大阪ハムレット (2009年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 7点
少年の出番 100%(年齢バラバラ)
お薦めポイント 女の子になりたい少年
映画情報など 2009年公開/DVD発売中
(写真は、末っ子役の大塚智哉君)


関西実力派子役が大集合。久野雅弘さん(02年「ごめん」主演など)、森田直幸さん(06年「酒井家のしあわせ」主演など)、そして新人の大塚智哉君(吹き替えやナレーションの経験もあり、セリフの安定感は抜群)の3人が、兄弟役を熱演しました。

主人公の3兄弟。左から久野さん、大塚君、森田君
■ストーリー

オヤジ(間寛平さん)が急死した。残された肝っ玉かあさん(松坂慶子さん)と3人の兄弟は悩みをかかえながらも、関西人らしく、しぶとく生きていく。

長男(久野雅弘君)は中学生なのに老け顔が悩み。ある女子大生に、自分は大学生だと偽って恋人関係になるが、その女子大生が教育実習としてクラスに来てしまったから、さあ大変だぁ。

次男(森田直幸君)は、ツッパリの暴力中学生。喧嘩に明け暮れる毎日だが、先生に「ハムレットみたいやなぁ」と言われて悩みだす。本当は心優しい中学生。

三男(大塚智哉君)は、女の子になりたい性同一性障害児。クラスのみんなに馬鹿にされながらも、めげないで、女の子路線を貫き通す。本当は男らしい根性の持ち主かも。

この3人の兄弟の前に、死んだ父の弟?の怪しげなオヤジ(岸部一徳さん)が現れ、ややこしい関係になりながらも、新しい家族の絆が出来上がっていく。爽やかなドラマでした。

■見どころは、やっぱり大塚智哉くん

新人の大塚君。2人のキャリア少年俳優(といっても、もう青年ですが)を前にして、一歩もひるまず、飄々とした演技は特筆ものでした。女の子になりたい気持ちを、肩に不自然な力も入らず、おどおどしたところもなく、本当に自然な様子で体現していました。

浴衣をきて女の子になってしまった時は、色気も漂っていました。特にパッと目を引く美少年という訳ではありませんが、じわ〜っとした可愛さがあります。(表現がむずかしいです。)専門家から見ても評価は高かったのでしょう。2009年キネマ旬報の新人男優賞に3票貰っていました。今後に期待。

■2009年映画日記より

2009年1月18日、TOHOシネマズ西宮OS(兵庫)にて鑑賞。

昨年末から期待していた映画でした。期待通りの快作。公開初日17日は東京で舞台挨拶。でも関西での舞台挨拶がなかなか情報なく、あきらめていたところ、直前になって18日に西宮と大阪で挨拶があると知り、慌ててネットで座席を予約。(前売券を買っていたので、それを使おうか迷ったのですが、並んだりするのが嫌で、ゼイタクしてしまいました。)

男の子が化粧。でも母さんは理解してくれた
大好きだった叔母さん。ロリータメイクが悲しい


大阪梅田から阪急特急で約10分、西宮北口駅に到着。久し振りの西宮北口ですがビックリ。駅前はすっり変って全く別の街。昔は西宮スタジアムで阪急やパ・リーグの野球を見たものでした。更に少し歩くとそこは西宮球技場。禿げた芝生に、砂ぼこりが舞い上がる貧弱なスタンド。でもここは関西学生アメリカンフットボールの聖地でした。学生気分でよく応援に行ったなあ。公式戦の試合をしているフィールド内(タッチラインの内側)まで、観客が入り込んでも注意されない、信じられない球技場でした。

さて西宮スタジアムはそのくらいにして、強者どもの夢の跡地が巨大ショッピングセンターになり、その中にシネコン・TOHOシネマズ西宮OSはありました。指定席なので余裕しゃくしゃく、書店で時間をつぶし、10分前に入場。映画は粛々と始まりました。予告編とほぼ同じ進行です。(当たり前か)

三男の大塚智哉君のアップで始まり、お父ちゃんが亡くなり3人兄弟と松坂慶子さん扮する大阪のオカン、居候の叔父・岸部一徳さんが織り成す群像劇です。吉本新喜劇風の、3分に1回がオチがあって、笑いを取るような、お笑いムービーを予想していたのですが、全く違いました。非常に静かで落ち着いた進行です。(この辺を勘違いして見に来た方は、退屈するかもしれません。)

長男の久野雅弘君、次男の森田直幸君は、既に子役から実績のある若手俳優で、安心して観ていられますが、何と言っても三男の大塚智哉君が、この映画の華だと思います。(もちろん異論はあるでしょうが) 可愛いだけでなく、セリフや表情での演技も出来るので、是非今度は主役で映画に出て欲しい。(光石監督さん、是枝監督が田中祥平君を東京まで連れていったように、大塚君を連れていって何か映画撮ってくれませんかねえ)

さて、映画が終わって舞台挨拶。純白のドレスで登場した松坂慶子さんは、さすがにオーラが違います。久野君、森田君、大塚君の挨拶も初々しくて好感が持てました。しかし監督さんは滑舌が悪い。光石監督に限らず最近の映画監督、なぜあんなにスピーチ出来ない人が多いのだろう。流暢にしゃべるのはカッコ悪いという、裏の取り決めでもあるんでしょうか。

素顔の大塚君ですが、映画のままのほんわかした関西弁で、やっぱり女の子みたいな感じでした。ちょっと緊張していましたが、しっかりした面も垣間見えて、是非今のうちに、後2,3本は映画に出て欲しいものです。





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