小さき勇者たち〜ガメラ〜 (2006年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(大熱演の主役です)
お薦めポイント ガメラは少年のために、少年はガメラのために
映画情報など 2006年公開。DVD発売中
(写真は富岡涼君)


これも公開当時はスルーした作品です。その後スカパーで放送していたのをチラっと見たりしたのですが、しょせん怪獣映画だろうと、食指は動きませんでした。

特撮映画の中にも少年俳優が活躍する作品がある事を思い出し、まず昭和のガメラ映画「宇宙怪獣ガメラ」のBDをAmazonで購入したのですが、その際に本作品も検索に引っ掛かり、ええぃっと一緒に購入。(経費節減のために中古ですが、メモリアルエディション3枚組を安く入手できました。)

透少年は、赤く光るカメの卵を見つけた・・
■ストーリー

1973年、三重県志摩地方の小さな町。ここに現れた怪獣と死闘の末、ガメラは怪獣もろとも自爆し、平和が戻った。それをじっと見ていた少年がいた。やがて30年余りが過ぎ、少年は町の食堂のオヤジに。そして彼の11歳の息子・透(富岡涼君)が本編の主人公。

交通事故で母を亡くし、父子だけの生活は味気なかったが、それでも元気な小学生だ。透は、沖の小島に赤い光を見つけて気になっていたが、意を決して小島へ泳ぎ、そこでカメの卵を見つけた。生まれた子ガメを家に持ち帰り、トトと名付けて飼い始めた。

トトは、父には内緒だったが、友人の石田兄妹や、隣の家の姉ちゃん(夏帆さん)には見つかり、一緒に可愛がって育てた。しかしトトは普通のカメではなかった。なんと空を飛ぶ!急速に大きく成長するトト。やがていなくなった。ショックを受ける透。その時、また町に怪獣が出現し、人間を襲い始めた。

窮地に陥った透たちを救ってくれたのは、大きくなったトトだった。しかし大きいといってもトトはまだ子ガメ。怪獣とまともに戦える体力はない。傷ついたトトは自衛隊に保護され、名古屋市内の研究所へ。その名古屋市に怪獣が上陸した。いても立ってもいられない透たちも、トトに会うため名古屋へ向かった。

■意外にも少年映画でした。

映画の前半は、完全に少年とカメ(トト)との友情物語。「仔鹿物語」「ラッシー」「ケス」などと同じです。ちょっとワンパターンかもしれませんが。頭にカメを乗せて歩く透少年。そういえば、神木隆之介さんも映画「妖怪大戦争」で頭に動物(スネコスリという妖怪でしたか)を乗せていたシーンを思い出します。

後半は、怪獣映画になるのですが、この手の作品にしては、戦闘シーンは少なめで、そんなに迫力はありません。これは脚本が女性の方で、人間ドラマの方に重きを置いたせいかもしれません。私自身は、プロレスもどきの怪獣の戦いシーンなんて全く不要なので、これは大賛成。

しかし、ガメラシリーズのファンからは不評を買ったようで、興行的には大失敗だったそうです。ガメラ映画はどうでもいいのですが、少年映画ファンとしては少し残念です。

■特撮について

DVDの特典映像で、特撮シーンのメイキングを見たのですが、基本的には昔のゴジラやガメラと同じ、レトロな特撮です。怪獣の着ぐるみと、背景や、人間を合成するもので、リアルさに大きく欠けます。

ガメラなんて、ちょっと立ち上がると、もろに人間のプロポーションが丸判りで「欽ちゃんの仮装コンテスト」みたいな感じで、大きく興ざめなんです。(ファンの方、ごめんなさいね。)

「三丁目の夕日」のようなCG技術を活用して欲しいところですが、なにかこの手の作品はプロレスと同じで、いつまでもウルトラマンのような着ぐるみで、プロレスごっこをするのが、お約束になっているのかもしれません。まあ、そうならば、ある意味、歌舞伎の古典芸能と同じで、伝統を残すのも悪くはないと思います。

まだ手のひらよりも小さかったトト
あっという間に成長。ゾウガメサイズ

■天使のような声が魅力の富岡涼君

さて主演の富岡涼君。本作品は彼の熱演に尽きます。最初の彼のセリフを聞いた時、ちょっと感動するくらい、その美しい声に驚いたのでした。声だけではありません。セリフそのものが、素晴らしいのです。

アニメや外国映画の少年役の吹き替えにピッタリです。ベテラン女性声優にも負けないこと請け合いです。でも、少年の声は旬が短く、すぐに声変りしますので、使う方は難しいでしょうけれど。

映画では、本作品と「この胸いっぱいの愛を」の2本だけですが、両作品とも主役級ですので、少年俳優としては恵まれていると言ってよいでしょう。彼の美しい声が、アニメなんかに残っていれば、もっと嬉しいのですけれど。

■ガメラは少年のために、少年はガメラのために

これは本作品のキャッチコピー。もちろん、ラグビーなどで使われる「One for all, All for One」をもじったものでしょうが、本作品をよく表しています。ラストシーンで、赤い石をトトへ届けるために、何の縁もない子供達が、ラグビーのパスのように赤い石を手渡していくのは、少しあざいかもしれません。

トトはガメラになって地球を救うのか
赤い石を届ける(イケメンですが名前不明)

■追記 ガメラシリーズについて

特典DVDにガメラ全シリーズの解説映像がありましたので、少し紹介します。

昭和ガメラシリーズ(湯浅ガメラ)
1966年の「大怪獣ガメラ」から7年連続で、1971年まで毎年製作されました。いわゆる特撮怪獣映画の系譜で、それなりにヒットしたようです。「ガメラは子供の味方」というコンセプトもあり、必ず少年とガメラの友情っぽいシーンが登場します(第2作を除く)

それから9年空いて、1980年の「宇宙怪獣ガメラ」で昭和ガメラは終了。製作会社の大映もなくなります。8作のうち7作は、湯浅憲明監督、少年キャラの出ない第2作のみ別の監督さんです。

平成ガメラシリーズ(金子ガメラ)
さらに15年後の1995年に、第9作「ガメラ大怪獣空中決戦」、96年「ガメラ2レギオン襲来」、99年「ガメラ3邪神イリス覚醒」の3本が、金子修介監督によって製作。なんとゴジラと同じ東宝作品になりました。

この3作品は、それまでと大きく異なり、CG等も駆使したバトル・アクションが売りのようです。しかし何よりも異なるのが、ガメラと関係するのは少女が中心になったことでしょう。これもあって、平成ガメラシリーズは、男性マニアには評価が高いのかもしれません。

そして本作品(田崎ガメラ)
富岡君演じる少年が大活躍。昭和ガメラに原点復帰でしょうか。製作は松竹。でも全く不評で、興行は失敗になり、ガメラは打切りになったようです。この次、ガメラが映画化される時は、やはり少女路線になるのは仕方ないかもしれません。

もう日本で少年俳優がメインの特撮映画が作られることは、しばらく無い気がします。あの「鉄人28号」が再度作られたとしても、今度は正太郎少年ではなく、少女が操縦したりして。





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