大忍術映画ワタリ (1966年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(堂々の主役です)
お薦めポイント テンポよいアクションと少年忍者の大活躍
映画情報など 1966年公開。DVD発売中
(写真は主役ワタリを演じた金子吉延君)


掲示板に投稿があり、その存在を思い出した映画です。さすがに映画館で見た記憶はありません。Amazonで検索するとDVDが発売されており、少し高いのですが、思い切って購入しました。タイトルは「ワタリ」ではなく「大忍術映画ワタリ」です。

最初は、子供騙しの特撮映画かと思ったのですが、ぐいぐいと引き込まれ、最後まで一気に鑑賞。いやいや、当時のチャンバラは、大エンターテイメントだったのですね。古き良き時代の、映画文化を満喫できる作品で、少年スター金子吉延君も大活躍。是非ともご覧いただきたい作品です。

■ストーリー

戦国時代の伊賀地方。伊賀忍者は、百地党と藤林党の2派に分かれて抗争を繰り返していた。忍者も階級社会であり、最下層の忍者は、下忍(げにん)と呼ばれ、虐げられ、使い捨てられる悲しい存在だった。

そんな伊賀の里に、少年忍者ワタリ(金子吉延さん)と、老忍者(牧冬吉さん)がやってきた。ワタリは、少年忍者の育成所のリーダーであるカズラと親友になるが、伊賀忍者の首領の秘密をめぐる抗争に巻き込まれる事になる。

伊賀忍者の秘密を知った者や、伊賀を抜け出そうとする忍者は、容赦なく殺され、親友のカズラ、その姉も犠牲になった。ワタリは、忍者の本拠地である五月雨城へ出向き、手強い忍者六人衆や首領と対決する。


■白土三平原作の暗さを排した、痛快アクション忍者映画

忍者漫画といえば白土三平氏。「カムイ外伝」や「サスケ」はテレビアニメにもなりましたが、原作漫画は、本当にやり切れないほど暗い話です。本作品は、その暗さ部分を削り取り、非常にテンポのよいアクションと、ユーモアを入れて、一流のエンターテイメントにしたものです。

原作者の白土三平氏は、本作品を受け入れず、制作会社の東映は出入り禁止になったそうです。(ディズニー映画「メリーポピンズ」を受け入れなかった原作者トラヴァース女史と同じですね。)

とにかく配役が素晴らしい。ワタリの金子吉延さんは後述するとして、堂々たる悪役振りの大友柳太朗さんなど、まるで舞台を見ているような、役者の皆様の存在感に圧倒されました。当時としてはワンパターンの演出だったのかもしれませんが、今見ると大変新鮮です。

■仮面の忍者赤影の原型

今でもファンの多いテレビ番組「仮面の忍者赤影」は、本作品が原型だったことは間違いないと思います。役者さんが同じですし、戦国時代なのに、ロボットやレーザー光線が出てくる荒唐無稽な脚本も同じです。

私は「赤影」は再放送で見ていますので、ワタリと老忍者は、青影と白影にしか見えません(判る人には判ります)。ワタリが鼻に手を当てて「ダイジョーーブ」とやってくれるのかと思ったほどです。(これも判る人には判るはず)

■忍たま乱太郎とは比較できません。

最近、実写版になった「忍たま乱太郎」も2作ともDVDで鑑賞していますが、とても本作品には及びません。まあ時代が違うので、比較することがおかしいのかもしれません。本作「ワタリ」でも、忍者学校(養成所)が出てきます。

乱太郎のような、お気軽生徒ではなく、使い捨てで殺されて消耗が激しい「下忍」を育成する事が目的。そのため、全国各地から、幼い子供をさらって来て、小さいうちから修行させます。(アフリカや中東のゲリラ兵士の育成で、同じような話を聞きました。)

定番の横笛と少年。絵になりますなあ
養成所の子供たちを解放し、一緒に踊り狂う?ワタリ

■少年スター 金子吉延さん

最後は金子吉延さんのこと。往年のテレビ番組「赤影」と「河童の三平」で堂々の主役。演技は、大人顔負けでしたけれど、この頃はもう既に、お腹の大きさ、二重アゴなど体型も貫禄十分で、美少年とは遠い存在でした。しかし「ワタリ」の頃は、なかなか美少年です。半分目を隠すヘアスタイルのせいもあるのでしょうけれど。(鬼太郎ヘアスタイル)

実は、金子吉延さんは、ブログを開設しておられ、ワタリなどの昔話のエピソードもあるので、興味深く閲覧させて頂いております。当然、現在のお写真も掲載されていますが、もうかなり年配になられて、昔の面影もありませんので、少し複雑な感じもします。

右は牧冬吉さん。後年の青影と白影
これは恥ずかしい。戦国時代なのに白ブリーフ?

舞台は戦国時代。でもロボットやレーザー光線も登場しますので、忍者だって白いブリーフを着けていてもおかしくはありません。細かいことは目をつぶり、楽しみましょう。





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