夏の庭 The Friends (1994年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 大震災前の神戸の街並み
映画情報など 1994年公開/ビデオ発売終了


1993年の「お引越し」に続き、相米慎二監督が関西を舞台に撮った児童劇映画。キネマ旬報では日本映画ベストテン5位に選出されたそうですが、正直言って映画の評価は「お引越し」に比べると、劣るものでした。

今は無き三越劇場にて。左から故・相米監督、故・三国連太郎さん、坂田君、王君、牧野君、笑福亭鶴瓶さん
(舞台挨拶で写真を撮っても何も言われない、のどかな時代でした)
■ストーリー

神戸に住む3人組の少年が、ある日、雑草やゴミだらけの豪邸に住む老人を知り、最初は老人から怒鳴られながらも、ひょんな事から親しくなり、豪邸の庭を大掃除したりと、交流を重ねて、本当の祖父と孫のような関係になっていきます。しかし綺麗になった豪邸の中で、ある日老人は病気で亡くなります。

湯本香樹実著「夏の庭」で文庫本も出ていますので、詳しいストーリーは、そちらを参照して下さい。

パンフレットから
(坂田君は脚が長い)
■さわやかですが、少しインパクトに欠ける

「お引越し」では田畑智子を探し出し、強烈にデビューさせましたが、今度は少年を探し出して2匹目のドジョウではありませんでした。相米監督は、やはり少年には淡白で、演技指導も不十分なのか、最後まで素人ぽさ(学芸会風演技)が抜けず、作品の質を落としてしまった事は残念です。

主役は3人の少年であり、誰か1人に感情移入して進行する映画でなかった事がインパクトに欠ける原因かもしれません。1番背の高い少年(坂田直樹君)1人を主役にしてフォーカスしてくれた方が良かったのではと思います。

「お引越し」と比較してしまうと、どうしても辛口になってしまいましたが、決して嫌いな作品ではありません。子役の素人ぽさと、相米監督の淡白さが、逆に相米監督の悪い面を隠して、非常にさわやかな作品に仕上がっており、見終わった後もすっきりします。

■懐かしき三越劇場での舞台挨拶

この映画は、大阪北浜にあった三越百貨店の最上階の三越劇場で鑑賞しました。上にある写真は相米監督、三国連太郎氏、3人の子役、笑福亭鶴瓶氏が舞台挨拶された時に写した写真です。

この当時は、観客がフラッシュを点灯して写真を撮ることは全くフリーでした。今だったら、係員が飛んできてフィルム没収。下手したら100万円の罰金か、懲役〇年以下に(映画泥棒ですな)

三越劇場は、映画専門の劇場ではありませんでしたので、必ずしも快適な環境ではなかったのですが、非常に良質の作品を上映しており、関西のハイソな方々には人気の劇場でしたが、阪神大震災で建物が破損した事を機に、閉館してしまいました。

■神戸の街

阪神淡路大震災の1〜2年前の神戸がロケ地になっており、関西では、映画公開前から、メイキングやスポットCMがテレビ放映されていました。震災で無くなってしまったビルや建物が、映画で見れるかもしれません。(ビデオは絶版ですが、レンタル店を探せば今でも置いてあるかも)

冒頭は雨の中でのサッカー練習試合
近所に住む老人の家へやってきた

■写ってしまったワイヤー

子役の1人(1番背の低い王君)が、橋の欄干の上を歩くシーンがあります。多分、万一にでも落ちてはいけないので、命綱として腰から細いワイヤーを付けていたのでしょうが、それが一瞬ですが、映画本編で露骨に写っているのです!

何とか映像処理できなかったのでしょうかねえ。自分は市販されたビデオは見ていないので、ひょっとするとビデオでは処理されているかもしれません。しかし公開時のスクリーンでは、動体視力なんて人よりも弱い自分でさえ、はっきりと確認しています。

この辺のチェックが甘い事も、映画へ対する監督の思い込みの無さの証明でしょうか。そんな細かい事はおいといて、少年映画としては十分に満足な時間に浸ることが可能ですよ。





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