2015年 青輝賞


2014年の邦画少年映画は低調だったと嘆きましたが、2015年は、ほぼ壊滅状態。
地方映画で1作品だけ。それも全国公開はされず、DVDもまた発売されていません。


もう今年は、青輝賞を1年お休みにしようかとも思いましたが、最低限の項目だけでも
設定しようと思い、今回公開させて頂きます。



2015少年映画大賞「青輝賞」・発表

2015年青輝賞・作品賞
なつやすみの巨匠 映画作りに情熱をかける少年の姿が微笑ましい。(今年唯一の少年映画ですし。)

2015年青輝賞・少年映画ベスト5
1.なつやすみの巨匠 映画作りへの情熱とリトルロマンス。→ review
2. (該当なし)
3. (該当なし)
4. (該当なし)
5. (該当なし)

2015年青輝賞・最優秀少年俳優賞
野上 天翔 (10) いつもハイテンションで前向きな少年を好演。(氏名の読みは、のがみ たかと)

2015年青輝賞・優秀少年俳優賞
下田 翔大 (12) 「くちびるに歌を」では主役2人よりも印象に残る少年でした。
池田 優斗 (10) 「at Home アットホーム」での達者な演技と可愛さは、本当に格別でした。
望月 歩 (14) 「ソロモンの偽証」前後編。出番も少なく、舌足らずなセリフ。でも印象は強烈。
板垣 瑞生 (14) 「ソロモンの偽証」前後編。主役の1人をしっかり演じました。

2015年青輝賞・特別賞 (シニア・ボーイ賞)
清水 尚弥 (19) 「独裁者、古賀」「死んだ目をした少年」の2作で苛められ高校生。もう卒業を。

2015年青輝賞・海外少年映画ベスト7(参考)
1.ぼくらの家路 ドイツ映画。母に捨てられた兄弟の孤独な放浪に胸が・・→ review
2.独裁者と小さな孫 ジョージア他映画。絶望しかないロードムービー。最後にほんの少し灯が→ review
3.ふたつの名前を持つ少年 独・仏映画。次々襲いかかる悲劇。でも少年は生き残った。→ review
4.ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声 アメリカ映画。トップレベル少年合唱団の裏の世界は・・→ review
5.PAN ネバーランド、夢のはじまり アメリカ映画。とにかく空飛ぶ海賊船のアクション。→ review
6.ヴィンセントが教えてくれたこと アメリカ映画。ちょい悪オヤジと、ひ弱な少年の交流。
7.シーヴァス トルコ・独映画。主役のアスラン少年の眼差しの強さ。

 

2015年少年映画大賞「青輝賞」・総評

■2015年最優秀作品賞「なつやすみの巨匠」

最優秀も何も、2015年に私が見れた邦画少年映画はこの作品1本だけです。いくら1本だけでも、その年を代表するレベルに達していなければ「該当なし」にしようと思っていました。(数年前の私であれば、間違いなく「該当なし」だったと思います。)

でも、映画としては甘い部分も多々あるのですが、少年俳優が活躍する少年映画としてみれば、ギリギリですがレベルはクリアしており、主役を演じた野上天翔君の頑張りを応援する意味でも、最優秀作品賞としました。

もう一人の主役級であるハーフの美少女(村重マリアさん)が印象的でしたが、主役の野上天翔君は、決してチャーミングという面でも負けないように撮られていたのが好印象でした。日本映画の場合、少女は無条件で美しい存在であり、少年はそれを指をくわえて憧れるだけ、といったパターンが一般的だっただけに。

また、福岡県の映画ですが、地元の方々の熱い応援も伝わってきます。youtubeでは、メイキング映像が惜しげもなくUPされており、和気あいあいとした撮影の様子が伝わってきます。メイキングでなく、本編のDVD(いや今の時代ですからブルーレイ)を早く発売して欲しいところです。BSかCSで放送してくれれば、もっと嬉しいのですが。

とにかく、毎年書いているように、邦画少年映画の期待は、こういった地方映画か、自主制作映画に頼るしかありません。来年は、せめて複数本の少年映画が公開されることを願います。


■2015年少年映画ベスト5について

1本しかなかったので、ベスト5について論評する事自体が無駄なのですが、少し惜しい作品もありましたので。ちょっと書いてみます。

まず少年映画の定義ですが、やはり主役が少年であること。即ち映画の主要なエピソード、あるいはテーマが少年であることです。多少出番が多くても、主役男優又は女優の息子役、あるいは少年時代役程度では「少年映画」とは呼べません。

「ソロモンの偽証」なんかは、主役級だったのですが、藤野涼子さんの存在感から、やはり少女映画というべきでしょう。逆に「くちびるに歌を」では、3番手くらいの配役にも関らず、主役を喰うほどの印象がありました。でもこれを少年映画と呼ぶことはできません。


■2015年個人賞について

最優秀少年俳優賞は、野上天翔君
もう何度も書いてきましたので、ここでは省略します。福岡県在住ですので、全国レベルのドラマや映画に起用される事は難しいかもしれませんが、頑張って脱皮して欲しいです。12,13歳の少年として成熟?した時に、もう一度、主演映画があるといいのですが。

優秀少年俳優賞は4名

下田翔大君。「くちびるに歌を」では存在感の無い、脆く今にも折れそうな少年役で、逆に素晴らしい存在感でした。主役は新垣結衣さん、あるいは女子生徒役の恒松祐里さんでしたが、どちらもキャラクターが今一つ安定せず、感情移入しにくいため、下田翔大君に感情移入して鑑賞した人も多いのでは。実は最優秀少年俳優賞にとも思ったくらいです。その後ドラマ等にも出演していますが、急に大人の顔になりました。

