一万年、後....。 (2007年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(ほぼ主役)
お薦めポイント ナンセンスな未来に生きる少年
映画情報など 2007年公開/2012年、DVD発売。
(写真は田村勇馬君)


前衛舞台芸術のような電波系?映画でした。一万年後の未来世界を描いた映画なのですが、ハリウッドみたいなCGバリバリのSF映画かなと数%くらいは期待していました。やっぱりそんな訳なく、四畳半とちゃぶ台だけの、何ともまあ裏ぶれた映画でした。

■ストーリー

今からの一万年後の世界、そこは奇妙な怪物が横行して人間を襲うような人類滅亡寸前の世界。中学生の正一(田村勇馬君)は妹と二人だけで暮らしている。ある日、イナズマとともに電波に乗って、1万年前の過去から男(阿藤快さん)が出現する。

男は正一の昔の親戚の者だと語るが、正一は全く動じることなく、男を受け入れる。「電波がおかしいので、こんな事はよくあるんです」正一は男にお茶を入れ、男の質問に答える。日本やアメリカは消滅し、言葉もムチャクチャになった未来に、男は混乱する。更に窓の外を怪獣が通ったり、電波が乱れて過去の光景が現れたり。

妹が学校から帰ってくるが、電波はますます乱れてナンセンスな展開になる。しかし、男は出現した時と同じく、また唐突に電波に乗って消えてしまう。正一と妹は、何事もなかったように、いつもの生活に戻っていく。


■田村勇馬君

こんなストーリーでした。(これでは訳が判らないでしょうね)。登場人物は3人だけ。場面は裏ぶれた部屋の中だけ。それも吉本新喜劇とか、昔のドリフの全員集合にあるような「お茶の間セット」これだけの貧相なセットで1万年後を描いたのは厚かましいかな?いやいや却って潔いと思います。

この作品で、妙に礼儀正しい中学生の少年を演じたのが、田村勇馬君です。TVドラマには何本か出ていたそうですが、映画はこれが初めての出演とのことです。思春期独特の声と、バイオリンを弾いたり、お茶を入れたり、男子中学生とは思えない仕草とのアンバランスさがマッチしていて、非常に印象に残りました。

阿藤快さんとの掛け合いが面白く、77分という短い作品でしたが、田村君と阿藤さんの妙な世界をもっともっと見続けていたい、という欲望にかられました。この後、メジャー作品の映画「サウスバウンド」にも出演していたようですが、誰が田村君なのか、映画館では認識できませんでした。

鶏口となるも牛後となるなかれ。メジャー作品に何本も出て「名脇役子役」といわれるのもいいですが、こんな超マイナー作品であっても、主役映画を一本でも持てる事は幸せだと思います。

■レイトショーでの公開

この映画を観たのは、毎度おなじみの「ポレポレ東中野」のレイトショーでした。既に東京を離れた私にとって、東京でのレイトショーは辛いものがありますが、何としても観たいと思い、一泊しました。

レイトショーの後に監督の沖島勲氏のトークショーがあり、出てきた監督さんが、かなり高齢の方であった事に驚いたのでした。美術学校を出たばかりの若い監督の作品かと思っていたのですが、こんなお爺ちゃん(失礼)だったとは。でも考えてみると、少しうれしくなりました。

映画製作に年齢なんて関係ない。若い感性を失わなずにチャレンジされている沖島監督に大きなエールを贈るとともに、自分ももっと頑張らなければ。蛇足ですがトークショーには、沖島監督の師匠?の若松孝二監督がゲストで登場。

本作「一万年後」なんか全く話題にせず、ご自分の作品「実録・連合赤軍」のプロモーションビデオを上映して自慢ばかりされていました。ベルリン映画祭でこの「実録・連合赤軍」が最優秀アジア映画賞を受賞されたそうですが、申し訳ありませんが、あまり観たいとは思いません。

控え目な沖島監督と、自身たっぷりの若松監督、この夜は二人のお爺ちゃんが少年のようで可愛いげがあったので、脱線トークショーに目くじらを立てることもなく、それなりに楽しめました。これも何とかDVD化して欲しいものです。(2012年、遂にDVD発売されました)

(お悔み)
阿藤快様におかれましては、2015年に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。





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