めめめのくらげ (2013年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 末岡拓人君が魅力いっぱいの演技。
映画情報など 2013年公開 BD/DVD発売中
(写真は、主役の末岡拓人君)


2013年4月28日、TOHOシネマズ梅田(大阪)にて鑑賞。

現代美術家の村上隆氏が、監督、脚本等を担当した初めての映画作品という事で、話題になっていた作品です。しかし、その話題の中には、ネガティブなものも多く、その結果でしょうか、上映館も非常に少なくなりました。それでもゴールデンウィークの上映ですので、混雑も予想したのですが、なんと観客はまばら。これは興業的には厳しいものがありそうです。

■ストーリー

東北大震災で父を亡くした正志(末岡拓人君)は、母と二人で避難所生活を送っていたが、心機一転、新しい町へやってきた。ところが、引越しの当日、アパートで不思議な生物を見つけた。クラゲのような形をして部屋の中を飛び回るのだ。そして人間の言葉が判る。でも、どうやら大人には見えない。正志は、生物をクラゲ坊と名付けた。

転校先は厳格な私立小学校。その転校初日、正志は驚いた。クラス全員が、不思議な生物を持っているのだ。しかも携帯電話のようなコントローラーで、自由に操っている。みんなは「フレンド」と呼んでいた。でもクラゲ坊は少し違った。コントローラーなしで生きている。

正志とクラゲ坊は、本当の親友になっていった。一方、この町には、ある大学の研究所があった。そこには正志の叔父さん(斎藤工さん)が働いてる。そして何か秘密がありそうだ。子供たちにコントローラーを与え、フレンドを持たせたのは、研究所のメンバーだった。やがて彼らの恐ろしい陰謀が明らかになってきた。

大学祭の日、子供達のフレンドを戦わせるバトル競技会が開催された。子供達の持つ「負のエネルギー」(何のことか、原理がよく判りませんでしたが)を集めて、巨大な悪の存在を実体化することが目的だった。そして悪の存在は実体化してしまった。正志は、クラゲ坊はどうなるのか。後は映画を見て下さいね。

左は内田流果君
■CGと美術は一流、ストーリーはお子様向け

さて、村上監督の意図はどうだったのでしょう。フレンドと呼ばれる生物(クリーチャーと言うべきか)のデザインは奇抜で、CGも面白いものでした。でも、それだけ。

特に脚本に無理があります。研究所の悪巧み、不思議な生物のメカニズム、これらに、ある程度、合理的な意味付けをしてくれないと、どうしても胡散臭くなります。芸術系の方は、理系人間のような考え方が嫌いなのかもしれません。

大学の研究所のメンバーが黒マント4人衆。これでは昔の「仮面の忍者 赤影」の世界ではありませんか。まして大学の幹部研究者に、あんなイケメン若者はおりません。(少なくとも准教授や教授クラスには。ポスドクと言われる、不安定な身分の方にはいるかもしれませんが)

■この映画を救ったのは、末岡拓人君

この映画の脚本に合理性を求めるのは、上映後30分くらいで、あきらめました。後は、主役の末岡拓人くんの演技に注目。演技が上手いかどうかは別。そんなに美少年かどうかは別。とにかく力いっぱいの熱演が清々しい。またカメラも、これでもか、これでもか、とばかりに末岡くんのアップを狙います。

しっかり末岡くん演じる正志少年に感情移入することが出来ましたので、お子様向け脚本でも退屈することなく、映画を見終わることができました。CGのクラゲ坊は可愛いのですが、その顔をよく見ると末岡くんとそっくり。タレ目がチャームポイント。

声もまだ可愛いのですが、子供にしては肩幅が広く、ガッチリ系。あと半年もすれば、変声して青年ぽくなりそうな感じでした。そのためでしょうか。エンドロール終了後に、なんと「めめめのくらげ2」の予告編。(エンドロールの末岡君も可愛いですよ)

主人公が中学生になった設定のようですが、末岡君はそのままです。思春期前の可愛いうちに、正志役を撮り貯めしておくことにしたのでしょう。これは大正解です。監督さんエラい!ただ興行成績が悲惨になり過ぎて、続編が無くなってしまう懸念もありますが。そうならない事を祈るばかり。

■その他の出演者について

映画のクレジットでは、正志役の末岡君と、同格に扱われているのが、ヒロイン少女役の浅見姫香さん。彼女はBSフジ「WeCan47」に出演していたのを見ていましたので、少女俳優ですが、応援していました。

う〜ん彼女は残念ながら俳優さんには向いていないかも。WeCan47でも殆どしゃべれなかったのですが、本作品でもセリフは一本調子で、末岡君に比べるとかなり劣りました。ルックスは抜群ですので、役者を目指すなら、もう少し勉強が必要です。

あと、学校の同級生役の男子生徒陣。これは演出なので仕方ありませんが、かなり醜悪な感じに撮られていました。ちょっと可哀想かもしれません。ほんのチョイ役でしたが、内田流果君の姿も。(彼にはもっと主役級を期待していたのですが)

大人の俳優陣。今をときめく若手俳優の染谷将太さん、斉藤工さん、窪田正孝さんなど、豪華俳優が出演していますが、この脚本では、ちょっと可哀想かもしれませんね。

ハツラツとした末岡君の演技が素晴らしい
ヘルメットを被り、凛々しい表情も

■おわりに。少し感じたこと

東北大震災の影響で、本作の内容も少し変ったとの話を聞きました。主役の正志少年の父親は津波で亡くなった設定です。これについては、特にその必要性は感じませんでしたが。

一方、ひとつ気になったのが、町にある研究所の存在。大学の研究所という設定ですが、これは完全に電力会社(東京電力)を風刺したものであると感じました。東北の方々の苦労をよく判っていない自分ですが「電力会社=悪」というステレオ・タイプはどうなんでしょう。映画の世界に、そんなものを持ち込んで欲しくない気もします。





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