僕だけがいない街 (2016年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 45%(主人公の少年時代ですが素晴らしい)
お薦めポイント 29歳の意識を持つ少年。こんな難役を熱演
映画情報など 2016年公開/DVD等未発売
(写真は、準主役の中川翼君)


またまた人気漫画が原作の映画。最近の映画会社にはプライドなんかないのでしょうか。オリジナル脚本で勝負なんて、経営事情とやらが優先される大手ではもう無理なのでしょうね。学生映画の方がずっとマトモです。

それは置いといて。原作は知りませんが、男女子役がキーとの情報もあり、一応マークしていました。でもネットで出てくるのは、天才少女子役、鈴木梨央さんの話が中心。オマケで男の子も頑張っていたという情報もありましたが詳細なし。なので期待せずに見ましたが、いい意味で裏切られました。

この映画で1番ともいえる大事な役を演じた中川翼くん
■ストーリー

映画は大きく、2006年と1988年の2つのパートで構成。2016年パートも最後に少し出てきます。主人公は、29歳の藤沼悟(藤原竜也さん)。彼は売れない漫画家で、ピザ屋でバイトをして生活費を補っている。

悟には不思議な能力(いや「業」かもしれない)があった。突然、時間が巻き戻り、同じ時間を繰り返す。これをリバイバルと呼んでいた。リバイバルしている時間の中には、悟の未来を変えるキーが隠れており、それを探して変えなければならない。さもなければ永遠にリバイバルを繰り返し、先へ進めない。

例えば、ピザ配達中に数分前にリバイバルを繰り返す。そのキーは暴走トラックだった。急病で失神した運転手に気づき、未然に防ごうとして逆に車にはねられるが、リバイバルからは解脱できた。

車にはねられ怪我をした悟のアパートへ北海道から母が看病にやってくる。しかし何者かに母は殺され、悟が犯人に疑われて絶体絶命のピンチ、まさにその時、なんと一気に18年も昔にリバイバルした。小学生の悟(中川翼君)が、キーを探して解かなければならない。

キーは判っている。悟の心の中には、小学生時代の事件がずっと残っていた。連続少女誘拐殺人事件。その被害者の中にクラスの少女、雛月(鈴木梨央さん)がいたのだ。彼女を救わなければいけない。頭の中は29歳だが、身体は10歳。どうやって彼女を救えばいいのだろうか。

■詰将棋の世界だと思えば
舞台挨拶にて

原作を読んだ事がありませんので、作品の世界観が理解しにくいのですが、監督さんは比較的判りやすく描いてくれました。「暗殺教室」などと同じ。あるシテュエーションにいきなり置かれ、そこから脱出する。

古い人間は「なんでそんな事になったの」なんて因果関係を考えたくなりますが、もう思考停止で構いません。「そんなものです」としかいいようがないからです。詰将棋と同じだと思えばいいのです。とにかくそのシテュエーションで、問題を解決して、詰めればいいのです。

■現在パートの軽さはどこから

私が少年俳優ファンだから言うのではありませんが(いやそれもあるけれど)、現在パートの出来が今ひとつでした。主役の藤原竜也さんはいいのですが、他の登場人物(俳優さんではありませんよ、あくまで役柄)が軽すぎて、21時からやっている、出来の悪いTVドラマを見ているような感じなのです。

特に違和感を感じたのが、ピザ屋の同僚女性(有村架純さん)。ただのバイト仲間なのに、どうしてあれだけ悟に絡んでくる、甘えてくるのでしょう。18年前パートに出てきた小学生の少女の方が、ずっと大人で、知性と尊厳を感じるのです。まあ今はこんなものですかね。この話題はここまで。

■超難役をこなした中川翼くん

さて、18年前パートですが、頭は29歳の大人である少年を演じた中川君に尽きると思うのです。映画パンフレットのProduction Noteを読むと、平川監督の厳しい指導に「何回泣いたことか」とありました。

でも監督さんは愛情を持って指導したんでしょうね。中川君は監督さんに「ずっとそばにいてください」という手紙を書いたとか(これは本当かな?なんて疑ってしまう、心の汚れたオジサン=私)

虐待されている少女、雛月を演じた鈴木梨央さん、天才子役の名に恥じない演技でした。先ほども書きましたように、現在パートに出てくるチャラチャラ系女性よりも、ずっと品格を感じます。各種メディアからも、ネットの感想を読んでも、彼女の演技が絶賛されています。それに異論は全くありません。

でも本作品に限れば、役どころの難易度、セリフ、表情とも、やはり中川君の頑張りをもっと評価してあげないと可哀想です。キャストクレジットの順番も、もっと前でいいはずです。藤原竜也さんの次くらいに載って欲しい。まだ先の話ですが、今年度の映画祭で新人賞の一つでも取って欲しい。

映画のストーリー全体を見れば、腑に落ちない点は多々あります。でも中川君の演技だけでも見る価値は十分あるのではと思いますので、このサイトに来られるような方は、是非とも映画をご覧下さい。

人気美少女子役に臆することなく、堂々と
インタビュー。監督さんに言いたい事は





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