小さな王国 (1993年)
初回放送・製作 |
1993年5月17日・関西TV(フジTV系列) |
作品評価 |
C(後味が悪過ぎて) |
お薦めポイント |
あの文豪 谷崎潤一郎原作。悪魔の少年... |
関連情報など |
サスペンス・明日の13章 の1作品.未メディア化 (写真は悪魔の生徒役の反田孝幸君) |
谷崎潤一郎氏の小説はあまり読んだ事がありませんが、まさかこんなサスペンスドラマの原作になるなんて..ご本人が見られたらどう思われるのでしょうか。原作は戦前の尋常小学校。ドラマは平成の小学校(平成とはいえ今からみれば昔ですけれど)。
私も本ドラマの事は全く知らず、たまたまスカパーの東映チャンネルの番組表をみて録画したものです。貫禄十分の岩下志麻さんが小学校教師というのは少し違和感。そして当時売れっ子だった反田孝幸君の糞ガキぶり。非常に後味の悪いドラマでした。
クラスを牛耳るのはヒトラーのような少年。ベテラン教師もたじたじ。
(でも岩下志麻さんの貫禄。教師には見えない..)
関東のある小学校。女性教師の昌子(岩下志麻)のクラスに沼倉(反田孝幸)という少年が転校してきた。みかけは大人しい普通の少年。2週間後。昌子はクラスの異変に気づいた。クラス全員が沼倉の言いなりになっている。
沼倉に注意するがクラス全員の冷たい視線にたじろぐ。そこで沼倉を懐柔して彼を立ててクラスをいい方向へ持っていこうとした。しかし沼倉の独裁はエスカレート。沼倉の前の学校に電話して様子を聞いたところ、なんと担任教師は自殺していた。恐ろしくなった昌子。離婚した夫に相談する。
恐れてはいけない。毅然とした態度で対決すべきと言わた昌子は沼倉以外の生徒と親に圧力をかけた。それはうまくいったかに見えた。しかし沼倉は思わぬ反撃。昌子に襲われたフリをして2階から飛び降りたのだ...
独裁と学級崩壊...
腕力が強く(親が政治家とか筋者とか)権力もあって手に負えない生徒。教師も腫れ物に触るように恐々対応。でもそんなヤツなら、他の生徒は表面上は服従しても内心は反抗するでしょう。しかし本作の沼倉君は違うのです。暴力ではなく洗脳するみたいに他の生徒を支配していくのです。
昌子は同僚教師から「君のクラスにはヒトラーみたいな子がいるそうだね」と言われます。さらに「彼をうまく利用すれば」とも。それで昌子はヒトラーを利用して学級経営を試みるのですが、それは悪魔に魂を売ったような行為。独裁者ですからね。
昌子が沼倉と対決姿勢に転じたとたんクラス中が騒ぎ出して授業が全く出来ない学級崩壊。クラスには昌子の実の娘もいて(こんなの許されるのでしょうか)彼女も沼倉君に支配されています。こりゃ困るわな...
昌子の離婚した夫は企業で人事労務一筋。組合潰し専門家として豪腕を発揮。元夫は言う。恐れてはいけない。権力を使うんだ。弱いところから攻めれば結束なんてすぐバラバラになる。(いやいや凄い事を言いますなあ...原発反対、空港反対運動などもこうやって潰してきたのでしょうか)
さすがは谷崎潤一郎原作。単なるサスペンスドラマではありません。小学生とはいえ大人社会のどろどろしたものが影響しているのですね。演じた反田孝幸君。乳歯の抜けた前歯で笑うラストシーン。おぞましい悪魔そのものでした。
転校生の沼倉。中央は草刈正雄さん
(ジョージ・チャキリス風. 知らん?)
自己紹介で前の学校の校歌を歌う
(かなり変な少年だ...)
転校して2週間.沼倉はクラスを掌握
(右後ろのイケメンも沼倉に服従)
騎馬戦。大将は沼倉。
(馬はクラスのイケメン少年)
沼倉を懐柔することにしたが...
先生は怖がっている。全てお見通し
自分で発行した金券を配る沼倉
信賞必罰。金券の仕組みも巧妙だった
ある生徒が熱を出して倒れた
(93年当時.まだ半ズボン少年も...)
沼倉を追い詰める先生だったが..
窓から飛び降りた。先生にやられた!
幸い骨折だけ。お見舞いにきた先生..
先生の負けさ。悪魔の哄笑を見せる
(最後の顔はあまりに醜いので省略)
※後記
谷崎潤一郎ではないのですが最近、内田百間氏の東京焼盡を読みました。結局は空襲で焼け出されるのですが、日々の暮しが細かく書かれていて非常に興味深い本です。その中でヒトレルとの表記。当時のインテリはドイツ語かぶれですから、ヒトラーをこういう風に呼んでいたのですね。皆様もよろしければ読んでみて下さい。