広島 昭和20年8月6日

初回放送・製作 2005年8月29日・TBS
作品評価 原爆投下前の広島中心部。リアルなCGが素晴らしい。
お薦めポイント 4人姉弟の末っ子長男。優しい少年なのに出征とは。
関連情報など DVD発売中。
(写真は冨浦智嗣君)


2024年の春。原爆特集がある8月でもないのに、CSのTBSチャンネル2で(唐突に)放送されました。ちょうどこの頃、映画『オッペンハイマー』が米アカデミー賞で作品賞など7部門を独占。原爆の父と呼ばれる人物を描いた作品ですが、広島や長崎の悲劇には敢えて目を逸らしたと言われています。

それへの抗議の意味で放送したのでしょうか。それにしては視聴者の少ないCS放送とは中途半端な気もします。そんなことは置いといて、私は今回初めて鑑賞。中学生を演じた冨浦智嗣君の不思議な雰囲気が印象に残りました。

原爆投下前の天神町界隈。奥に広島産業奨励館(今の原爆ドーム)を望む。CGで再現された。
左の建物が主人公たちが営む軍用旅館。道路はアスファルト舗装。

広島市産業奨励館(今の原爆ドーム)のすぐ近くの軍用旅館。亡き両親のあとを継いで経営する長女(松たか子)、国民学校教師の次女(加藤あい)、女学校に通う三女(長澤まさみ)、そして中学生の長男トシアキ(冨浦智嗣)の4人姉弟がいた。トシアキは仔犬を拾って親身に育てるような優しい少年だった。

学校は戦時一色。運動神経の鈍いトシアキは軍事教練で配属将校の目の敵にされて暴行を受ける毎日。そんなトシアキがまさかの少年飛行兵に合格して出征。姉たちは広島で暗い中でも恋人がいたりと女性らしい生活を続ける。しかし運命の8月6日。姉たち3人は亡くなった。ただ一人生き残ったトシアキ。年老いた今(西田敏行)、平和記念公園で平和を語り続ける。


原爆関係の体験記や手記は本当に数多く読みました。そして広島には毎年必ず行きます。まずは比治山にある広島市現代美術館。そして原爆ドームと平和記念公園。路面電車が縦横に走り、カープやサンフレッチェの熱狂。元気を貰える街ですが、同時に何か平和への祈りのような厳粛な空気も感じます。
(広島へ行く目的は広島少年合唱隊の定期演奏会。この合唱隊にも元気を貰えます。)

本ドラマの特筆すべき点は、原爆投下前の広島市中心部を再現したリアルなCG。今の原爆ドームである広島産業奨励館は外観だけでなく内部まで再現。平和記念公園一帯は天神町と呼ばれており、その町並みも再現。道路がアスファルト舗装というのはこの時代に?と思ったのですが、実際にアスファルト舗装だったようです。

ドラマは(CM除いた正味)2時間16分もの長編。序盤30数分は長男トシアキが主役。しかし出征してここで退場。後は長女、次女、三女のパートとなります。それにしても、あれだけ運動音痴のトシアキがよく少年飛行兵に合格しましたね。それとも長男をフェードアウトさせるための無理な脚本だったのかも。

トシアキを演じた冨浦智嗣君。顔は普通の中学生なのですが、声や話し方が可愛い小学生。ある意味ふしぎちゃんですが、大変な熱演で印象に残りました。その後のトシアキ役は故 西田敏行さん。2024年にお亡くなりになられ、本当に惜しい俳優さんでした。


中学生のトシアキが胸に何か抱いて帰ってくる。仔犬を拾ったのだ。


またそんなの拾って来て。すぐ上の姉(長澤まさみ)は呆れるが、トシアキの味方だった。


もう中学ではまともな授業は無かった。
勤労動員と軍事教練だけ。
配属将校から制裁を受けるトシアキ
(運動音痴。おまけにいつもヘラヘラ笑っていると言われ)


制裁を受けた顔で帰りたくなかったトシアキは産業奨励館へ忍び込んだ。
(奨励館の職員に姉の恋人がいた。)


少年飛行兵に合格したトシアキは出征する。これが生死を分けた。
(よっぽどペーパー試験の成績が良かったのか。適性試験は苦しそう...)


原爆投下から60年が過ぎた。トシアキも70代半ば(演:西田敏行)
高校生や観光客を相手に原爆の悲惨さの語り手になっていた。



※後記
あまり細かいところに突っ込んでも仕方ないのですが、少々感じた違和感。まず広島の町を行進する兵士たちのヘルメット。米軍か自衛隊仕様のもので、明らかに旧日本軍の鉄帽では無い感じです。CGが素晴らしいだけに、この辺りの細部も再現して欲しかった。
次は国民学校教師が生徒(児童)を連れて歩く場面。当時は男女共学ではありましたが、この年齢になると原則は男女別行動だと聞いています。ドラマや小説にある離村や離島の生徒数の少ない学校では男女一緒かもしれませんが、広島のような大都市ですし。絵柄的には男女一緒の方がいいのですけれど。
また軍事教練を受けるトシアキたち中学生の体操着はいいのですが、この時代、下着がブリーフはないでしょう。
すみません。重箱の隅をほじくってしまって。そんな事関係なくいいドラマでした。





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