家の友人の男性に肩を抱かれる鎗田君。ようやく緊張もほぐれたのか、笑顔も出てきます。なかなか可愛い。
そして、主人公である座長の山寺宏一さんとの絡み。お互いに目を見つめ合って、なかなかいい感じです。もうこのシーンではオドオド感もなく、堂々とした演技。顔の表情もいい。本当に美少年。
DVDの特典映像のメイキング。鎗田君は大人の団員には可愛がられている感じでした。舞台というのは、映画やテレビと違って、本当に緊張するのでしょう。でも、もっと幼くても、大人顔負けの演技をする子役さんもいます。大衆演劇なんかでも。
しかし、低学年の頃は、なんにも考えず、欲も無いせいか、大して緊張もしなかったのに、中学生くらいになると、自意識もあり、いい演技をしようという野心も出てきますので、それがプレッシャーとなって、緊張するのかもしれません。
でも、あまりに心臓に毛の生えたような、物怖じしない子役さんよりも、この舞台の鎗田君のように、緊張してくれる方が人間らしくて、応援したくなってきます。ああ、生の舞台を見たかったなあ
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