池田優斗君。「at Home アットホーム」では、本当に可愛さ満点でした。これだけ可愛い子を虐待(ネグレクト)する親なんているのでしょうか。演技も達者です。10歳なのにセリフに不安が全くありません。神木隆之介さんのように売れっ子少年俳優になりそうです。2016年もいくつか映画の話があるようです。

望月 歩君。「ソロモンの偽証」前篇の冒頭で飛び降り自殺してしまった中学生役。ですので、後篇も通して出番はほんの僅か。ちょうど成長期なのでしょう、顔は最初と最後でかなり違います。またちょっと舌足らずなセリフにクセがあり、好き嫌いが別れるところ。でも、本作品に登場する少年俳優の中では1番印象に残りました。そのせいか、ドラマに引っ張りだこで、2016年には映画にも出演するようです。

板垣瑞生君。「ソロモンの偽証」の主役の一人。特に後篇では主役なのですが、どうしてももう一人の主役の藤野涼子さんに圧倒されて、影が薄くなってしまったのが残念です。あまり演技には向いていないようですが、それでも監督さんの指導を受けて立派に演じたところはサスガです。ルックスも抜群ですが、役者としての伸びしろは、望月君の方が上かもしれません。

特別賞は、清水尚弥さん
もう何回目でしょうか。2015年もまた「独裁者、古賀」、「死んだ目をした少年」の2本で苛められる、ひ弱な高校生役を演じました。とはいえ主役です。よほど色んな監督さんから、そういうキャラだと思われて起用されるのですね。でも、もうこんな役はいいでしょう。卒業して、普通の青年俳優になって下さい。


■その他雑感。

この他に、映画「天空の蜂」の田口翔大君も候補に上げましたが、可愛いのは可愛かったのですが、映画全体の中での比重という面から考えると、まだ優秀俳優賞というには、早いと思います。あと「きみはいい子」の加部亜門君もいい演技だったと聞いていますが、作品をまだ見ていませんので、今後鑑賞してから、場合によっては追加します。

「キネマ旬報」の2015年の映画を総括号を読みました。気になるのは新人男優賞の投票結果です。しかし少年映画が無かったので、あまり期待もしていませんでした。

新人男優賞は、ぶっちぎりで映画「恋人たち」の篠原篤さん。映画を見てないので何にも言えませんが、妥当な結果のでしょうね。「ソロモンの偽証」の板垣瑞生君に7票、望月歩君に3票入っていたのが、うれしいところです。特にあの出番しかないのに望月歩君に3票とは。

一方、新人女優賞は、広瀬すずさんと藤野涼子さんの真二つに別れ、1票差で広瀬さんが受賞。他の映画祭でも、大半がこの二人で新人賞を取り合っている状況です。実力ある二人の監督さんが、力を入れて指導した女優さん二人だけに、当然の結果だろうと思います。少年俳優も同じ。本当に愛して指導してくれる監督さんに出会うかで、人生が大きく変わってくるのですね。

今年もまた新人男優賞「該当なし」が非常に多いのです。該当なしを記載した審査委員は、もう来年から呼ばないようにして欲しいところです。特に2年連続で新人男優賞「該当無し」の人は、審査員資格なしと思うのですが・・


■2015年海外作品ベスト7(参考)について

2015年は、結構、海外作品がありました。ここには選んでいませんが、2014年12月公開の「ベイマックス」を今更ながら見て、アニメもいいなあと改めて認識。でもここでは我慢して実写映画のみを対象とします。

1位は、「ぼくらの家路」(ドイツ映画)
暗いストーリーの上、主役の少年に可愛げがありません。でも、ずし〜んときます。日本の名作「誰も知らない」とも共通した部分を感じて、しばらく考えさせられました。本当の幸せってなんだろうかと。ただドイツ人は少年と言えども自己主張は強いのですね・・

2位は、「独裁者と小さな孫」(ジョージア、他映画)
これも悲しく厳しい映画です。今の中東や、体制崩壊後の東側陣営の国々で起きている事です。少年というには幼すぎる男の子が、こんな体験をしていいのでしょうか。例え大統領の孫という特権階級であっても。憎しみの連鎖を誰かが解いていかなければ。

3位は、「ふたつの名前を持つ少年」(ドイツ・フランス映画)
ポーランドで平和に暮らしていたユダヤ人少年が、ナチスに追われて逃亡します。よくあるストーリーですが、やはり辛い。少年をこんな目に逢わせていいのでしょうか。やはり戦争は避けなければいけません。

4位は、「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」(アメリカ映画)
今年一番の期待作でしたが、よくも悪くもアメリカ映画です。ウィーン少年合唱団を描いた「野ばら」と殆ど同じパターンですが、主役のギャレット・ウエアリング君の美少年ぶりは見ものでした。

5位は、「PAN ネバーランド、夢のはじまり」(アメリカ映画)
ピーターパンの生い立ちを描いた作品です。帆船が宙を飛んでのアクションは見ものですが、それが全てという感じでした。ピーターパン役の少年は正統派美少年で、好感が持てました。

6位は、「ヴィンセントが教えてくれたこと」(アメリカ映画)
ひ弱な少年が、隣に住むチョイ悪爺さんと交流し、次第に成長していく話。アメリカらしい、お気軽なストーリーですが、映画としてはアリだと思います。たまにはこんな話も。

7位は、「シーヴァス」(トルコ・ドイツ映画)
トルコの田舎に住む少年が、ひょんな事から闘犬を買うことに。犬と少年の友情といえばお約束の世界ですが、犬も少年も一筋縄ではいかないクセ者。自己主張の強すぎる少年は可愛げがありません。でもトルコの田舎の実情がよく判ります。



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