もういちど (2014年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(ほぼ主役)
お薦めポイント 真珠の瞳の少年と落語
映画情報など 2014年公開。DVD,BD発売中
(写真は、福崎那由他君)


本作品も公開少し前まで知りませんでした。やはりyahooの映画スケジュールで見つけて、公式サイトをみたのですが、最初の印象は「林家たい平さんの隣にいるのは少年っぽいけれど、女の子かも」

キャストや予告編を参照して、やっぱり少年俳優だったことを確認して安心し、これは見なければ。近所のイオンへ行って正式な前売券を購入しました。本作品は、イオンシネマでしか上映していません。とうとうシネコンでも映画製作に関わるようになったのでしょうか。それだけ最近のメジャー映画は貧弱になってしまった証拠かもしれません。

■ストーリー

江戸に住む噺家の林家たい平(林家たい平さん本人)は、火事で妻と息子を亡くし、傷心のままに落語をやめて、深川のとある安長屋に引っ越してきた。その長屋の隣の一人息子・貞吉(福崎那由他君)は、丁稚奉公に出されていたが、奉公先で苛めにあい、主人からしばらく暇を貰い、家へ戻って来た。

そんな貞吉を元気づけようと、両親は、たい平に落語を聞かせて欲しいと頼み込んだ。最初は固辞した、たい平だが、両親と貞吉の姿を見て、客は3人だけとの条件で落語を聴かせる。感動した貞吉は、奉公先を辞めて、たい平に弟子入りしたいと懇願する。

そんな馬鹿な話は無理だと、周りから呆れられる貞吉だったが。奉公先の主人は話の判る人間だった。「2ヶ月あげましょう。弟子入りして稽古し、2ヶ月後に全員の前で落語を演じなさい。そこでモノになるようだったら、奉公は免じてあげよう」

戸惑いながらも、たい平は貞吉を弟子にする。厳しい稽古が始まった。しかしたい平は、まるで本当に息子のように貞吉に接し、貞吉もまた師匠に全幅の信頼を置いて慕う。そしてめきめきと落語の腕をあげる。さて2ヶ月後はどうなったでしょうか?あとは映画を見て下さいね。

■江戸の生活と落語(ちょっと理想化されすぎかも)

江戸時代が舞台で、人々の生活は貧しくても、今よりも豊かな印象を受けるように作られています。もちろん落語の話ですから、リアリズムを追求するのではなく、ある程度、理想化しているのは仕方ないと思います。

熊さん、八つぁんの気楽な生活も羨ましいですね。一方、貞吉は12歳で丁稚奉公に出され、家へ帰れるのは、お盆と薮入りの年2日だけ。今流行りのブラック企業でも、そこまでは酷くありませんものねえ。

それにしても、林家たい平さん、役者としても十分通用します。やはり噺家ですので、誰かを演じるという部分では、役者よりも慣れているかもしれません。最近は「笑点」も見ていませんが、今度見てみようと思わせるのはさすがです。

撮影はセットではなく、深川江戸資料館の展示スペースで行われたとのこと。専門の撮影所ではないので、空の色などが不自然ですが、そこは目くじらを立てても仕方ありません。実は、この資料館には何度も行った事があります。
(東京都現代美術館が好きで、よく行ったのですが、都心なのに交通の便が悪く、地下鉄の清澄白河駅で下りて、かなり歩きます。その途中に深川江戸資料館があり、ちょっと休憩という感じで入りました。)

■真珠のような瞳の輝き〜福崎那由他君〜

主役は林家たい平さんですが、映画で印象に残るのは、なんと言っても貞吉を演じた福崎那由他君。本当に画面に見惚れてしまうくらいでした。子役としてはもう一人、少女俳優の大野百花さんが出演していますが、彼女は「きな子」という映画で、大人顔負けの存在感のある女の子役を演じています(実際に私も見ました)。なので、演技力は相当なものです。

そんな少女俳優を向こうに回して、主役級を演じ、しかもセリフの難しい落語まで演じるのですから、プレッシャーは相当なものだったと思います。<でも、師匠である林家たい平さんを、心の底から慕っている眼差しは真剣そのもの。そして、その眼が真珠のように輝いていると感じたのは私だけでしょうか。

そして最後に、稽古の成果として、一人で落語「時そば」を演じます。誰でも知っている(上方落語では「時うどん」になりますけれど)有名な話だけに、演じる方はハードルが高いかもしれません。12歳。人前で何をするのも恥ずかしいお年頃。うまくできるか、見ている私まで緊張します。

福崎君、本当に素晴らしく演じることができました。もちろん、大人の落語と比べるのは酷ですが、林家たい平さんから特訓を受けたのでしょう。私自身もスクリーンに向かって拍手したいくらいでした。

ポスターから。最初は女の子かと。
たい平さんを見つめる真剣な目

■ラジオでのエピソード

この落語のシーンを無事に撮影を終えた直後、福崎那由他君は泣いてしまったそうです。辛い稽古を思い出して感極まったのでしょうか、それともプレッシャーから解放されて、気が緩んだからでしょうか。

このエピソードは、ラジオ番組「高田純次 毎日がパラダイス」に、長屋の大家役を演じた渡辺正行さんがゲストとして出演した時に、映画の中の印象的なエピソードとして、語っていました。(YouTubeで視聴)

いいですね。そんな純情な少年俳優の話を聞くと、また応援したくなります。もう13歳ですから、成長が早くて、すぐ大人になってしまうのでしょう。でも、本作品の経験を糧にして、いい俳優さんになって下さい。





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