野生のなまはげ (2015年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(堂々主役)
お薦めポイント ナンセンス・コメディですが少年が熱い!
映画情報など 2015年製作(2016年公開)。DVD等未発売
(写真は主演の中島蓮君)


本作品は全くノーマークというか、大阪で上映(2016.8.6から)がある直前に、ある方のツイッターで情報を得ました。初日に監督さんの舞台挨拶があったのですが、それには間に合わず。上映は大阪は十三にあるシアターセブンというミニシアター。すぐ上の階に第七藝術劇場がありますので、同じ系列なのかもしれません。

このフロアは映画館仕様ではありませんので、天井が低く、後方の席では前の観客の頭でスクリーンが遮られるため、最前列が無難です。平日の18:20からの上映でしたので空いており、遠慮なく最前列へドーンと腰かけました。さて映画ですが、最初は「ナンジャ、コレ」でしたが、最後は思わぬ拾い物でした。

なまはげと歩く少年。二人の間に友情が芽生えます。
■ストーリー

(ナンセンス映画ですので、真面目にストーリーを書くのもなんですので、ツッコミを入れながら書きます。)

秋田県で野生のなまはげが数十年ぶりに捕獲された。伝統行事に登場するなまはげは、人間によって飼育されたものであり、野生のなまはげの生態は全く判っておらず、動物学者の注目の的となった。(この設定からしてナンセンス。なまはげを冒涜しているとしか思えませんけど)

捕獲したなまはげを東京の大学へ移送中に、なまはげは脱走し、東京近郊のある街に現れた。そこには両親が離婚し母と二人で暮らす少年、守(中島蓮君)がいた。守は色々と欲求不満がたまっていて悪戯を繰り返していた。その時「悪い子いねぇが」と叫びながら、なまはげが守に襲いかかってきたのだ。

必死で逃げるが、なまはげはマンションの部屋まで入ってきた。絶体絶命のピンチ、その時テーブルにあったソーセージを見つけたなまはげは、いきなり食べ始めた。腹が減っていたのだ。しめた!守は他のソーセージを餌になまはげを外におびき出そうとするが大失敗。守の部屋が気に入ってしまい、居座ることに。(なまはげをソーセージや肉でおびき出すとは。これも冒涜ですな)

なまはげと守にいつしか友情が芽生える(なまはげは「悪い子いねぇが」しか喋れないけれど)。しかし母親に見つかったから大変だ「捨ててきなさい」とヒステリー。一方その頃、なまはげの行方を探すのは大学教授だけではなく、違法ペットショップの悪人兄弟がいた。先になまはげを見つけたのは悪人兄弟だった。

それからはドタバタ劇。なまはげは悪人兄弟に拉致されるが、大学教授(これも相当うさん臭い)の活躍で取り戻し、故郷の秋田へ帰してやろうと、守となまはげの旅が始まる。さて波乱万丈の旅の結末やいかに!

■秋田県に拒否されたって
撮影中の一コマ(その1)

本作品は、当然、秋田県のローカル作品だと思っていました。しかし「秋田県小田半島」とのテロップが。男鹿半島という実名を伏せて、なぜ架空の小田半島にしたのでしょうか。パンフレット等で見ると、秋田県に撮影を拒否されたとか。どういう理由かは知りませんが、やはり冒涜するように思われたのでは。

私も男鹿半島一周のバス旅行をした事があります。標高は低いけれど360度のパノラマが眺望できる寒風山、八郎潟、なまはげの展示も素晴らしかった。なまはげを冒涜するなんて許せない、と最初は思っていましたが、本作品を最後までみると、それは誤解だと判りました。秋田県の皆様も是非ご覧になって下さい。

■往年の東映コミカル特撮シリーズ

少年となまはげの友情物語。奇想天外なストーリーなのですが、なぜか既視感が。1997年頃放送されていた「ビーロボ・カブタック」という子供向け番組がありました。(なぜ知ってるかって?ネットで少年俳優が活躍と聞いて、ビデオを全話レンタルしたのです。私は若いパパさんに見えましたので、なんの躊躇もなく借りれました)

この「カブタック」と「なまはげ」がほとんど同じような存在なのです。いや、だからといって本作品のレベルが子供向け番組レベルだと、おとしめる気なんて毛頭ありません。あくまでテイストが似ているだけで、本作品は映画ですので、ずっと素晴らしい作品ですよ。

ただ、悪人はいかにも悪人、大学教授も胡散臭いのですが、ひょうひょうとしてコミカルですし、ギャグも満載(すべるネタも多いのですが)。最後に悪人どもが崖から落ちるのですが、人形であるのが丸判り。普通ならここはあまりアップにしないところですが、本作品は開き直って、人形をアップでしかもスローモーションで写します。いい度胸じゃありませんか。

ドアを開けたら、いきなり、なまはげが
そんな、なまはげとの別れのシーン

■なんてったって少年俳優、中島蓮君
撮影中の一コマ(その2)
(タンバリンといえば・・)

さて本作品の目玉は何と言っても中島蓮君。堂々の主役。キャストロールでもトップに少年俳優の名前が出るのは嬉しいものです。彼は往年の名子役(今はちょっとですが)坂上忍さんの事務所で指導を受けた少年俳優。公式サイトを見ると、坂上忍さんの評価は厳しいのですが、それでも大熱演でした。

ほぼ12歳。声変わりが始まり、大人の精悍さと子供の幼さが同居する微妙な時期にしか出せない魅力が十分でした。正統派少年ではなく、ちょっとヒネタ性格(の役柄)がよかった。

ネタバレになりますが、なまはげを故郷に連れていくよう、大学教授から旅費として大金を貰いますが、なまはげと少年は喜んで豪華温泉ホテルで遊びまくり、お金は消えてしまうのです。ここは笑いました。

最後のシーンも一筋縄ではいきません。なまはげと少年の別れ。少年は涙、涙の感動シーンを予測していましたが、なまはげは、故郷の森を見ると、少年など無視してサーっと走り去りました。(愛情をかけていたつもりの猫が、必ずしも飼い主に恩義を感じていない如くに)。ただこれには、もう一つどんでん返しがありますので、映画館で確認して下さいね。

こんな事を言っては今の時代いけませんが、本作品には女の子は殆ど登場しません。クラスメイトの美少女もいません。本当の意味での少年映画ですね。たまにはいいじゃありませんか。





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