夢見ぬ少年 (2013年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 6点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 一見、他愛ない話だが、最後は少し感動。
映画情報など 2013年公開 DVD限定販売
(写真は兄役の佐々木祐陽君)


2013年5月6日、DVD鑑賞(中之島映画祭にて購入)。毎年、ゴールデンウィークに、大阪市役所一帯の中之島公園で「中之島まつり」が開催されます。といってもテントが並ぶ、大学祭のような感じのもので、大して気にとめていませんでした。しかし、ここで中之島映画祭なるものが開催されているとは。しかも今年で11回目とは。これは我が人生の大不覚

公式サイトで上映作品を確認した時は、既に見たい作品の上映は終了。しかし、この映画祭では、何と出品作品のDVDも同時に販売しているのです。(同人誌やコミック・マーケットみたいですね)

プログラムを見ると少年映画は2本。うち1本のDVDはありませんでしたが、本作品「夢見ぬ少年」は売っておりましたので、即購入。1000円。こんなところで即売しているくらいですから、学生映画に毛の生えた程度だろうと、大して期待もしていませんでした。ところが、これが思わぬ拾い物でした。

夢をみたことがないという弟。信じられない兄。
■ストーリー

主人公は小学生のナオト(市原叶晤君)。兄のハルキ(佐々木祐陽君)と母の3人暮らし。お父さんはいない。ナオトの悩みは夢を見たことが無いこと。友達が「ヒーローになって空を飛んだ夢を見た」と言うのを聞いて焦るばかり。

図書室で「夢を見るには」という本を読んだ。見たい夢の絵を枕の下に敷いて寝ればいいそうだ。早速、ナオトは絵を描いた。ヒーローの絵。空を飛ぶ絵。そしてもう一つ。秘密の絵。枕の下に絵を敷いたが、やっぱり夢は見れない。そんな時、絵を友達に見られそうになり、思わず突き飛ばしてケガをさせてしまった。

母ちゃんと謝りに行ったが、友達の母親は許してくれない。そこへ友達の父親が帰ってきた。「しっかり謝ったのだから、いいじゃないか」ナオトの頭を撫ぜて許してくれた。ナオトには、頭を撫ぜてくれた手触りが。

「夢なんて見たって仕方ないじゃないか」ハルキに言われたナオト。「だって、だって夢でしか空を飛べないじゃないか。夢でしか会えないじゃないか」ハルキは、ナオトの描いた秘密の絵を見つけてしまった。死んだ父ちゃんの絵だ。そうだったのか。

ハルキは、父ちゃんの顔を何とか覚えている。でもナオトは生まれたばかりだったから、父ちゃんの顔を知らない。写真でしか知らない。それで夢を見れないんだ。ハルキは、父ちゃんそっくりの叔父さんに、ひと芝居打って貰うよう策略をめぐらせることにした。果たして。

■30分の短編でしたが、最後はホロリ

小学校低学年の子供が主役ですので、どうかなあ、と思っていたのですが、30分という時間をうまく使って、いいテンポでストーリーが進みましたので、ボロが出ず、最後は少しウルッときました。

男の子の夢といえば、ヒーローになること、電車の運転士、そんな無邪気なものが思い浮かびます。亡くなった父さんに会いたいなんて男の子が、現実には、いるのかなあ。

母さんなら絶対いるでしょう。父さんの影が薄い日本の社会。でも、それだけに本作品は男性にとってはホロリと来るものがあります。仕事ばかりでなく、子供とつきあってあげて下さいね。今の言葉でいえば、ワークライフバランスをうまくとって下さいね。でも、リストラ、失業社会(ああ、暗い話はしない。)

■いい味を出していたお兄ちゃん。

主役は弟ナオト役を演じた市原叶晤くん。今時めずらしい丸刈りの素朴な子役さん。目の辺りの雰囲気が、往年の少年俳優、反田孝幸さんに似ていなくもありません。物怖じしない演技力も同様で、将来は演技派俳優に化けるかもしれません。

一方、兄ハルキ役を演じた佐々木祐陽くん。こちらはなかなかイケメン。野球少年なのに長髪とは。弟と設定が逆かもしれません。ストーリー上の主役は弟くんでしたが、このお兄ちゃん役の存在がなければ、かなりレベルの低い作品になってしまったと思います。

DVDにはメイキングも収録されており、撮影はなかなか苦労したようですが、この二人の少年俳優が、この無名作品(失礼)とはいえ、しっかり実績を残せたことは素晴らしいと思います。

そうか、弟は父の顔を覚えていないんだ
父を演じてくれた叔父さんに抱きつく弟

※うれしいお知らせ

第11回中之島映画祭で、本作品「夢見ぬ少年」がグランプリを受賞したとのこと。他の作品を見ていませんので、どんなレベルかよく判りませんが、12作品の中で1番ですから、それなりに評価されたのだと思います。少年映画が評価されるとは。大阪の観客たちも捨てたものではありませんね。これを機に、各地で上映されることを祈っています。





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