ウルルの森の物語 (2009年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 90%(準主役)
お薦めポイント 実質主役の桑代貴明君の演技
映画情報など 2009年公開/DVD発売中
(写真は桑代貴明君)


2009年12月19日、TOHOシネマズ伊丹(兵庫)にて鑑賞。

本年期待していた少年映画ラインアップもいよいよラストです。寒波襲来で底冷えがするものの、好天に誘われ、お隣の兵庫県まで遠征しました。JR伊丹駅東側に出来たショッピングモール内のシネコンは、子供や親子連れで混雑しています。(まさかウルルをと思いましたが、ほぼ全員がアニメ映画「ONE PIECE」へ。マイクで「満席です」とのアナウンスが流れていました。)

先週の「スノープリンス」よりは入っていましたが、それでも30人程度でしょうか。邦画メジャーは、もうこの手の映画を作らなくなってしまうのでは、と危惧しています。空いている映画館は快適とはいえ、心の中にどこからともなく、すき間風が吹き込んでくるような哀しい気分。

■ストーリー

小学生の昴(桑代貴明君)は、東京で妹と母と暮らしているが、母が病気になり、夏休みの期間が父が単身赴任している北海道へ行くことになった。森の中で迷っていた子犬を拾い、ウルルと名付けて飼うことにした。

専門家がウルルを見て、絶滅したはずのオオカミの子ではないかと言い出した。すぐにウルルを連れ出して研究対象にしようと大人たちが騒ぎ始める中、昴はウルルを取り戻し、山へ返してあげようと、妹と二人で森の中に入っていく。

■動物ものワンパターンですが

桑代貴明君の実質主演作品でした。妹と2人、北海道に住む離婚した父のもとへ行き、ひと夏を過ごす、というお決まりのシテュエーションです。妹の方にスポットが当たる内容だろうと思っていただけに、桑代君の活躍には大満足です。

声変わり直前の、少年俳優として最も輝いている時期に主役作品に恵まれて本当に良かったと思います。監督さんやカメラの人も、少年俳優の魅力を知った上で演出したのかどうか知りませんが、何度も桑代君のアップが印象的に使われています。まだ髭もシミも無いきれいな顔は、女優さんに勝るとも劣らない美しさがありました。

しかし欲を言えば、映画の中のキャラクターには不満が残ります。
少年 = 思春期に入る = 父親には反抗的
こんなワンパターンなキャラクター設定しか出来ないのでしょうか。もっと少年の心情をわかる脚本家、きちんとした能力のある脚本家はいないのでしょうか。

おかげで、桑代君はせっかくの美少年なのに仏頂面ばっかり。父親に甘えろ、とまではいいませんが、相手の気持ちばかりを考えて自分を出せない少年、優しい少年、世話好き少年、色々なキャラがあってもいいと思います。(キャラだけなら「スノープリンス」の森本慎太郎君の方がずっと良かったと思います)

さて映画全体の出来についてですが、まあこんなものでしょう。名作・感動作とは言い難い。全てが中途半端な印象です。これも脚本家の能力の限界なんでしょうか。ただ映像の美しさは及第点です。CGなど現実的で無い部分も含めて、これはこれでOKだと思います。桑代君を美しく撮影したカメラマンにも二重丸!

父親役の船越英一郎さんの熱演には拍手を贈りますが、ちょっと前に出過ぎ。子供の運動会に勝手に参加してきて、子供そっちのけで熱くなっているオヤジ、そんな感じすよ。でも憎めないキャラではあります。

最後にネタバレですが、桑代君兄妹はウルルを、狼の棲む森に帰すため、伝説の森、ホロケシへと出かけます。その根拠になった地図とは、絵本から破ったイラストですよ。小学校高学年にもなって、こんな絵本を信じて北海道の原野に踏み込みますか?

ふと思い出したのが、スロヴァキアのマルティン・シュリーク監督の「不思議の世界絵図」という映画。この作品とそっくりなんです。監督さん又はスタッフの中に、シュリーク監督の映画を見た人がいて参考にしたのかもしれません。もしそうだったらいいなあ。

また辛口になってしまいましたが、ウルルは見て損はしないと思います。是非映画館でみて下さい。

子犬を見つけてウルルと名付けた
試写会。桑代君はセーラー服の王子様?
(大人の方の頭が切れてすみません)





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