ショートホープ (2014年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(竜跳君のための映画)
お薦めポイント 全編を圧倒する孤独な少年の眼差し
映画情報など 2014年公開。DVD等未発売
(写真は、主役の竜跳君)


本作品についても、主役の竜跳君についても、全く何も知りませんでした。yahooの映画スケジュールをチェックしていて、たまたま目に留まり、予告編を見てびっくりしたのでした。

ただ、上映しているのが東京のユーロスペースだけ。上映情報を見ても、他地区での上映予定は空白です。ひょっとすると、このまま東京だけでお蔵入りになるのでは、との危惧感をいだき、お盆休みの最終日を利用して、東京まで遠征する事にしました。

少年はここで生まれて、2歳まで育った・・
そして10歳になり戻ってきた。玄関の前に立つ小さな少年の姿。
■ストーリー

和也(竜跳君)は小学4年生。母はストリッパーで、和也は私生児だった。2歳までヌード劇場で暮し、その後、養子に出されたが、その養父母に子供ができて、和也は居場所を失った。

母が死んだ。和也は養父母の家を出て、母のアパートに行ったが、そこには祖末な位牌と、母のヒモだったという若い男(鳥羽潤さん)がいるだけだった。まだ見た事もない父のことを知りたくて、母の仕事場だったヌード劇場フランス座へ行くことを決意する。

お金も無いので、東京から横浜まで歩く。不良中学生とのバトル、ホームレスの親父に助けられながら、フランス座に到着した。支配人(岸部一徳さん)は、和也を覚えてくれていたが、劇場は警察から営業差止めをくらって、しばらく出て行く所だった。

父のことを聞くと「あんな男は人間のクズ、会うんじゃない」と言いながら、和也に劇場の鍵と、母の遺品を渡して出ていった。遺品は、父と思われる男の写真、タバコのショートピース、小型ナイフだけだった。

和也の父親探しが始まった。意外にもすぐ見つかった。選挙のポスターに写真と同じ顔を見つけたのだ。政治家だが、様々な女性と関係を持っては捨てる。そんな男だった。さてさて、和也は父と会えるのでしょうか。

■なかなかの力作ですが、どうしても惜しい点が

映画は終始、和也少年の目線に寄り添って進みます。まだ幼い少年にもかかわらず、十分に感情移入することができますので、完璧な少年映画である事は間違いありません。

少年を取り巻く登場人物の設定も見事です。母のヒモだったという若い男。最初はこんな奴、さっさとどこか行ってくれ〜、という感じだったのですが、最後は少年のよき理解者というか、二人で生きていくことになるのです。(おっと!ネタバレ)

劇場支配人の岸部一徳さんも、毎度のことながら、どこかトボけた雰囲気ですが、いい味を出しています。この人が出ると、なぜか画面に安心感が出るような気がします。

しかしこの作品で、どうしても納得できないのが、父親だという政治家の人物設定。ここをきちんと締めていれば、もっと名作になったように思います。残念です。

政治家で、女たらしで、遊び回りながらも、出世のためなら、誰でも簡単に捨てる。そんな徹底的なクズ男なのです。そのクズ男の本性を、少年の母親や、この作品に出てくる愛人女性は、なぜ見抜けないのでしょうか。

母親や、愛人が惚れるなら、この男にも何かあるはずなんです。あるいは、本当は女や息子を捨てる事に対する葛藤があるはずなんです。そこを少しくらいは描かないと。せめてルックスが良ければいいのですが、もうかなり高齢のオジサン。そんなオヤジが「今度、大物政治家の娘と結婚する!」なんて違和感多過ぎ。

歩き疲れて歩道橋に座り込む
幼い表情も。股関節が柔らかい(両端は膝)

■竜跳くんについて

さて最後は堂々の主役を演じた竜跳君について。ルックスも、目力(めぢから)も、子役とは思えないほどの存在感があります。ただセリフは、もっと勉強しないといけません。

カメラは、本当にこれでもか、これでもかとばかりに、彼のアップを追いかけます。本作品では、彼の笑顔は全くなく、始終暗い顔をしているのが残念ですが、それでもスクリーンから目を離せません。

試写会での舞台挨拶

誰もいないヌード劇場の舞台。急にスポットライトと音楽が流れ、少年は、母親のストリップダンスを追体験します。これは夢でした。しかし、初めて下着を汚してしまいます。

ちょっとあざとい演出かもしれませんが、少年が成長したことを表現したかったのだろうと思います。おしり丸出しで下着を洗う姿が可愛いかった。

映画「あかぼし」の亜連君と同じ、スターダスト・プロモーションに所属していますので、竜跳というのも芸名かと思ったのですが、どうやら本名とのこと。あのイケメン俳優、河相我聞さんの次男で、河合竜跳くん、というらしいです。(ネット検索によると)

そうでしたか。確かに河相我聞さんにそっくりな感じです。今回の作品主演に、事務所や父親のプッシュがあったのかどうかは判りませんが、今後は実力で、色々な役を勝ち取っていって欲しいものです。

是非もう1度鑑賞したい作品。なんとか大阪を含めて全国公開してくれることを祈るばかりです。





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