ガラス細工の家 (1973年)
初回放送・製作 |
1973年2月13日・日本テレビ系列 |
作品評価 |
B |
お薦めポイント |
岸田今日子さんの鬼気迫る演技と少年の無垢な演技 |
関連情報など |
火曜日の女シリーズ最終作。全7話。DVD絶版 (写真はキーマンである熊谷俊哉君) |
1973年といえば私もまだ少年。夜のゴールデン時間帯のテレビのチャンネル実権は父が握っていました。大抵はプロ野球か歌番組。21時からの映画ロードショーは家族そろって鑑賞。そんな時代でした。
火曜日の女シリーズなんて見た事ありません。どうせ低俗なよろめきドラマ(検索して下さいね)だと思っていました。これを知ったのは2019年。日本映画専門chの倉本聰劇場の枠内で放送が始まりました。ちなみ前番組は故萩原健一さんを偲ぶ「君は海を見たか」。
予告でちらっと熊谷俊哉君が出ているのを見て、そのまま録画予約。大して期待もしていなかったのですが、これが意外にも名作。さすがは倉本聰先生。TVドラマとは思えぬ緊張感が素晴らしい。7話をあっという間に鑑賞。DVDも中古を探せばありますので是非ご覧になって下さい。
熊谷俊哉君。終始ポーカーフェイスの演技でしたが印象に残ります。
(2015年にお亡くなりになられました。本当に残念です)
主人公は主婦である士門冴子(岸田今日子)。夫は医師。2人の息子は成績優秀。何の不幸もない絵に描いたような勝ち組家族。夫が海外出張に出た日、次男タダシ(小山渚)が誘拐され脅迫文が届いた。冴子は狼狽するが警察の介入を拒否。しかし夫の上司や長男ヒロシ(熊谷俊哉)の家庭教師の芦沢らの説得で警察に通報した。
実は冴子と大学生の芦沢は不倫関係。犯人は警察が介入した事を知り、電話での連絡は中止し、タダシが飼っていた伝書鳩で伝言を伝えてくる。身代金の額は冴子自身が決めて新聞の広告欄に掲載せよと指示してきた。冴子は当時として考えられない莫大な3000万円を提示する。
これは夫が開業するために汗水たらして貯蓄したもの。身代金は長男ヒロシに持たせて新宿東口から伊勢丹前の間を往復せよとの事。ヒロシは雑踏の中で犯人と接触し3000万円を渡す。そして意外にあっさりとタダシが帰ってきた。そしてここからもう一つのドラマが始まる...
脚本も役者も撮影も全てがプロフェッショナル
ミステリーですからネタをバラしてしまうのはご法度。ですのであまり詳しくは書けません。とにかく見出しに書きましたように、主演の岸田今日子さん、不倫相手の家庭教師、警察のスタッフ、夫の上司や同僚たち、そして脚本。全てが素晴らしい。本当に素晴らしい。
例えばこれを書いている2019年5月、高視聴率ドラマ「ラジエーションハウス」を何話か見ましたが、子供だまし(すみません)にしか思えないのです。もちろんジャンルも時代も違うので比べる事自体が意味のない事かもしれません。
原作なしの倉本氏の完全オリジナル脚本だとか。ミヒャエル・ハネケ監督の「隠された記憶」(2005年)という映画がありますが、本ドラマに雰囲気が似ている部分がありました。
キーを握るのが熊谷俊哉君演じる少年
熊谷俊哉君。事件の起きた家族の1人に過ぎない。そんな感じの端役なのかと思っていました。しかし徐々に彼の比重が増してきます。というか疑わしい点が増してくるのです。これ以上は書きません。右はDVDの表紙。これを見れば彼の比重の大きい事が判りますね。
この翌年1974年にNHK少年ドラマ「ユタと不思議な仲間たち」で一気に人気者になりますが、本作では声変りも始まっていない透明な声が聞けます。また人気子役だった高野浩幸君も友人役で出演。とにかく機会がございましたら是非ご覧になって下さい。
誘拐された次男タダシ(小山渚)
(当時は伝書鳩を飼っている子供も多かったのかな)
刑事が工事業者に扮装して土門家へ。電話に探知機を。
(中央の女性も右のオヤジも刑事。彼らが素晴らしい)
犯人は警察介入を知り、連絡方法を変えてきた。
タダシの飼っていた伝書鳩を見上げる...
身代金の金額を3000万円と新聞に広告
(今なら1.5億円くらい? 愛する息子のためとはいえ...)
ヒロシは友人(高野浩幸)と一緒に名門中学を受験。
試験終了後そのままヒロシは麻布から新宿へ。
(高野君の顔は変わりませんなあ...)
犯人の指示通りヒロシはお金を持って新宿を歩く
怪しげな男がヒロシの後を。でも犯人ではなかった。
(2丁目もすぐそこ。その手の男かと...ウソ)
身代金を渡し、タダシは無事に戻ってきた。
冴子はヒロシの行動に疑いを抱く...
事件は全て終わった。犯人も判った。
ヒロシの心の溝は埋まらない...
※おまけ。1973年当時の東京の様子が随所に。
通勤サラリーマンはカバンを持たない人が大半。いつからあんなにバッグを持つようになったのでしょうねえ..
現在の新宿アルタは、二幸とマクドナルド。
(犯人は、二幸と伊勢丹の間を往復せよと指示)
地下鉄の切符売り場。こんな時代もありました。
(30円、40円。使えるのは10円硬貨だけ)