Yの悲劇 (1978年)
初回放送・製作 |
1978年・フジTV系列連続ドラマ(全6話) |
作品評価 |
B- |
お薦めポイント |
エラリー・クイーンの名作を忠実にドラマ化 |
関連情報など |
DVD発売中。 (写真は、遠藤義徳君) |
1978年にフジTV系列で放送された意欲的な推理ドラマです。放送された当時の事は、かすかに覚えているだけでしたが、原作の推理小説「Yの悲劇」(エラリー・クイーン著)は、既に読んでいましたので「犯人は判っている」なんて言って、家族からヒンシュクを買った記憶もあります。
DVDボックスが発売になっていたのは知っていましたが、今年になって日本映画専門chで放送されており、改めて全話鑑賞しましたが、なかなかよく出来たドラマです。若き日の石坂浩二さんがハマリ役です。
ラストシーン。(いきなりネタバレ) ※画質悪くてすみません
(ストーリーはかなり複雑ですし、推理ドラマのネタを話すのも不都合なので、ごく簡単に書くことにします。)
愛知県の地方都市の、ある豪邸の主人が自殺した。そこへ有名な舞台俳優の南郷亮治(石坂浩二さん)がやってきた。南郷は事故がもとで、耳が聞こえなくなっており、伯父の家に逗留する予定だった。
自殺した主人の長男と南郷は友人であり、なおかつ逗留先の伯父は事件を担当する警部であり、南郷はこの豪邸事件に巻き込まれる(自ら首を突っ込む)ことになった。豪邸には主人の妻の菊枝夫人、長男夫婦、長女、次女、三女、次男の妻(次男は亡くなっていない)、孫の弥一少年(遠藤義徳さん)、その他、使用人がいた。
この家の権力は菊枝夫人が握っており、夫が自殺しても悲しむ事なく、聾唖で盲目という障害を持つ三女だけを盲愛しており、遺産は全て三女に残すと公言しており、家族の間には不満や怨念が渦巻いている。
ある日、孫の弥一少年が、三女用の卵酒を盗み飲みしたところ、毒が入っており苦しみ出すが、たまたま居合わせた南郷が介抱し、事なきを得た。いったい毒は誰が入れたのか。
そうこうするうちに、今度は菊枝夫人が殺害された。その後、次々に殺人事件や殺人未遂事件が続発する。いったい誰が犯人なのか。目の見えない三女は、犯人の身体触れたと証言。
柔らかくてスベスベのほほ
昭和時代、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティなど翻訳物の推理小説が人気でした。私は小学生の頃から背伸びして、お小遣いを創元推理文庫などに費やしていました。今はネットが主流で紙文化といえば、せいぜい漫画くらいでしょうか。
中でも、何の調査かしりませんが、推理小説で一番人気がこの「Yの悲劇」だと聞いています。(今はどうか知りませんけれど)。その犯人のキーワードが「柔らくてスベスベのほほ」なのです。犯人は女性だと決めつけて展開が進むのですが。少年映画サイトに来られた皆様なら、もう何を言わんとしているかは自明ですね。
豪華な俳優陣
2時間ドラマ等で簡単に終わらず、1時間番組(実際には50分弱)の6回放送ですから、かなり丁寧に作られています。その分、出演者が多すぎて、なかなか人間関係が判らない部分もありますが、俳優陣は豪華です。当時、超人気俳優だった石坂浩二さん、金子信雄さん、江原真二郎さん、女優陣では、八千草薫さん、後にカリスマ的人気を博した故・夏目雅子さんも出演されています。
ただこの頃、角川映画「犬神家の一族」をきっかけに横溝正史シリーズがブレイクしており、本作品もエラリー・クイーンの世界ではなく、どろどろした怨念のうずまく横溝正史の世界になっているのが、少し残念といえば残念です。
少年俳優、遠藤義徳さん
さて、本ドラマで唯一登場する子役(といっても13歳の中学生)が遠藤義徳さんです。上に書きました通り、ドラマ上のキーマンなのですが、残念ながら出番は毎回数分くらいしかありません。犯人(あっ言っちゃった)なのに、彼の内面や心情は全く描かれず、最後は、まるで理解できないモンスターのような存在なのです。これは原作も同じなので仕方ありません。
遠藤さんの芸歴がどのようなものかネットで調べても判りませんが、配役上は八千草薫さんの息子役で、ほほのあたりが八千草さんにそっくりなのです。本当の母子なのかなと思ってしまうくらい。出番は少ないのですが、何か影があり、一筋縄ではいかない少年から、最後は少し悪魔的な少年役をしっかりと演じていました。セリフは少ないのですが、まだまだ年相応のやや高い声に、少しほっとしました。
最後に、今回の放送ではハイビジョンにアップコンバートされているとの事で期待したのですが、残念な画質でした。1978年なのでフィルム撮影と思っていたらビデオ撮影。当時はマスターテープが高いので使い回しなのでしょう。一旦放送されたものを家庭用ビデオに録画したか、あるいはマスターからダビングを繰り返したか(ゴーストが散見)。それでも残っていただけ有難いものだと思います。
1回目の毒物騒ぎ。フェイクでした
2回目は本番。緊張する少年の顔